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後部衝突試験の義務化が必要だ

2009-09-23 | クルマ
報道写真やTVを見ると、追突された大型ミニバンの後部は大きくつぶれ、3列目の乗員の生存空間は残されていないように見える。 こうした追突事故は後を絶たない。 数年前、東名高速 東京インター付近で酔ったトラックの運転手が乗用車に追突し、前のトラックとの間に挟まれて形も残さぬほどペシャンコになった事故では、確か乗っていた家族全員が死亡した。この事故以来、飲酒運転の規制が大幅に厳しくなったことは記憶に新しい。

今回の事故で改めて思うのは、日本のミニバンの三列目が、追突事故に対して大変危険だということだ。 事故にあったミニバンはかなり大型のものだったと見受けられ、比較的リアのクラッシュスペースはあったほうだと思うが、それでも何トンもある巨大な大型トラックの追突の衝撃には全く役に立たなかった。 日本にはそれより小型のミニバンが五万とあるが、その3列目に座ってみると、単に座席は狭いだけでなく、人はほとんどリアの車軸の真上に座る形であり、体は僅かなリアクラッシュゾーン内に位置しているものが沢山ある。 こうしたパッケージングが許されていること自体が問題だと思われる。

日本の自動車衝突試験は、全面と側面はそれぞれ50km/hを越す衝突試験があるが、後部は、45km/hでバリアにぶつかった際に、燃料タンクが漏れないという規制はあるが、乗員保護については、シートにダミーを載せて、レール上を逆向きに滑らせて(スレッドテスト)ヘッドレストの効果を計るものだけだ。 念のためアメリカのNCAPと欧州のEuro-NCAPも調べてみたが、確かに両国とも後突乗員保護試験は義務付けていないし、IIHS(全米損害保険協会)とEuro-NCAPで、同様のヘッドレスト試験や低速でのバンパーへの損傷などが試験されているのみである。燃料漏れ防止の規制にしても、かつてフォード ピントの燃料漏れによる火災問題が引き金でFMVSS301条が強化されて出来た経緯がある。今回のような事故を見ると、ミニバンの多い日本においては、後部衝突時の乗員保護試験かそれに類する規制が必要と思われる。少なくとも、私はリアハッチガラスが20センチ後ろに迫っている日本のコンパクトミニバンの3列目には絶対乗りたくないし、人を乗せる気もしない。

人間は必ずミスを犯す動物だから、追突事故で業務上過失致死の運転手だけを攻めても悲惨な事故は減らない。 実際、最近、家族の一人が軽度の追突事故に見舞われたし、車を運転するかぎり、自らも加害者になる可能性を必ず伴う。 人間の過失をカバーするために、レーダー技術を使った追突防止のための警告システムや、最近ボルボが導入した時速30キロ以下では完全停止までブレーキングする「シティーセーフティ」のような装備は、今後必須アイテムになるべきだろう。 特に、日本が今後高速道路の無料化などで、本格的な高速モビリティー時代を迎えるとすれば、アダプティブクルーズシステムや、追突警告システムなどは大いに普及してほしい。

それと同時に必要なのは、ドライバーに対する啓蒙だ。 法制化されても装着が以前と較べて進んでいないチャイルドシートもそうだが、まずドライバーに3列目の危険性など、正しい情報をきちっと伝えることだ。 それは行政の役割でもあり、日本では未発達の第三者機関や消費者団体の役割でもある。 残念ながら、メーカーは経済原則に縛られて、そうした改善に中々踏み出せない。 アメリカにおいてさえ、安全問題のラルフ・ネーダーやコンシューマーレポートがあって、NHTSAの規制や情報公開が進んだ歴史がある。 高速道路の無料化や、燃費と排ガスの測定モードサイクルの改善などと合わせて、自動車安全の問題も、メディアや消費者の間で議論が盛んになり、一般市民の意識が高まることを期待したい。

最後に一つ珍しい映像をご紹介しよう。設立50周年を迎えたIIHSが行った1959年のシボレーベルエアと、2009年モデルのシボレーインパラのオフセット衝突試験の映像だ。 50年間に如何に衝突安全性が進化したかが一目瞭然である。IIHSは、損害保険会社の利害を越えて、自動車安全の向上に貢献してきた。

http://www.youtube.com/watch?v=_xwYBBpHg1I
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コメント
 
 
 
Unknown (Unknown)
2011-05-05 17:24:28
同感です!
 
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