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洞爺湖サミットの成果についての賛否両論

2008-07-13 | 環境
9日に閉幕した洞爺湖サミット(G8)については、最大のテーマだったCO2の削減について中期的な削減目標を合意できなかったことで、成果なしという声もあれば、「2050年までに排出量を50%削減することを世界に求める」、という宣言は一歩前進という見方もある。特に、中国、インド、ブラジル、メキシコ、オーストラリア、インドネシア、韓国、南アフリカといった成長著しい他の主要排出国を含んだ16カ国会議MEM(Major Economies Meeting On Energy Security and Climate Change)が今回初めて開かれ、「2050年に半減」は合意に至らなかったものの、世界の8割以上のCO2排出する国家間で討議の場が持たれ、来年にイタリアで行われるサミットに合わせて、再度MEMが開催されること、また、年末のワルシャワにおける気候変動枠組条約締結国会議(COP14)や、ポスト京都議定書(COP3)の目標を定める場とされる来年デンマークで開催されるCOP15に繋いだという点で、一応の成果を収めたとも言われている。

300億円とも言われるG8開催のコストに見合った成果かどうか、議長国日本が主導的な立場を果たしたかどうかについては、大いに議論の余地はありそうだが、日本国民にとっては、今回のサミットに関連した報道などを通して、CO2排出削減と気候変動の問題が、身近なテーマとして認識されたことは確かだろう。2050年に50%削減するとなれば、G8諸国は、70-90%の削減を必要とされるという事実は、これまでなんとなく感じてきた私達のライフスタイルの変革を、抜き差しならぬものとして、早晩突きつけられることを示唆した。飲み込みのいい日本人は、ガソリン高や消費者物価高の直接の影響として、クルマの使用を控え、さらに節電に勤しむと同時に、自分たちのライフスタイルの根本的な変更の要請を感じ取ったかもしれない。

作家の高村薫は、週刊誌AERAの今週号のコラムで、「暑苦しいサミット」を尻目に、生活者の防衛意識が既にあちこちで行動の変化を生み始めており、それは「地球環境への本能的な危機感が伴っているので、早々揺らぐとは思えない」し、「近い将来、私達がなだれをうって、クルマを捨て、深夜生活を捨て、大量消費を捨てる日がくるに日が来るに違いない」と早くも事実認定している。

太平洋の向こうのアメリカでも、サブプライム問題から端を発した信用収縮と原油高は、経済や社会を大きく揺さぶっている。1ガロン4ドルを超えたガソリン価格は、大型トラックやSUVの販売を直撃し、アメリカの自動車市場は今年20%以上の大幅な落ち込みに見舞われている。 GMの株価は10ドルを割り、時価総額はトヨタの30分の1、フォードに至っては、5ドル前後とほとんど破綻寸前まで株式市場の評価は落ち込み、大規模な人員削減や工場の休止や閉鎖に追い込まれている。その影響は、GMに変わって世界NO.1の地位を獲得したトヨタにも及び、立ち上げて数年にしかならない大型車を生産する工場の3ヶ月操業停止というこれまで経験したことのない事態となっている。輸出依存度の高い中国やインドの株式市場も大幅な下落に見舞われ、アメリカ市場にぶら下って成長してきた海外の企業にも大きな影響が出ている。

1バレル140ドルと投機的な売買で高騰しすぎた原油価格は、一旦下がるとの観測もあるが、燃料価格はかつてのような値段に戻ることはないだろう。エネルギーにおいては、脱石油と天然ガスなどの代替燃料へのシフトや、風力や太陽電池といった自然エネルギーへの移行を大きく後押しすることにもなるだろうし、クルマは、低燃費化や電気パワートレインの開発に拍車がかかるだろう。

地球温暖化と気候変動のもたらす影響は、猛暑や旱魃、自然災害といった形で、人間の肌身をもって感じられるし、原油の高騰に促されての節約や省エネルギー、省資源の運動はこれから急速に加速していくように思われる。大げさに言えば、我々は、文明の発展史における大きなターニングポイントに差し掛かっているようだ。少なくとも、日本人の意識の中に、そのような認識が刷り込まれはじめたこの一ヶ月間ではなかっただろうか。
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