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猪熊隆之の観天望気講座93

2017-04-08 17:02:32 | 観天望気

今回は先日、三峰山&美ヶ原など、これまで実施してきたお天気ハイキング中に見られた、光学現象についての解説です。

最初は日暈(ひがさ、にちうん、英名ハロ)です。こちらは比較的よくみられる現象です。

写真1 ハロ(栂池より)

日暈は、雲を構成している氷の結晶を太陽の光が通るときに、光が氷の結晶で屈折することによってできます(下図参照)。上の写真で光の環ができている周辺はぼやっとした薄い雲が広がっています。

このような雲を巻層雲(けんそううん)または薄雲(うすぐも)と呼び、高い高度にあるので、水滴ではなく、氷の粒でできています。この粒が六角形で、なおかつ結晶が色々な方向を向いているときに、この光の環ができます。

色が分かれて見られるのは、プリズムの原理と同じです。太陽の光が氷の結晶に入ったときに、色によって光の屈折の仕方が違うからです(下図参照)。

図1 プリズムによって光が分かれる原理

 

日暈には上の写真のように太陽を中心とした半径22度の円としてできる内暈(ないうん、うちがさ)とそれより外側にできる半径46度の円、外暈(そとがさ、がいうん)があります。太陽の光が六角形の氷の結晶をどのようにして屈折していくかによって、どちらになるかが変わってきますが、普段見ることができるのは、圧倒的に内暈が多いです。外暈が見られあなたはラッキーです!!

続きまして、三峰山で見られたブロッケン現象です。

写真2 三峰山で見られたブロッケン現象

この現象は、太陽の光の波長と、粒子の大きさが同じ条件でないとみられません。したがって、太陽の波長よりも大きすぎる雨粒や、小さすぎる雲粒では発生しません。霧の粒が同じ位になりますので、霧が出ていることが条件になります。

なおかつ、霧を正面に見て背後から太陽光線が入らないとみられません。太陽の光が霧の粒によって散乱(散りばめられて)、そのうち見ている人の方に跳ね返ってくる光が色によって跳ね返り方が違うことによって見られます。

こちらも、山の稜線を境にして片方が霧で、片側が晴れているときによく見られます。

最後に、割と珍しい現象をご紹介します。先日、美ヶ原高原の山本小屋で見られた太陽柱です。

こちらは、太陽の光が薄い氷晶や横に寝た形の長い氷晶に反射して、太陽の虚像として見られる現象です。

写真3 山本小屋からの太陽柱(サンピラー)

太陽柱は①雲粒(薄い氷晶や横に寝た形の長い氷晶)に反射してできる

②ダイヤモンドダスト(空気中の水蒸気が昇華して氷晶になったもの)

のいずれかで見られます。①の場合は日没や日の出の際に見られることが多く、②の場合はダイヤモンドダストが氷点下15℃以下にならないと出現しにくいことから、寒冷地でよく見られます。

図2 太陽柱のできる仕組み

写真3は日の出の際に見られた太陽柱です。一方、写真4はダイヤモンドダストによる太陽柱です。

写真4 ダイヤモンドダストで見られた太陽柱

写真5 同じくダイヤモンドダストの太陽柱

 

こうした、思いもかけぬ光景が見られると嬉しくなりますね。山に登っているとき、時々空を見上げてみてはいかがでしょう?

※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。

写真、文責:猪熊隆之

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