地形と雲の関係 ~南西風~
この日は、天気予報では朝から雨予報、フタを開けてみると、次第に青空が広がってきました。昼頃からは雨になりましたが、午前中の青空が広がった理由は地形の影響が大きいです。
そこで、今回は地形と雲の関係について書かせていただきます。
観天望気ファンの方は耳にタコができているかもしれませんが、初めてお読みいただく方のために、まずは山の天気の基本をご紹介させていただきます。
平地では低気圧や前線が接近してきたりするなど、天気を悪化させるハッキリとした要因が現れることが多いのですが、山ではそうしたことがなくても天気が悪くなることがあります。「天気予報では晴れだったのに、行ってみたら・・・。」という経験をお持ちの方も多いと思います。
天気が悪くなるのは雲ができて、雲が成長する(やる気を出す)からです。雲は、水蒸気を含んだ空気が上昇して冷やされることでできます。この「空気が上昇する」ということが雲を発生させるのにとても大切で、山では風が吹くと、簡単に空気が上昇してしまうので、低気圧や前線などが来なくても雲ができて天気が崩れることがあります。
図1 風が吹くことで山の天気が崩れる理由(山の天気リスクマネジメント「山と溪谷社」より)
上図のように、右から左に風が吹くとします。平地や海の上など山がない場所では風はそのまま吹き抜けていくので上昇しませんが、山がある場合は、山にぶつかった風は斜面に沿って上昇していくため、雲ができるのです。特に、海側から風が吹くときは、海上に溜まっている水蒸気を多く含んだ空気が山に運ばれてきます。そのため、山の天気は崩れやすくなります。海側から風が吹くときに山の天気は崩れやすいという山の天気の原則を覚えておきましょう。
この原則を頭に入れると、山にかかっている雲の理由が分かることが多いです。
写真1 南西風が吹くときの雲
さて、写真1は南西風が吹いているときに八ヶ岳山麓で撮影したものです。このときのカメラの位置は、図1(下図)をご参照ください。写真の右側が北北西、正面が南南西、左側が東南東の方角になります。正面奥に山が見えますが、入笠山から守屋山に連なる山並みです。つまり、南西方向になります。山の周辺では雲底が暗くなっています。これは、湿った南西風がこれらの山にぶつかってで上昇し(図中緑色の矢印)、雲が発達しているからです。一方で、写真の手前側に行くにつれ、雲は弱まっています。これは山を越えて下降気流となり(図中オレンジ色の矢印)、雲が蒸発していくためです。
一方、写真の左側には山の手前に塊状の雲ができています。この動きを確認したところ、写真の右奥(西の空)から左手前(東の空)に流れていました。つまり、守屋山~入笠山の山を避けて北側から回り込んだ西風によって、天竜川方面からの湿った空気が入ったことと、山梨県北杜市の方から回り込んできた風とぶつかって成長した雲であると思われます。
図1 撮影ポイントとその周辺の地図
雲を見ることで上空の風の流れを読むことができ、その風の流れが雲の成因を教えてくれます。こうやって雲を見ていくと、楽しいですよ!