主人公の「Ka」は42歳。トルコを代表する詩人でイスタンブールのブルジョア階級出身。ドイツに政治的に亡命していたが、トルコの東の果て、グルジアやアルメニアとの国境に近い小さな街「カルス」を初めて訪れる。 何者かに殺害された市長の後釜を決める市長選と、イスラム教の教えに従って髪を覆い、謎の自殺を遂げる少女達の事件を取材するために2日をかけてこの雪に閉ざされる街にやってくる。 しかし詩人Kaがカルスにやってきた本当の目的は、学生時代から憧れていた女性イペッキが、結婚していた友人で市長選に穏健派イスラム党から立候補したムスラフと別れたという噂を聞いたからであった。 降り続く雪のため周辺との交通が3日間閉ざされたカルスで、イペッキを深く愛し、彼女をフランクフルトに連れて帰り幸せになろうとする詩人。 しかし、それは適わぬ望みではあったのだが。 国家が政教分離政策の名の下に推進する西洋化に反対し、宗教高校の学生や髪を出して登校することを拒む少女達を組織するカリスマ的指導者「紺青」もこの街にいた。 彼は、元市長の暗殺と、Kaがイペッキとの最初の邂逅で偶然その場に遭遇してしまったカルスの国民学校校長の射殺事件(トルコの法律では女性は髪を出さないと登校を許可されない)の黒幕ではないかとされる。 「紺青」に心酔し、髪を覆い続ける少女達のリーダーであるイペッキの妹「カデュフェ」。 Kaがこの世で一番美しいと崇め、結ばれることで最高の幸福をもたしたイペッキが、実はこの若いゲリラの指導者「紺青」とかつて繋がりがあったことを知り打ちのめされる詩人. かつての左翼運動の活動家で役者スナイが、カルスの街でその妻と演じた芝居がそのまま軍部によるクーデターとなるという意表をついた展開。
現代のトルコで続く宗教と国家の対立、アラーへの信仰と押し寄せるヨーロッパの価値観のはざ間で、そして貧困と富者の問題に引き裂かれるトルコ人の若者達。 人は人生においいて何を信じ、何を得ることができるのか。 Kaがそう結論したごとく愛のみが救いなのか。 近代人の自我と信仰、「愛」と「救済」についてこれほど深く描いた小説は、ドストエフスキーのごとしである。 これを読めば誰もが、詩人Kaと一体になり、カルスの雪に閉ざされた道を彷徨いながら、「詩が降りてくる」霊感に慄き、美しく賢いイペッキに永遠の恋をすることだろう。
現代のトルコで続く宗教と国家の対立、アラーへの信仰と押し寄せるヨーロッパの価値観のはざ間で、そして貧困と富者の問題に引き裂かれるトルコ人の若者達。 人は人生においいて何を信じ、何を得ることができるのか。 Kaがそう結論したごとく愛のみが救いなのか。 近代人の自我と信仰、「愛」と「救済」についてこれほど深く描いた小説は、ドストエフスキーのごとしである。 これを読めば誰もが、詩人Kaと一体になり、カルスの雪に閉ざされた道を彷徨いながら、「詩が降りてくる」霊感に慄き、美しく賢いイペッキに永遠の恋をすることだろう。
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