さて、今回も前回に続き、夏山で怖い雷についてです。先日も宝剣岳で落雷事故が発生しました。この落雷はそれほど大きくない積乱雲の下で発生し、しかも単発の局地的なもので予想が難しいものでした。
さて、予想が難しくても雷雲が発達するときには、前兆が現れることが多いものです。今回は、その前兆として現れる雲についての紹介です。
上の写真は中央アルプスの宝剣岳~檜尾岳の稜線から見た南アルプスです。この日は午後遅くから南アルプス北部で雷雲が発達しました。
山の上に噴火のように雲が湧き出しているのが分かります。このように、山腹からではなく、山の上から雲が発生し、しかも煙のように上方へ勢いよくなびいているような雲は要注意です。午前早い時間からこのような雲が現れるときは、大気が不安定な証拠で、午後はさらに地面付近が温められるため、上下の温度差が増し、いわゆる空気がキレやすくなります。大気が非常に不安定な状態になるのです。
こちらは中央アルプスから西方を望んだ写真ですが、モクモクとした雲が上方へ伸びているのが分かります。私はこれを「雲がやる気を出している状態」と呼んでいます。これがさらにやる気を出して成長いくと、観天望気68のような雲になります。
「煙のように上方にたなびく雲が午前中から現れるときは、雷に要警戒」と覚えておきましょう。
※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。 文責:猪熊隆之