goo

日航機事故から20年

2005-08-14 | 時事、社会
今年は、戦後60年でヒロシマ、ナガサキの原爆記念日や太平洋戦争を振り返るTV番組などが目に付くが、同時に御巣鷹山の日航機墜落事故からも20年ということで、12日に夜にはTBSとフジが特番を組んだ。私は、TBSの番組を途中から見たが、CVR(ボイスレコーダー)の音声を最後の瞬間まで聞いたのは初めてだった。 「これはダメかもしれんな」と機長がつぶやいた声、そして最後の瞬間が近づきつきあるときの「あたまをあげろ、あげろ」と機首をあげようとして繰り返す声、そして激突の音響とともにCRVは終わっていた。 言い知れぬ衝撃を受けた。

この事故については、78年の尻もち事故の際にボーイング社が行った圧力隔壁の修理ミスが原因で、金属疲労した隔壁の亀裂が飛行中に広がり、一挙に隔壁が破れて与圧されたキャビン内の空気がに噴出し、垂直尾翼を一瞬にして破壊した。 その際、4つの油圧系統も全部だめになって操縦不能になり「ダッチロール」を繰り返した後、操縦士の懸命の努力もむなしく、約30分後に群馬県の山の尾根に激突し521人の方が犠牲になった、という一般に流布された報告をこれまでなんとなく受け入れていた。 恥ずかしながら、今回改めてこの事故に関するWEB上の言説や本を読んで、この調査委員会の報告内容には疑問点が多いことを理解した。 

具体的には、隔壁が破れた直後、報告書にあるような急激な減圧は起きなかったと想定されることが最大の争点のようだ。 つまり、問題は78年の尻もち事故の際の、圧力隔壁の修理のミスという一時に起因するものではなく、B747の設計上、構造以上の問題に起因するという事実を隠すために、敢えて修理ミスのせいにしたという見解がある。 あるWEBサイトによれば、もともとB747は20000飛行時間以上にわたる与圧試験を受けておらず、設計上圧力隔壁に問題がおきる構造であったこと。さらにもともと大陸横断用に設計されたジャンボを日本のように短距離飛行に使用し、圧力隔壁に頻繁に負荷をかけた日航の使用法にも問題があるという。

この他にも、疑問とされていることが多々ある。 墜落現場の特定が非常に遅れ、救出活動が14時間以上経ってから行われたこと。 墜落後一時間余りで現場に到着して、救助活動を行おうとした米軍を日本側が制止したこと。 同機が違法の放射性物質を運搬しており、被害者よりそちらの回収が優先されたという憶測もあることなど、まさに謎が多いのだ。 流石に演習中の海自の艦艇から発射されたミサイルが命中したというのは荒唐無稽と感じるが。

いずれにしても、この事故から20年の間に、世界で航空機の墜落事故は後を絶たないし、よりによって12日の当日福岡空港からハワイに立ったJAL便が離陸後エンジンから火を噴いて空港にUターンする事故が起こった。 もちろん100%完璧な機械はありえなし、それを整備し操縦するのが人間である以上ミスも避けられない。 乱気流や雷などの自然現象もある。 しかし、日航機事故の真実が白日の下になっていないとするなら、20年経ったとしても、それを見過ごすことはできない。 今回、事故現場の御巣鷹山が秩父山系にあり、甲武信ヶ岳の北の三国峠から谷を隔てた北の山であることを地図で初めて確認した。 この足で踏みしめた甲武信の頂上から5キロと離れていない尾根がその惨劇の地であったと知ったとき、運命のJAL便が自分の頭上を飛んでいく光景が瞼に浮かんだ。 お盆入りを目前に出張から自宅に戻るビジネスマンや、旅行の思い出一杯に帰路についた家族の幸せを、過酷な運命は一瞬にして奪った。 500キロ近い速度で尾根に激突した瞬間、肉体は一瞬にして砕け散った520人の魂は何を思ったのか。 さぞかし無念であったろう犠牲者のご冥福をあらためて祈りたい。この事故の記憶を風化させないためにも、もうすこし資料を読んでみるつもりである。
しかし、20年前のあの夏の日、25歳だった私は何をしていたのか、口惜しいことに今や思い出せない。

追記; その後読んだ日航機関連の本は、以下のとおり。
    御巣鷹の謎を追う 2005年 宝島社(ボイスレコーダーDVD付)
    隠された証言   2003年 新潮社
    壊れた尾翼    1987年 講談社α文庫
    墜落の夏     1986年 新潮文庫
    沈まぬ太陽    1999年 新潮文庫
goo | コメント ( 1 ) | トラックバック ( 0 )
 
コメント
 
 
 
拝見しました (I..OGAWA)
2005-08-17 23:06:39
相変わらず、クソ真面目(ゴメン!)な貴兄の

ブログ。人柄がにじみ出てて、懐かしい。

ご祖母様のご逝去存じませんで、お悔やみも

申し上げず失礼しまた。日航機会社の先輩が

12人乗ってました。葬式の手伝いが忙しい

熱く哀しい夏でした。

ところで最近の私の購入書籍

*福田和也「日本人の目玉」「地ひらく」

*小熊英二「民主と愛国」

*内田 樹「他者と死者/ラカンによる

      レヴィナス」

なんか傾向が似てますね。

 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。