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「日本中枢の崩壊」 古賀茂明著

2011-11-05 | 読書(政治、経済、社会, 科学)

 古賀氏は、2008年8月から一年あまり、麻生政権で公務員制度改革推進事務局の審議官に任にあり、内閣府への省庁上級官僚の人事権の掌握や天下りの禁止、官僚の年功序列の撤廃と民間の登用などの公務員制度の改革を取りまとめるキーマンだった。その急進性ゆえに財務省を始め霞ヶ関から怖れ嫌われていたのだが、民主党政権に代わった2009年9月の人事で、財務省の圧力に負けた仙石行政改革大臣から解任され、経産大臣官房付の閑職につけられた。その後の民主党政権での公務員改革の後退は周知のとおりで、現職官僚の天下りが認められ、日本郵政社長の人事で財務省出身の齋藤淳が初代社長の西川善文に代わったり、今年一月にはエネ庁長官が東電の顧問に天下りしたりと後退しているのだ。 野田首相も朝霞の公務員宿舎の建設を一旦認めて撤回したり、菅前総理が震災と原発事故後に総理の給与返上もやめるなど、前向きとは思えない。

 

古賀氏は、民主党が「政治主導」を実現できず、財務省や厚労省や総務省などが民主党の大臣や政務三役を骨抜きにしていったメカニズムを舌鋒鋭く解剖している。「政治主導」が絵に描いたもちに終わったのは、1、に民主党政治家が政治主導のあり方を理解できず官僚を使えなかったこと、2、にそれを実行する実力が政務三役になかったことだとする。 連合など公務員組合が所属する労組を選挙基盤にする民主党には、もともと公務員制度の改革はできないと結論付けているのは、経産省で一年先輩だというみんなの党の江田けんじなどと同じ主張である。 財務省対経産相という戦いの構図が官僚にも政治家にも見える。 

 

終身雇用と年功序列の中で、省益優先しか頭にない官僚から政治を取り戻し、沈没しかかっている日本の財政を救い、小さな政府で民間の自助努力を助けて経済成長を図っていくという構造を作るしかないというのは、小泉・竹中改革に通じる主張ではあり正しい。「政府に頼らず自分でやっていこうという企業や経営者は、霞ヶ関に陳情に来たりはしない(本書132ページ)」というのはまさにそのとおり。 霞ヶ関は無駄な補助金や既得権益の保護で税金を無駄遣いし、財政赤字を増大させ、それを埋め合わせるために増税が行われようとしている。 その著者の認識は多くの国民が感じているものを共通しているはず。 

 

古賀氏は、9月末を持って経産省を退任した。この問題で、時の人になりながらも、民主党は彼を公務員制度改革に再び登用することはなかった。そして、野田内閣は、消費税増税にひたすら突き進もうとしている、公務員や行政改革は骨抜きのままに。 古賀氏の焦燥となんとかしたいという声に一人でも多くの有権者が呼応して欲しいと思う。

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