無知の知

ほたるぶくろの日記

日本酒1

2016-06-05 22:40:24 | 生命科学

先日、微生物を使ったいろいろを調べる中で、お酒、特に日本酒の製造過程をおさらいしていました。以前に大体の流れは勉強しましたが、大変に複雑なものだな、という印象とともに記憶の彼方に行っていました。私自身はあまりアルコールに強くないこともあって、発酵食品についていろいろ調べたときにもお酒はスルーしていました。

日本酒については70~80年代に「純米酒」が大分宣伝されました。醸造用アルコールや糖類を添加することなく米、米麹、水を原料とするお酒のことです。戦後の大量生産の嵐のなか、日本酒の醸造現場も大変なことになったと想像されます。日本酒とは何か?と問えばエチルアルコールと糖類、アミノ酸を含有した水溶液ということになります。しかし、もちろん本態はそのような単純なものではありません。

今回再勉強する中で、日本酒は実に醗酵食品(飲料?)の究極であるなあ、と感動しています。

日本酒では米、米麹、水が原料と書いてありますが、もう一つ重要なプレイヤーがいるのです。

それが乳酸菌。この存在をうっすら覚えていたのですが、細菌である乳酸菌とカビの仲間の麹菌や酵母がどう醸造過程で関連しているのか曖昧でした。

醸造を味気なく解説するならば、麹菌が米のでんぷんをアミラーゼで分解して糖化し、その糖分を原料にして、さらに酵母菌は嫌気性条件(酸素がないという条件)でアルコールと二酸化炭素を産生する。これがいわゆるアルコール発酵で「お酒を造る」というものです。この部分はあらゆる醸造の背骨であり、大量生産ではこの背骨だけをなんとか死守し、ともかくアルコールを含んだ飲料を生産する部分を最大にする努力をしています。ここでは酵母が主体。酵母がいなければアルコール飲料はできません。

日本酒もワインも焼酎もともかく糖(ブドウ糖、果糖、しょ糖など)から酵母にアルコールを産生して頂くことで、お酒ができているのです。酵母様々です。そして、酵母はアルコールを産生するだけではなく、アミノ酸を始め、様々な物質、あるいは脂肪酸も産生し、お酒の香りと味を決めます。ただ、酵母菌なら何でもOKとはいきません。酵母菌にも様々な種類があって、個性があります。ちなみにパンを作る時の酵母と醸造のための酵母とは違います。日本酒の醸造のために、古くから良いお酒を醸す麹菌と酵母菌が選別され、大事に伝えられてきました。麹屋さんというお商売は今でも続いています。種麹を選別培養し、醸造元に販売する専門店です。われわれには直接関係のない専門店ですから、あまり広くは知られていませんが、この商売とはすごい商売だと思います。酒蔵のお酒の出来を左右する大元の麹菌、酵母菌を扱うわけですから。

さて、麹菌と酵母がいい仕事をしてくれている、ということはよくわかりました。ところで乳酸菌です。このアルコール発酵のどの過程で乳酸菌が働いてくれているのでしょう。それはそんなに大事なのか?ということです。そもそも原料にも書かれていない乳酸菌。それなのに、重要とは?

醸造過程に「酒母」の作成があります。本格的なアルコール発酵に入る前に、良い酵母菌を大量に増やす、いわばプレカルチャー(前培養)ともいえる過程です。ここで乳酸菌が決定的に重要な役割を果たしています。(続く)

※ 記事の改訂をしました。(6月12日)