今年は年明けから訃報が相次ぎました。
1月にはごく近しい方が他界し、春先にも別の親戚と知り合いのお父様、さらに仕事上での知り合いが、そして暑くなってきてからは若い知り合いが鬼籍に入りました。
そのようなことで今年は初盆があちこちにありました。
そのうちの一件はほぼお盆の行事を主催する立場、ということで準備も含め、今年はお盆の時期に夏休みを頂きました。それに先立って、その土地その土地のお盆の行事があるようですし、郷に入れば郷に従え、ということで、あれだこれだ、と準備の話しをふんふんと聞いていたのですが、どうも腑に落ちないことが。。
ご近所の方が言われるには14日夕方に提灯を持ってお墓に行って一つだけ残して火を入れて帰ってくるらしい、との話しが伝わってきました。
はい???
「お盆は本来13〜15日で、お中日の14日にお坊さんにお経を上げてもらい、御先祖様を含め皆さんで食事をするんですよね。そして15日にお送りするはず。14日にお墓にお送りしちゃうの?」
ちょっと質問を挟むと
「さて、なんででしょうかね〜」
理屈としては「送り火」なんですから、お墓に提灯を持って行くのは15日か16日なんではないでしょうか。皆で楽しく過ごすべき14日にお墓にお送りする、というのはよくわからないです。
結局14日にお坊さんが見えたら聞いてみますか、ということでその場は納まりました。
お盆行事の主要な筋書きとは、「迎え火」であの世から帰ってこられる御先祖樣方をお迎えし、自宅で楽しく過ごして頂き、お坊さんに供養のためのお経を上げてもらい、「送り火」とともにあの世へお送りする、ということなのですが、実際にそのプロセスに付随するこまごまとした所作や準備の品々は宗派、地方、家によって様々です。
「迎え火」の火はいろいろな話しを総合するに、「明かり」の意味合いが強いようです。12日か13日の夕方にお墓に行き、提灯を灯して自宅まで来る。それが無理なら自宅の軒先に家紋のついた白い提灯を掲げる。したがって、あまり火に拘る必要もないかもしれません。今回はともかく玄関先の提灯で良し、とすることで決着しました。
その後13日の夕方にお墓へ掃除もかねて行ってみるとお墓から提灯を下げて(火は入っていませんでした)帰ってくる方に会いました。竹竿に盆提灯を3つ下げておられました。あら、今でもやっている方もいるんですね、なんて話しをしました。
と言うわけで14日にはお坊さんが見え、お経のごく一部と和讃が唱えられ、集まった親族がお焼香し、さてお坊さんの講話が。。。
と、お坊さんもどこの家でもさんざん訊ねられるとみえて、お盆にまつわる準備やしきたりなどの話しをこちらが訊く前に話し始めました。
「浄土真宗では常にご供養しておりますので、お盆だからといって特別な提灯や準備は一切必要ありません。まあ、あればあったで雰囲気もよいですし、あったっていい訳ですが、なくてはダメとかそういうことはありません。」
ときっぱり。
皆さん 「え〜!?」
いろいろ教えてくださったご近所さんも同じお寺の檀家さん。
どういうこと?
この辺りの方は皆、浄土真宗とのことだったんですが、なんだかもっと古い習俗が残っているようです。つまり浄土真宗になったのはあまり遠くない過去なのではないでしょうか。実際このあたりの土地の大名は浄土真宗を禁じていた、とあります。ということは表立って浄土真宗の門徒となったのは少なくとも明治以降でしょう。
近い親族に亡くなった方などなければお葬式もお盆もあまり関心を持たないで過ごします。私の母のときもそうでしたが、母の兄弟姉妹たちも自分たちの両親が50年ほど前に若くして亡くなって以来、身近なお葬式は出さなかったのでした。したがって、大体どの宗派でお葬式をするかに始まって、お盆はどうする、などなど分からないことだらけでした。
私が子どもの頃はお盆の行事などしたことはありませんでした。精霊棚も用意しませんでしたし、だいたい仏壇もありませんでした。うちの母は結局そういったことは一切やらなかったのです。いろいろ宗教関係ではもめ事もあったようで、大嫌いだったようです。
私はまあ、一般常識としてこんな感じ、というイメージは持っていたわけですが、母が亡くなって初めていわゆる法事を営んだことになります。
今回は主人の方の法事で、こちらも主人の祖父が亡くなって以来とのことで、40年近く死にまつわる行事はなかったということです。お仏壇一式はかなり前のものがあって、お線香を寝かせた形ではありますが、ご供養が行われていました。「先祖代々之霊位」なる位牌もあります。ただ、こちらもあまり宗教的な方達ではありませんで、昔からの習慣程度に先祖供養をしてきた、ということです。私たちもこちらにうかがえば仏壇にお線香を供えてきました。
さて、そんなこんなで結局、理屈に従って提灯をお墓へ持って行くのは15日にしましょう、ということになりました。14日は家族でお墓に行って、片付けで大量に発見された様々な種類の線香、例えば渦巻き型、柄のついた長いものなど中国のお香など仏壇で焚くにはどう?と思われるものを持って行って大量に焚きました。中国の道教寺院で用いられるお線香はすごい煙です。さすが、道教。
そして、15日は盆提灯を持って行き、ろうそくの灯を灯しました。同時にまたまた大量の線香も焚き、煙と明かりでお送りしました。
少なくともこの世の私たちはなんとなく満足したお盆だったのですが、あの世の方々にも喜んで頂けたのでしょうか。毎日の供養はもちろんですが、たまにはこういう大きな行事もいいですね。とくに盆提灯は私の好きなものの一つです。