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米大統領候補 オバマ上院議員に期待

2007-12-29 | バラクオバマと米大統領選
今年もあと3日を残すのみとなった。
一年をゆっくり振り返る気持ちの余裕はないが、2日前にパキスタンのブット元首相がテロの犠牲になり、世界の抱える政治的、宗教的対立の深い闇を改めて思い知らされた思いだ。(昨年の大晦日にはイラクのフセイン元大統領が処刑された。) イラクでは日常の出来事のように自爆テロがおこり、アメリカ兵の犠牲者だけで4000人近くになる。民間人の犠牲者の数は、その何十倍であることは言うまでもない。アフガニスタンも一向に安定せず、隣国のパキスタンは安定を失いつつある。深まる一方のこの対立と報復の連鎖を断ち切る手段はあるのか。

アメリカに目を向けると大統領選キャンペーンは、1月3日のアイオワ州の予備選に向けて、最高潮に達している模様だ。 民主党は圧倒的な知名度を背景に序盤からリードを狙うヒラリークリントンを黒人のオバマ上院議員が追っており、前回ケリー候補の副大統領候補だったエドワーズが続く。共和党の指名レースには今回はほとんど関心がないが、元牧師でアーカンソー州の知事だったバッグビー、マサチューセッツ州知事のロム二-を、前回の選挙の立候補でおなじみにマケイン上院議員や元ニューヨーク市長のジュリアーニが追っているという世論調査の結果がCNNで流れている。

ブッシュ大統領の圧倒的不人気ぶりから、例年より早く今年の初めからスタートした大統領選キャンペーンは、昨年の中間選挙での民主党の勝利からみても、今回はデモクラットが主役と見て良いだろう。 特に、2004年の民主党大会でケリー候補の応援演説に、イリノイ州上院議員という格下の立場から抜擢され、彗星のように登場したオバマ現上院議員には注目したい。

バラク・オバマは、1961年生まれ。父はケニア人、母はカンサス出身の白人でありながら、容姿は父の血を受け継いだ。 2歳で両親が離婚し、ハワイとインドネシアで幼年期を過ごす。シカゴの南部の貧しい黒人居住地区でコミュニティーオーガナイザーの仕事をしたりしながら、ハーバードのロースクルーに入り、アフリカンアメリカンとしてはじめてHarvard Law Revueの編集長になったあたりから頭角を現した。弁護士活動をしながら、地域に根ざした政治活動を行い、イリノイ州上院議員を2期務め、2000年にイリノイ州から合衆国下院議員に挑戦するが惨敗。その後、再びイリノイ州議を務め、ケリー候補のシカゴ地区の選挙活動時に知り合ったことから、2004年の大統領指名大会の応援演説者に抜擢された。大変な評判を取ったそのときの演説は、ObamaとYou tubeに入力すればすぐに視聴できる(私も今回初めて見た。) 自らの生い立ちから語り始め、合衆国独立宣言にあるコアバリュー(皆平等で、自由で、幸福を追求する権利と機会を与えられている。) アメリカにはそれを実現できる機会が開かれており、そのシンプルな夢を信じる力をアメリカは持っている、と語るオバマの言葉に次第に魅入られていく聴衆。 素晴らしい国でありながら、今の政治ははやるべきことがやれていない、権益や影響力やお金に足を取られる政治家。人々は金持ちと貧乏人に、保守主義者とリベラルに、白人と有色人種に分断されている。 オバマは、自らが貧困地区の教会で人々と語り合った経験を交えながら語る。 誰も政府にすべておんぶに抱っこしたいなどかけらも思っていない。人々は、真面目に働き、子供に教育を与え、老人に医療を届け、誇りをもって生活したいのだ。 しかし、今のこの国には希望(hope)よりも皮肉(cynicism)が蔓延している。 私達の合衆国の夢を取り戻そう(reclaim)とオバマが最後に叫ぶとき、聴衆は歓喜に震えている。ここからオバマブームが始まったのか、と得心した。いかにもこれは、凶弾に倒れたJackやBobby Kennedyや、I have a dreamと語りかけたキング牧師に似たカリスマ性を帯びている。

オバマには2つの著書がある。 10年くらい前、黒人初のHarvard Law Reviewの編集長となり注目を浴びたときに書いた自伝。そして2006年に上梓された「合衆国再生(Audacity of hope)」 この後者を読んでみると、オバマが高い知性と勉強に支えられており、しかもその生い立ちや経歴を通して、アメリカの抱える貧困や教育、医療といった問題を深く捉え、その解決のために政治を志していることが良く分かる。自分の家族やスラム地区の人達の支援活動の体験を率直に語るその姿勢には、大変好感が持てる。 

オバマがもし大統領になったら、アメリカは生まれ変わるかもしれない、という期待と抱かせるだけの力を私は感じた。それを感じさせるカリスマに久しぶりに出会った。(因みにYou tubeには、オバマの虜になったオバマガールが歌うソングまで出ている。I got a crush with Obama~ とグラマーな美女が腰をクネラセながら歌っているのには苦笑。)

筆者も今多分に、I got a crush on Obamaの症候群を呈しているのだが、ペンシルベニアの大学で学び、会社人になってからもアメリカに何年も駐在した友人にオバマの当選の可能性を話したところ、黒人が大統領になることはあり得ない、と即座に断言した。そうなったら俺も移住するよ、と彼。 アメリカもラテン系やアジア系など白人以外の人口が増え続け2050年には白人はマイノリティーになるとも言われている。 しかし、人口構成の問題の前に、一部の金持ちや権力者に富が集中し、老人やマイノリティーなどの弱者が医療や年金にも預かれないような社会でいいのか、このままdivided されたアメリカは荒廃していくのか、という問いに本気で取り組む若い政治家が出てきたことは、少なからぬアメリカ人に希望と勇気を与えていることは間違いあるまい。 ヒラリーがもし大統領になれば、ブッシュとクリントンの政治が24年間続くことになる(1989~2012)、というのも考え物だし、You tubeを見ても、ヒラリーの画像は圧倒的にコケにしたものが多い。意外と彼女は失速するかもしれない。

アメリカは言葉による盟約の国。オバマは民衆の心に刺さる言葉を次々に発し、2004年の党大会で聴衆をカタルシスに導いた。 アメリカの再生を可能にする、本物のアメリカの政治家が、diversityを持って生まれ育ち、普通のアメリカ人の苦労を知りぬいたオバマのような人にこそ可能なのだと思わせる何かをこの政治家は持っている気がする。 アイオワから、ニューハンプシャー、スーパーチューズデーまで、このレースのいくえは目が離せない。
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