yahoo が9/8から実施しているネット投票では過半数を麻生氏が獲得。安倍氏は3位(http://quizzes.yahoo.co.jp/quizresults.php?poll_id=3425&wv=1
この麻生人気は、選挙戦終盤になって各候補の主張や人柄がより知られてきたことと、ウェブで情報収集する興味の深い層の見方を表わしていうように思う。サンデープロジェクトでは田原総一郎が、日本の大陸での侵略戦争の責任を認めた95年の村山談話を認めるのかどうか、安倍氏に執拗に迫っていたが、結局明確な答えを引き出せなかった。 安倍氏にはそれを素直に認めることができない何かがあるのだろう、という疑問は残ったし、かの戦争の是非の判断は歴史家に任せるべきだ、という主張は説得力を持たない。
いずれにしても、TVの報道番組では、候補者のしゃべれる時間が限られている。3候補の主張をしっかりと聞きたいものだと、自民党のウェブサイトhttp://www.jimin.jp/を見ると、ストリーミングで3人の候補者の立候補所信表明や、日本記者クラブでの記者会見、週刊誌によると麻生氏が大いに笑いを取ったという秋葉での演説も全部視聴できるではないか。 やはりTVではなくネットの時代なのである。
麻生太郎は人気モノ
さて、ここに来てネットでは一番人気という麻生氏から見てみよう。 秋葉での演説は愉快で大いに楽しめる。まずは、「紳士淑女、老若男女」に語りかける冒頭から、秋葉の「オタクの皆さん」と付け加えるところで笑いをとる。 そして、自称マンガオタクの面目躍如を施し、日本のサブカルチャーはアジアや世界を席巻しつつあると持ち上げる。 曰く、
‐ジダンやトッティーは、日本のサッカーマンガ「キャプテン翼」を呼んで選手になった。サマーワの自衛隊の車にはこの翼のマークが大書してあったら、イスラムの人から親近感を持ってもらえた。
‐タイの東大ともいえるチュラロンコンで女子大生に生まれ変わったら何処の国の何に生まれ変わりたいかとアンケートすると、日本人の女性が32%で一番であった。 なぜならバンコクの町を颯爽と歩き、一番金払いもいいからだという。 因みに日本人の男になりたいといった人は皆無だった、と。
‐年金の話しになるとこうなる。「1時間半も立ちっぱなしでこの演説会を聞いている元気な高齢者が一杯いる。 元気な高齢化社会は決して悲観することはない」とまずは楽観論をぶつ。 そして「年金の破綻とか不安をあおる人がいるが、年金資産は198兆円もあり今日か明日にもなくなるなんてことはあり得ない。 30年先のことを年金改革では論議しているのであって、そこのおじいさん、そんなに深刻な顔して聞いているけど、あと30年も生きるつもりですか」とここで爆笑。
麻生氏の真骨頂は、そのユーモアと庶民感覚、経済感覚の鋭さだろう。 他の演説や記者との応酬を聞いても、最も明瞭でわかりやすく、市民の感覚に近い。しかも自分の言葉でしゃべっている。 日本社会は最早一様ではないし、若い世代は高度成長期を知る40代以降とは違う人生観、社会観、労働観を持っている。 楽観的に未来を語る明るさと、若者の共感できる話術の巧みさとユーモアは、世代間で価値観が多様化してきた日本の社会状況にあって、政治への国民の興味を高める意味でも重要だと思う。 小泉の後も面白そうだ、という期待をいだかせる個性があるのは、他の2候補にはないアドバンテージだ。 麻生氏はあのだみ声とへの字に曲がった口元が随分イメージ的にはマイナスしてきたが、5メートル以内にいる人には、とても楽しくで親近感の持てるキャラクターだという。
40歳を過ぎて、実業から政治家に転身した麻生氏が、政治の中枢に登場したのは比較的最近である。 5年半前に小泉を含む4人の総裁候補が立ったときも立候補しているから、政権に対する意欲は高いものがあるのだろう。 福祉や格差是正の対策を打つにも、経済の成長が原動力であるという「名目での経済成長」を重視する感覚は間違ってはないと思う。 財務官僚上がりの谷垣氏は、消費税10%の必要を言うが、それより構造改革の継続による歳出削減が先に来るべきだというのが大方の国民の感覚だと思うし、経済がよくなり、株価も上がり税収が増えれば、不良債権や資産デフレも解消されていくのは事実である。 この点、国家や地方政治も結局は「経営」だ、という麻生氏の言葉には現実感がある。
庶民感覚や経済感覚に優れる麻生氏は、楽しいキャラではあるが、一国の宰相に相応しいビジョンや展望を持っているのかどうか。それは、今回の所信表明演説の20分の中である程度見ることができる。 中国と日本は1400年の歴史の中で、真に友好的であったことはなく実際は絶えず緊張関係にあった、だから今の日中の関係もそれほど驚くに値しないという意見は面白い。 日本はアメリカとの関係を主軸に安全保障を組み立て、外交を展開していくという結論においては、他の候補と同じにしても、安倍氏がその奥底に反米的ナショナリズムを潜ませているのではないか、という疑念を起こさせるのに対し、戦後の占領期から講和、独立を指導してきた吉田茂というリアリストの孫である麻生の頭の方が、今の日本の置かれている状況にあっているのではないかと思わせる。
