アメリカの大統領選挙が2日後に迫った。
オバマ、ロムニー間の3回の公開討論もYouTubeで見たが、現職大統領が有利という感想を持った。 ゆるやかではあるが、経済は回復基調にあって失業率は下がっているし、「過去4年間は最悪だった」と批判するロムニーが、どんなマジックで経済をドラマチックに好転させられるのかは見えてこない。3回目の公開討論のテーマだった外交においても、軍事費削減は間違っていると批判するロムニー候補からは、今の多極化した世界におけるアメリカの役回りを模索し、イラクから撤退、アフガにスタンからも2014年に撤兵を決めたオバマ以上の処方箋があるとは思えない。(ちょうど9.11の10周年の日に、リビア ベンガジのアメリカ大使館がテロの攻撃を受け4人が死亡、オバマ政権が攻撃を探知できていなかった点に批判が集まり、中東における弱腰、ロムニーいうところのapology外交を攻撃して、ロムニー陣営が一時的に勢いを得たのではあったが。)
オバマ陣営も、選挙戦後半戦に追い上げられて以降、ロムニー候補の攻撃に転じた。 ロムニー陣営の外交はブッシュやレーガン時代に逆戻りであり、経済政策は減税と財政赤字削減の算数が全く合わないという風に。 ロムニーが取ると言われているフロリダでの10月23日のオバマの演説を見たが現職として修羅場をくぐりぬけてきた自信がみなぎり、言葉の力のみならず、かつてのキング牧師のような迫力をも手中にしている。 ロムニー候補の言動がぶれているのを、Romniziaと疫病に例えて嘲笑するなど余裕も見せている。 これを見ると、オバマはこの4年間に成長したと感じるし、「ブッシュの戦争」の負の遺産と、100年に一度の金融危機からの脱出に翻弄された一期目を経て、2期目には分断されたアメリカ国家の統合と、調和によるより平和な世界の実現という目標に向けて、アメリカの存在感と信頼を高め、偉大な指導者になる可能性をも感じさせる。
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テレビでは、自らのPRよりも対立候補を誹謗する長尺CMの応酬が飛び交い、視聴者も辟易しているだろう。 しかし、この国の大統領になるには、ここまで膨大な人と時間とお金をかけた選挙戦を戦い、候補者は休みない地方遊説と公開討論で徹底的に人格と能力を試され、過去の言動から一挙手一投足をメディアで洗浄される試練に負けない体力と精神力が必要なのだ。 一年ごとに回転ドアをグルグル回る日本の首相とはなんと彼我の差があることか。
因みに、資産が数百億円、昨年の収入が20数億円で税金は3億円のロムニーは、実はデトロイトで生まれ育ち、父親はかつてのアメリカンモータース社の社長を務め、その後ミシガン州知事からニクソン政権の閣僚になっている。 本人はハーバード大でlaw& MBAの学位取得した後、ベイン&カンパニーというコンサルで社長に登りつめ、同社が出資したベインキャピタルという投資銀行の社長を経験した成功したビジネスマンだが、父親と違って、製造業には縁がない。 リーマンショックの後、倒産したGMに政府の支援は不要と言った、として攻撃を浴びているくらいだ。 1990年代にマサチューセッツの上院議員に立候補するも、テッド ケネディーに敗れた。2002年のソルトレイク冬季五輪の実行委員長を務め、2003年からマサチューセッツ知事を一期務めて、2008年の共和党大統領候補に立候補するがマケインに指名で敗れ、今回が2度目の挑戦である。
しかし64歳のロムニーが、10歳以上若くて成熟しつつあるオバマに勝るヴィジョンや変革のプランを持っているとは、経歴を見ても、討論を聞いても見えてはこない。 有権者もそのあたりを察知しているからこそ、オバマの僅差での有利で投票日を迎えようとしている。 激戦区のOhioはロムニー有利だそうで、Virginia, N.Carolina, Winsconsin, Iowaといった中西部もロムニーに付きそうということなので接戦ではあろうが、世界はwrong and reckless なロムニーではなく、バランスで融和的なオバマのアメリカを望んでいると思うのだ。