大分、ご無沙汰してしまいまして申し訳ございません。
最近、面白い雲が多いのですが、予報業務で手一杯の状況ですので、更新ができませんでした。
さて、下の写真で見られる雲(積雲)は、伊那側からの風が、写真右手の守屋山から左側にある、三角錐の形をした甲斐駒ににぶつかって上昇してできた雲です。山によって空気が上昇させられてできる雲を「地形性上昇による雲」と言います。ただ、今回、普通の地形性上昇の雲と違うのは、雲がいくつも平行に並んでいることです。これは、地面付近が強く熱せられて上空との温度差が大きくなると対流が起こり、上昇気流が起きるところと、下降気流が起きるところが交互になって起きる現象です。
文字で説明するとわかりづらいと思いますので、 下記の図をご覧ください。空気は上下の温度差が大きくなると、対流をおこします。暖かい空気が上へ、冷たい空気が下へ行くことによって上下の温度差を和らげようとするからです。このとき、一斉に冷たい空気が下に、暖かい空気が上に行けば、お互い衝突して、思いを果たすことができません。そこで、譲り合うのです。暖かい空気が上昇するところと、冷たい空気が下降するところが別になります。空気はなんと賢いのでしょう!そして、上昇気流が起きるところで雲が発生し、下降気流が起きるところでは雲は消えます。
この状態で、上空に行くほど風が急激に強くなっていくと、雲は一定方向に連なっていき、いわゆる冬の日本海側で見られるような筋状の雲になる訳です。観天望気講座の56で説明した雲は、この「ロール状対流」と呼ばれる筋状の雲になります。
http://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/b9940571460e6f50385476c329e605f7(観天望気講座56)
今回は、上空の風がそこまで強くなかったので、ロール状対流まではいきませんでしたが、雲の列が並んではいます。ロール状対流になり損ねた雲、といったところでしょうか?
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文責:猪熊隆之