先日、1年ぶりに富士山に行ってきました。そのときに、面白い雲が見られたのでご紹介します。
そのときの天気図が下です。弱い冬型の気圧配置となっています。地上付近では等圧線の間隔も割と広がっていて山麓では風はそれほど強くないのですが、700hPa天気図を見ると、上層の谷が通過中で、富士山付近は強風軸の上となり、風が非常に強まっていることが予想される状況でした。
下の写真は朝、富士山五合目付近から見た山中湖です。湖の形に雲が広がっているのがわかります。雲というよりは霧です。放射霧という種類の霧で、湖面から蒸発した水蒸気が、冷やされることで発生します。大気が安定して、風の弱いときにできる雲です。下界は風が弱く、上層の寒気もそれほど強くないことがわかります。
下の写真は富士山7合目付近から見た、丹沢方面です。冬型のため、「丹沢=太平洋側=晴れ」というイメージをお持ちの方が多いと思います。冬型が強まってシアーラインができないときはそうなのですが、等圧線の間隔が開き、下層の西風が強まらないと、このように相模湾からの海風がすぐに侵入して雲が湧きたってくるのです。上昇気流による雲の発生の典型的な例です。このときは、上層の谷の通過に伴って日中、やや雲が発達してきました。
富士山上部の西風が強いと、富士山を越えた風は、東の山麓へと吹き降ろしていきますが、下部では反流といってこの風によって運ばれた空気を補うために、富士山の北面(山梨県側)で東から西へと風が流れていくことがあります。また、地上天気図で関東地方付近にふくらみ(気圧の谷)があると、このようなケースが良く起こります。下の写真で雲のもっとも低い部分(①)が、東風によって図の右から左へと流れています。一方で、それより高いところでは西風となっており、雲の真ん中から上の部分(②)では左から右へと雲が流れているのです。
冬の富士山で怖いのは、突風や暴風。下の写真のとおり、雪煙が凍り付いて雲をなびかせるようなときは、風が上部で相当強い証拠です。決して無理をしないで、引き返しましょう。
文責:猪熊隆之 ※禁無断転載、無断転用