先日理研脳科学研究センターから次の結果が発表されました。
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うつ病に似た状態のマウスに刺激を与え、楽しい記憶を思い出させることで、うつの症状を改善することに成功したと、理化学研究所脳科学総合研究センターの利根川進センター長らのチームが発表した。
将来、うつの新たな治療法開発につながる可能性があるという。18日の英科学誌ネイチャーに掲載される。
チームは、遺伝子操作したオスのマウスで、メスと遊んだ時に活動した脳細胞を記録し、光を当てると、その細胞が再び活動するようにした。その後、継続的にストレスを与え、うつ状態にした。
健康なマウスは、尻尾を持ってぶら下げると、起き上がろうともがくが、うつ状態のマウスはすぐに諦める。ぶら下げる際、メスと遊んだ時に活動した脳細胞に、光ファイバーを通じて光を当てると、もがく時間が健康なマウス並みに長くなった。楽しい記憶を思い出し、うつが改善したと考えられるという。
刺激を受けて活動する脳細胞は、「記憶」「感情」「意欲」にそれぞれ関係する領域をつないでいた。
----------------------------------------2015年06月18日 読売
マウスの実験であること。うつのモデルが果たして正しく人のうつを反映しているか否かは議論のあるところですが、人間の生活に応用できる結果かな、と思います。
「楽しい!」と思える「こと」あるいは「時間」を日々の生活のどこかで持つこと。これが活力の元であり、心の回復にも役に立つのでしょう。何を「楽しい!」と思うかが、また重要なのですが、ともかく一生懸命「楽しい」ことも探しておくことが大事なようです。
私自身は「~ねばならない」だらけの生活を長年送り、すっかり心理的にうつ状態に陥ったことがありました。あの山を越えたら、この谷を越えたら、と「楽しみ」を後回しにしているうちに、時間があれば寝ていたい状態になってしまいました。
先日ネット上で仕事の仕方について議論があったようですが、趣味だけに生きるのも仕事(義務)だけに生きるのもだめかもしれません。仕事に没頭する日々でも、必ず自分を「楽しませる」時間を作ること。そのバランスをうまくとってこそ、前向きに生きて行けるのではと思います。
上の実験結果も「さもありなん」なものですが、こうして結果が示されれば、人にとっての休息がいかに大切なものか社会が認めることになるでしょう。長時間労働がなぜだめなのか、それがうつの原因となることも示されることになります。研究の進展を願っています。