仕事の関係上必要があって、EGFやFGFといった機能性ペプチドについての一般社会での応用について調べていました。これらの細胞増殖因子は発見されて、もう優に30年が経過しているのですが、様々な理由からいまだに生理活性が完全に解明されたとは言えない部分があります。とくにFGFは全部で23種類が知られており、なかでもFGF-2はいろいろな意味で大変強い活性を持つ分子であることがわかっています。そのため、FGF-2については医薬品としてあつかわれており、一般の商品には配合できません。逆に、他の増殖因子はフリーとなっています。わたしが今回びっくりしたのは化粧品など、皮膚関係の商品や関連クリニックにおけるこれら因子の使用のされかたでした。
ある分子の働きの一面のみを捉えて利用しようとしており、副作用などへの配慮が不十分に感じられたからです。もっともひどい話しですが、生理活性が弱いので逆にひどい副作用もなかろう、という姿勢のようです。それはつまり、あまり効果が期待できない、ということにもなります。
いろいろなサプリメントなどと同様、玉石混淆、効果がないのはまだましで、毒性や副作用が恐ろしいものが皮膚関連の商品にはあります。数年前にはステロイドが配合されていない、とされていたのに大量に入っていたクリームなどもありました。これから寒くて乾燥する季節になりますと、どうしても皮膚を保護するための化粧水やクリームが必須になります。基本的に、保湿することは重要なことです。保湿を十分にして、表皮の表面がするするになっている状態を保てば、あとは皮膚が勝手に代謝してくれるようになっています。必要な栄養分は内側から供給されます。
女性の場合はお化粧などしますが、それは皮膚に対してかなりの負荷になっているのです。いろいろ配合されているから大丈夫、なことはありません。化粧を落としたら、汚れをとって保湿し、皮膚の再性能を信じて休ませてあげることが一番だと思います。
アトピーなどの方も、一に保湿、二に保湿です。皮膚の表面が割れないよう、注意することです。割れた部分から環境中のあらゆる物質、微生物が皮膚の内側、つまり体内へ侵入してしまいます。そしてそれがまたアレルゲンとなり、刺激をし、アレルギー反応を起こす、という悪循環になっていきます。
ちょっと話しがとびますが、いわゆるピーリングというものがあります。今回その内容について調べてびっくりしました。「TCAピーリング」とありまして、目を疑いました。TCAとはトリクロロ酢酸というもので、蛋白を沈殿させるときに使う劇薬です。
これが綿製品に飛んだのを気がつかないまま放置しますと穴があきます。私も学生のとき、これでズボンを一本ぼろぼろにしました。またこれを使用するときは手袋をしますが、うっかり皮膚に付いたりしますと非常に痛みます。すぐに流水で洗浄しませんと大変なことになります。このときの試薬の濃度は施術で使用されている濃度と同様なので本当に驚きました。いろいろあちこちでひどい目にあった、という報告があるようですが、そりゃそうでしょう、というのが正直な感想です。そこまでして「一皮剥か」なくても、自然に皮膚は代謝しています。上質の水を飲んで、内側から再生を促す方が正しいと思います。無理矢理一皮むきますと、炎症も起きますし、様々な副反応が起きてくる可能性があります。何事も余計なことをせず、自然な経過を大事にするのがよろしいのではないでしょうか。