しかし、その翌日に、世界130国以上で保険業務を営むAIGグループの破綻懸念が持ち上がると、こちらには運転資金という形で10兆円近い公的資金を注入し、不良債権の処理と業務の整理を事実上国有化の下に実施するという決断を下した。さらに、金融市場での貸し渋りと取り付けを防ぐため、MMFの元本保障や、貸し株や空売りの禁止という大掛かりな投機的売買の規制にまで踏み込み、市場の崩壊を防ごうと懸命だ。その成果あってか、金曜には株式市場もドルも反発して週末を迎えた。資本の毀損が危ぶまれていた証券3位のメリルリンチも、バンクオブアメリカに吸収合併が決まり、正にウオールストリートでは、大地殻変動が起こり、その余波は欧州や日本を含む全世界に波及している。
住宅ローン債務の証券化や、デリバティブなど、この10年で飛躍的に拡大した金融ビジネスは、まさに実態経済の何十倍もの規模に膨れ上がり、投資銀行や証券会社の資産は、ぞっとするような規模になった。債権を担保に別の金融商品や不動産に投資し、その貸し借りの重層構造が誰も正確に把握できないように絡みあいスパイラル状に膨れ上がる。そうした虚構の金の動きが利潤を生むという魅力的で不可解な巨大ゴム風船がついに破裂したというべきか。 サブプライム問題に端を発する今回の金融恐慌は、虚栄の灯(bonfire of vanities)の消滅の予兆ではないだろうか。
過剰の流動性を一体誰が所有しているのか。オイルマネー、政府系ファンド、金融で成功したニューリッチ、そうした巨大な富が一部の人達に所有され、実態のない金融経済が世界を振り回す。その矛盾に気づくべきときが来たのかもしれない。日本人の個人金融資産が1400兆円というが、それはほとんどが庶民が精一杯働いて貯めてきた資産のはずだ。
一方、情報通信の革命的な進歩によって成功を収めたIT企業や、資源高でにわかに巨利を得ている産油国や石油メジャー、ゲーム化した市場で巨富を得ている金融業者は、富が富を生むレースに果敢に挑戦してきた。 一方で、途上国の貧富の差や、先進国においても格差問題が深刻化し、自由で平等で安定した社会が崩れつつあるのが現状だ。
「現代思想」が最近吉本隆明の特集を出し、巻頭に70ページ近いインタビューが載っている。 吉本は、今の日本の状況が敗戦後に酷似しているといい、占領軍が農地解放を行って小作人に土地を分け与えるという革命をやったごとく、水や空気までもが商品になった現代は、まさに第二に産業革命とも言うべき時で、今こそ富の再分配を本格的に考えるべきだと述べている。マルクスは、産業革命で生じたものは、富を独占する資本家と使役される労働者の「肺結核」だと言ったが、今の日本は、肺結核のかわりに「精神病」が蔓延している。それは、従来の精神病ではなく、秋葉原の事件のごとく、追い詰められた正常者が突然異状な行動に走るという、異常者と正常者の区別が最早難しい、浅い層で起こる精神病だという。
マネー中心経済のあり方が、根本的に見直される契機になりそうな今回の金融危機。ポストバルブに現われるべき経済と社会のあり方を、真剣に問うべきときが来ているようである。
住宅ローン債務の証券化や、デリバティブなど、この10年で飛躍的に拡大した金融ビジネスは、まさに実態経済の何十倍もの規模に膨れ上がり、投資銀行や証券会社の資産は、ぞっとするような規模になった。債権を担保に別の金融商品や不動産に投資し、その貸し借りの重層構造が誰も正確に把握できないように絡みあいスパイラル状に膨れ上がる。そうした虚構の金の動きが利潤を生むという魅力的で不可解な巨大ゴム風船がついに破裂したというべきか。 サブプライム問題に端を発する今回の金融恐慌は、虚栄の灯(bonfire of vanities)の消滅の予兆ではないだろうか。
過剰の流動性を一体誰が所有しているのか。オイルマネー、政府系ファンド、金融で成功したニューリッチ、そうした巨大な富が一部の人達に所有され、実態のない金融経済が世界を振り回す。その矛盾に気づくべきときが来たのかもしれない。日本人の個人金融資産が1400兆円というが、それはほとんどが庶民が精一杯働いて貯めてきた資産のはずだ。
一方、情報通信の革命的な進歩によって成功を収めたIT企業や、資源高でにわかに巨利を得ている産油国や石油メジャー、ゲーム化した市場で巨富を得ている金融業者は、富が富を生むレースに果敢に挑戦してきた。 一方で、途上国の貧富の差や、先進国においても格差問題が深刻化し、自由で平等で安定した社会が崩れつつあるのが現状だ。
「現代思想」が最近吉本隆明の特集を出し、巻頭に70ページ近いインタビューが載っている。 吉本は、今の日本の状況が敗戦後に酷似しているといい、占領軍が農地解放を行って小作人に土地を分け与えるという革命をやったごとく、水や空気までもが商品になった現代は、まさに第二に産業革命とも言うべき時で、今こそ富の再分配を本格的に考えるべきだと述べている。マルクスは、産業革命で生じたものは、富を独占する資本家と使役される労働者の「肺結核」だと言ったが、今の日本は、肺結核のかわりに「精神病」が蔓延している。それは、従来の精神病ではなく、秋葉原の事件のごとく、追い詰められた正常者が突然異状な行動に走るという、異常者と正常者の区別が最早難しい、浅い層で起こる精神病だという。
マネー中心経済のあり方が、根本的に見直される契機になりそうな今回の金融危機。ポストバルブに現われるべき経済と社会のあり方を、真剣に問うべきときが来ているようである。