東京は大小のクラスターが見つかり、感染者がこの数日多くなりました。3月半ば頃の気の弛みがあった証左でしょう。この週末は流石に静かで、若い方を含め皆さんお家でゆっくり過ごされたようです。
おまけに今日は昨日から10℃以上気温が下がって、昼頃は立派な吹雪でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/1f/8d83d7b09afddbbb067d9f234532ab63.jpg)
なんだかよくわからないですね。真ん中辺りは桜です。折角咲いているんですが、牡丹雪で寒そうです。
かなり長いものですが、非常に興味深いものです。エンジニアに向けて書かれた内科医のメールが圧巻です。
その中に、
その中に、
『ダイヤモンドプリンセス号に乗船されていた皆さまには、本当に申し訳ありませんが、大変貴重なデータを提供して頂けたと思っています。
おかげで診療の手引きや興味深いレポート(多分、最終レポートの一歩から二歩手前)が世に出てきました。
日本だけでなく世界の町や市の単位で調べたくてもなかなかできない(マンパワーとお金が無いので)貴重なデータとなりました。これらのデータが、世界中の感染患者の助けになっているのは事実です。ぜひとも一度じっくりご覧になってください。とても興味深い結果が記載されています。』
確かに非常に興味深い。特に全数PCR検査の結果の数値には意外なものがありました。以下、そのデータを詳細に見て行きたいと思います。
まず一番の基礎データ。図1は横浜港に入港した2月5日時点での乗船者数です。
まず一番の基礎データ。図1は横浜港に入港した2月5日時点での乗船者数です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/f7/bafb4ef9d2575f2f3beaa17261686dc6.png)
図1 各年代の乗船者数(人)
今回ダイヤモンドプリンセス号には19歳以下の方は39人。90歳以上の方は11人乗船されていました。また、60歳代、70歳代の方は20〜50歳代の方のそれぞれ2〜3倍ずついらしたことが分かりました。
このあとの論考では、統計的に扱うには19歳以下の方と90歳以上の方は数が少なすぎるため除外させて頂き、主に20歳以上89歳以下の方について詳細にデータを見ていきます。
さて、それぞれの年代で、どのくらいの割合の方がPCR検査陽性(=ウイルスを身体の中に保持している)になったのかを表しているのが、図2です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/f8/8453f948067d07287f8f4b38387008f7.png)
図2 年代別ウイルス陽性率(各年代のウイルス陽性人数/各年代の乗船者数)(%)
明らかに50歳代以上になると陽性率がぐっと高くなります。8.1%程度(40歳代)から一気に倍の14.8%(50歳代)になり、さらに上の年代では19.2%(60歳代)、23.1%(70歳代)、24.1%(80歳代)と上がっていきます。
高齢の方達のほうがウイルスを保持している割合が高い、という結果は漠然とした私たちの印象によく一致します。
次に新型コロナウイルス感染症を『発症した方』の割合を各年代で見て行きます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/4d/6f75311889a0cad3fa300c696af9ce2f.png)
図3 発症された方の年代別の割合(各年代の発症者数/各年代の乗船者数)(%)
図2から予想されたことですが、PCR検査で陽性率がぐっと上がる50歳代以上では、年代が上がるごとに発症率は高くなっています。年齢が上がるとウイルス陽性者が多くなるのですから、当然発症者の割合も上がっているだろうと予想されますが、確かにそうなっています。
ただ、ウイルス陽性の割合は50歳代で倍増していましたが、発症者率は倍にはなっていません。
また、特に70歳代と80歳代の違いは特筆するべきかもしれません。
ウイルス陽性率は23.1%(70歳代)から24.1%(80歳代)と、それほど大きく増えていないのにも関わらず、発症率は12.5%(70歳代)から18.2%(80歳代)と大きく上昇しています。明らかに免疫システムの力が落ちていることを示しています。
ここまでのデータは、私を含め現在広く人々が感じている印象と一致しているかと思います。50歳、80歳は節目であることがわかります。
さて、次に、若い方は感染しても症状を顕さず、知らない間にウイルスを展開している、との仮説があります。
そこで、PCR検査陽性者のうち、無症状である方の割合を年代別に出してみることにしました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/37/e556c570b9bcb204b88efa5f1fa2a943.png)
図4 年代別無症状感染者率(各年代の無症状感染者数/各年代のPCR陽性者数)(%)
一目見て、印象とかなり違うデータにちょっと驚きました。
予想では若年層で高く、高齢者層で低くなるはず、と考えていたのですが、逆でした。若年層では低く、年代が上がるごとに高くなっています。特に50歳代では40歳代の29.6%から52.5%と約2倍近く高くなっています。
つまり、『ウイルス陽性だが検査時点では症状を顕していなかった方』は50歳代以上では半数前後もいらっしゃった、ということをこのデータは示しています。
逆に40歳代以下の若い方では30%未満です。
これをどう考えるか。
逆に40歳代以下の若い方では30%未満です。
これをどう考えるか。
一般的にウイルスが感染すると、
a)免疫システムが働き、感染細胞は破壊され、ウイルスが排除される。
b)ウイルス排除に失敗し、発症する。
b)ウイルス排除に失敗し、発症する。
のどちらかに落ち着きます。
a)なら治癒。b)なら発症。
一つの仮説としては、
若い方の場合、a)にしろb)にしろ、どちらにしてもウイルスに感染してからの機序が速やかなのではないか。
若い方の場合、a)にしろb)にしろ、どちらにしてもウイルスに感染してからの機序が速やかなのではないか。
高齢者の場合、
a)の状態が長く続く、ということかもしれません。
図2をどう考えるか、にも関係します。
年齢が上がるにれ、陽性率が高くなっています。しかし、このデータは高齢者がウイルスに感染しやすいことを意味していません。感染のし易さについて、今は議論できるデータはないのです。
このデータは、あくまでもある時点でのウイルス陽性率です。感染のし易さが年齢によって大きく違わないと仮定しこのデータを考察してみますと、別の側面が見えてきます。
