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今年もあと一週間。

2012-12-24 | 時事、社会

自民党の大勝に終わった衆院選挙の結果は、小選挙区制度の特長が如実に出た。自民の比例区の得票率は30%弱と、2009年の時とあまり変わっていないからだ。 民主と未来の党は惨敗。これで小沢の政治生命も終わったか。 維新の会は第三勢力の支持を一番集めて、民主に近い70余席を獲得し、みんなの党も意外に伸びて20近い議席を取った。安倍総裁は、26日の首班指名を待たずに、日銀に追加的金融緩和と年2%インフレターゲットを求め、応じない場合は、日銀法の改正もと迫った。 

 

為替と株式は、すぐに反応して1ドル=84円代まで円安が進み、株価も10,000円の大台を超えた。だがこれはあくまで世界を浮遊する投機的マネーの反応だということを忘れてはならない。 根本的には、日本の人口減少と高齢化による消費の遁減は避けられず、1000兆円を突破してさらに毎年30兆円のペースで増え続ける巨額な財政赤字が首を絞めていくことは間違いない。デフレ脱却というが、グローバル化で安く作られる製品の価格は、無理に上昇させられるものではない。物価については、横ばいかわずかに上昇している期もあるではないか。インフレとは、要は国民が一生懸命貯めてきた1500兆円の資産の価値が減じるということだ。 際限のない金融緩和がまだプラスになるのは、円安効果で息が付ける輸出製造業であり、経団連はそうした企業の集まりだ。 エネルギーや医療・福祉などの成長産業に投資して雇用を生み、賃金を少しでも上げる努力がもっと必要なはずである。

 

将来に対する不安から貯金し消費に回さないのが悪い、そうした心理を打破し、インフレだから今使うしかないという気分にさせるというのは余りに国民を馬鹿にしていないか。 一人一人はよく考えて、家計で消費と貯蓄のバランスを取っている。低成長と言ってもGDPはマイナスではないし、クリスマス前のデパートや家電量販店を見れば、人でごった返している。 国民は決して過度に保守的になっているわけではないと感じる。 不安を除去するのが大事なら、年金や老人医療制度を持続可能なモデルに早く変革し、若年層の雇用や教育にもっと投資すべきである。 少子化がこのまま止まらなければ、2050年に8700万人程度の日本の経済規模は、世界で20位圏に落ちるのは間違いない。

 

安倍氏と自民党は経済政策が第一と意気込むが、それはリーマンショック以前の「成長」の時代に戻ろうとしており無理筋だと批判する声がある。 笹子トンネルの崩落事故を見れば、老朽化したインフラを改修し、役目を終えた道路やダムは廃棄することが必要だろうが、10年で200兆円出すという建設投資がばら撒きにならないよう慎重さが求められる。 原発も廃炉になるものが今後どんどん出てくるし、廃炉技術は蓄積しないといけない。 また、日本は内需が9割近くを占める巨大な国内経済を持っており、農業もサービス産業もまだまだ成長の余地があるはずだ。海外がメインマーケットである経団連のエリート企業の言うことのみ聞いていては、政策を誤る危険もあるだろう。今や貿易収支が赤字になりつつある日本にとって、円高によってエネルギーや資源、食糧など国民の生活に欠かせない物資が安く輸入できるメリットは少なくない。

 

今年を振り返ってみると、、

今年は、会社の体制の変化や仕事の忙しさもあって、やや不安定な時期も過ごした。じっくり腰を据えて読書する時間はなく、あまり本を読んでいない。 

 

とはいえ、いくつか印象に残る著作に出会った。日本の戦後史に新たな光を当てた孫崎亨の「戦後史の正体」はベストセラーになったが、これまでの常識を覆した快著。 佐藤優と手島龍一というインテリジェンスのプロの対談「動乱のインテリジェンス」も、尖閣や沖縄、北方領土問題について鋭い洞察を与えてくれた。 佐藤氏によれば、普天間の県内移設どころか、沖縄の脱ヤマト化が心配だといい、大統領に返り咲いたプーチンは、2島プラスαの返還の用意があるという。 

 

経済では、P.クルーグマンの「さっさと不況を終わらせろ」は、この人は昔からインフレターゲット論者だったが、今やケインズを持ち出し財政出動の旗を振りまくる。 この辺は国債出しまくれという異色の経済評論家 三橋貴明にも通じるし、自民党の政策もこの筋だ。 一方、消費税増税法案が通ったり、脱原発が遠のいた無力感がある中で、京大の山中伸也教授のノーベル生理医学賞の受賞は、明るい話題だった。 教授の本は益川氏との対談も含めて数冊読んだが、ES細胞を使わずに皮膚から万能細胞を作るという「Vision」とハード「Work」を見事に実らせた山中さんの生立ちを知るのは楽しい。 研究の先達や自分のチームを立てる姿勢や、iPS細胞を何としても製薬や再生医療に役立てるという山名さんの強い使命感が、如何にも日本人らしく好感が持てる。 

 

そいいえば、書店で売出し中のkindleを買った。WiFiモデルだが、7980円と比較的安くてちょっと衝動買いだ。 内田樹の文庫を一冊読破した が、次はGoogleについての本でこいつは600ページ以上ある。 フォントはiPhoneには較べるべくもなく、活字印刷の美しさは味わえないが、新 書やビジネス書程度ならどうせ一度しか読まないから、このシンプルなPDAで済んでしまえば便利だ。実際、通勤電車の中でも片手で持てるし、角度も変えら れるので使える気がしている。 さらに、夏目漱石など古典文学は、唯でダウンロードできる。 名作をアーカイブしておくことも可能というわけだ。 スマホ はまだiphone 4だし、iPadも持っていないが、読書はするからkindleはearly adopterになってみたというわけ。 帰省の新幹線の中でも、軽くて嵩張らなくて便利と思う。600ページ読破できるかどうか、楽しみである。

 

音楽では、80歳を過ぎてバッハの無伴奏チェロ組曲を録音し始めたチェリストの青木十良の伝記を読み、一番難しい第6番の演奏を録音したCDを買って聞いたが、若々 しく伸びやかでよく響く音に驚かされた。大阪の漢方の薬屋で10人兄弟の末っ子として生まれ(だから十良)、少年時代は物理学者になりたかったそうで、本 格的にチェロを始めたのは10代半ば過ぎてからだという。現在90歳を過ぎてなお現役の演奏者である青木氏によれば、「自分は音楽にEleganceを求 めていると最近わかった。その根底にあるのは「自尊」であり、「気品」とか「品格」と言ってもいい。「自尊」とは自分を信じ、他人を尊ぶこと。それが全身 にみなぎって表現できたとき、Elegenceの音楽が出現する」と述べている。 年を重ねても生涯こうした高い目標を持ち続けて精進できる人は、そう多 くはないだろうが、お手本にしたいと思う。

 

転職して東京に出てきて16年が経ち、2歳だった娘は18歳になって大学に入り、夏にはロンドンに短期留学した。 30半ばだった自分も五十路を超え、そろそろ定年後を考えて人生を観ずる時期になった。月日の経つのは早く、心境においてもかなり変化したと思う。病気をしないのが一番で、社会と繋がって仕事ができるのは幸せで、長く働ければそれに越したことはない。 謙虚な気持ちで新たな年を迎えたいと思う。

 

 

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