若い方は速やかに免疫を成立させて、既にウイルス排除に成功していたのかもしれません。その一方、高齢者はウイルス排除に時間がかかっていたのかもしれません。
免疫系はそれなりに働いて、無症状状態を一定期間維持していても、結局ウイルス排除には至らず発症し、その際には免疫システムが疲弊していて重症化し易い、と考えることができます。
そうなりますと、図4のデータも納得がいきます。
つまり、無症状のままウイルスをまき散らしているのは、若い方だけではなく、高齢者の貢献もかなり高い可能性があることを意味します。
そうなりますと、図4のデータも納得がいきます。
つまり、無症状のままウイルスをまき散らしているのは、若い方だけではなく、高齢者の貢献もかなり高い可能性があることを意味します。
高齢者の方がウイルスに感染したとしても、ウイルスを体内に保持したまま、無症状期間をある程度過ごすのだと想像されます。
したがって、何の症状もない方も、ひょっとしますとウイルスを保持している可能性がある、ということになります。
現状の検査体制では、この方達は検査の対象にはなりません。
人混みに出かけ、人々と密接した時間を過ごし、自分は危ないかもしれない、と思われる方は少なくとも2週間程度は静かに自宅で過ごし、体力を温存してウイルス排除に成功すること。これが一番でしょう。
高齢の方は一旦発症しますと重症化します。
高齢の方は一旦発症しますと重症化します。
どうぞくれぐれも人混みへのお出かけは避けて頂けますよう。
私は3月中旬ころ、都心部で結構な数の高齢者酔っぱらい集団を見かけました。あの方達が重症化し、医療を圧迫するのか、と思いますと気分が暗くなります。
おじさま、おじいさま、おばさまがたも飲み会は夏までお控えください!
私は3月中旬ころ、都心部で結構な数の高齢者酔っぱらい集団を見かけました。あの方達が重症化し、医療を圧迫するのか、と思いますと気分が暗くなります。
おじさま、おじいさま、おばさまがたも飲み会は夏までお控えください!
さて、もう一つの話題は血液を用いた簡易検査キットについて。
先日来話題になっている全血を用いた抗体検査ですが、スペインでは下記の報道がされています。
2)Spain, Europe's worst-hit country after Italy, says coronavirus tests it bought from China are failing to detect positive cases
Sinéad Baker and Ruqayyah Moynihan 、Business insider
(スペイン、イタリアの後のヨーロッパ最悪国、はコロナウイルス検査について、中国から購入した検査キットは陽性症例の検出に失敗している、と言っている。)ビジネス インサイダー誌
以下、記事のサマリー
- Spain said it found that rapid coronavirus tests bought from China did not consistently identify positive cases and would return them to the manufacturer.
(スペインは次のように述べている。「中国から購入した迅速コロナウイルス検査は陽性症例同定が一貫しないことがわかったので製造業者に返品する。」)
- Spain now has over 4,000 coronavirus deaths, the second-most in the world.
(今やスペインは4,000人以上のコロナウイルスによる死亡例があり、世界第2位である。)
- The Spanish newspaper El País reported that microbiologists found that tests it bought from a Chinese company called Bioeasy could correctly identify virus cases only 30% of the time.
(スペインの新聞El País誌は、中国の製造業者、Bioeasy社から購入した検出キットは30%程度しかウイルスの同定を正しくできないことを微生物学者が明らかにした、と報じている。)
- Health authorities have been told that the tests should not be used, and the head of Spain's health-emergency coordination center said they would be returned, El País reported.
(保健衛生専門家は検出キットは使用されるべきではないと言っており、スペインの救命救急センターは返品すると言っている、とEl País誌が報じている。)
- The Chinese Embassy in Spain said that the Bioeasy tests were not part of China's medical donations and that the firm didn't have a license to sell its products.
(在スペイン中国大使館は、Bioeasy検出キットは中国の医療寄付の一部ではなく、また製造業者は製品の販売許可を得ていなかった、と言っている。)
以上はスペイン発の報道です。真偽のほどは確かではないのですが、臨床検査として採用するにあたっては、キットについて十分なチェックが必要なようです。
クラボウの輸入元がどこなのか気になりますが、公表されていないようです。十分な注意が必要かと思います。
抗体検査をする場合、初期であればIgMが高い。IgGをモニターすれば回復傾向かどうか分かる。という利点はあります。確定診断ではなく、患者さんの状況をあくまでも『簡易に』チェックするのには使えるかも知れません。それにしても精度については注意深いチェックが必要です。
抗体検査をする場合、初期であればIgMが高い。IgGをモニターすれば回復傾向かどうか分かる。という利点はあります。確定診断ではなく、患者さんの状況をあくまでも『簡易に』チェックするのには使えるかも知れません。それにしても精度については注意深いチェックが必要です。
少しずつ臨床研究が出てきています。アビガンなどが効果した例なども報告されています。治療薬についての研究も盛んに行われています。くれぐれも重症例にならないよう、たとえ今症状がなくとも、50歳代以上の方は自宅でゆったりとお過ごしになるのが日本国を、世界を救います。
今はご自宅でゆっくりしていることが義務、とお考えください。読書や音楽、映画の視聴、今はデジタル美術館などもあります。心豊かに、お過ごしください。
ショスタコービッチの交響曲第7番など、いかがでしょうか?