安倍氏のわかりにくさ
さて、麻生応援歌になってきたところで、安倍氏をもう一度検証する。 安倍氏の唱える「美しい国」とは多分に抽象的である。 しばらく前に、「美しい国のメ○○デス」という某ドイツ車の広告があったが、なんだかよくわからない、気持ちの悪い印象があった。 美しい「人」とか「自然」のことならわかる。しかし「美しい国」といわれると、ちょっと引いてしまう人が多いだろう。 安倍氏の最大の政治的アジェンダは、自主憲法の制定と集団安全保障権の確立にあると思われるが、戦後、軍事力ではなく経済力、そして最近では文化力によって世界から認められて今日の日本があるということを忘れて欲しくない。 麻生氏が言うようにユーラシア大陸の東半分には、(ロシアと中国という)一党独裁政権がまだ残っているにせよ、そして北朝鮮という独裁者国家があるにせよ、日本がそれらの侵略に備えて軍部を増強する必要を国民は認めてはいないと思う。 また、安倍氏の言う、教育改革案も、教師を評価して悪い人は辞めてもらうとか、「規範」を教えるとか、勘ぐれば日教組系の職員を追い出し、戦前の皇国史観や儒教的倫理観に逆戻りするのではないかという印象がある。 「再チャレンジ制度」にしても、今の若者は「18歳で受験に失敗したからといって人生に絶望する」ほどやわではないと思う。 親殺しや子殺しなどをマスコミが派手に報道するものだから異常な社会が到来したかのようだが、欧米に比べればそうした事件も圧倒的に少ないし、かつてもそうした異常な事件は少なからず起こっているのである。 また、安倍氏の演説でよく出てくるのが、「今までは外国の引いた土俵の上で、一生懸命相撲を取って、ほめてもらってよしとしてきた」という言葉だが、そうした歴史観、政治感覚はそれこそ中曽根時代の「戦後政治の総決算」までのものではないだろうか。 ナンバーワンではなくても、オンリーワンであればいいという感覚、それがこれからの社会のベースとなる国民感情であるかもしれないし、日本人は豊かになったのだから、肩の力を抜いて個性的な生き方を求めていいはずだ。 競争する人はすればいい、しかしそんなに競争に明け暮れて一番になろうとしない人生も肯定する、そうした世の中になると思う。 そういう意味で、サブカルチャーに注目する視線は大事だと思う。
安倍政権はそれほど悪くないかもしれないが、靖国にしても、戦争責任にしても本人がはっきりしない。 政治は「誠」でやるものだと思うが、それを「技術」だ「国益だ」というような言い方で逃れており、安倍氏という人が本当はどういう人なのか見えてこず信頼がおけない。 真面目かもしれないが、楽しい政治にはなりそうもないし、閉塞感を打開してくれそうにはない。 谷垣氏は、優秀で頑張っているとは思うが、結局、消費税は上げるとか、アジア外交を重視するとかいうのは誰もが理解していることである。 そこに新しい考えは見当たらない。
今の3候補の主張を見聞する限り、麻生氏が個性的で一番おもしろそうだ、というのが筆者の印象である。 但し、彼が総理になったときに、回りの人を引っ張っていくリーダーシップがあるのかどうか、というのは未知数であるが。
小泉総理はなぜ安倍氏を選んだか
次期総裁は安倍氏で間違いないようだが、どうしてこんな流れになったのか。要は、最大派閥となった森派から次の総裁を出すということになれば、安倍か福田という話しだったに過ぎない。 そういう意味では、小泉総理は派閥を弱体化し、旧田中派(経世会)に復讐はしたかもしれないが、日本を誰に預けるべきかという意味では、特別な経験もビジョンも持たない安倍氏という自派の後継者を選ぶことしかできなかった。 中曽根氏が、靖国問題の本質は、天皇陛下が参拝できるようにすることであって、それが政治の役目であり、首相本人の信義で行く行かないなどは枝葉末節なことだと言っていた。 見識である。靖国への拘りにも代表されるように、小泉氏とは、結局、個人の美学を優先した奇人、変人宰相であったのかもしれない。 安倍氏が構造改革路線を邁進し、真に新しい日本のかたちを構築できるのかどうか今は正直不安の方が多い。 しかし、政治はリーダー自身の力量もあるが、参謀やチームの総合力でもある。 その点、自民党にはそれなりの人材がいるだろうから、それほど悪いほうには行かないかもしれない、という希望もあるわけである。
民主党はどうなる?
サンプロで中曽根元首相が、今回の3候補はいずれも優等生だが(小粒という意味?)、この総裁戦を戦ってきてだんだん風格が出てきた、と言っていたが、頼りない感じの安倍氏や、お坊ちゃん官僚のイメージの谷垣氏もそれなりにしっかりしている印象を与えるようになった。 自民党総裁候補がメディアで取り上げられる中で鍛えられていく一方、無風で再選を果たした民主党の小沢代表は影が薄くなってきた。 自民党にとっては、小泉が古い家を壊した、これからは新しい家を建てる時代だ、という認識で一致してきている。 安倍氏の考え方や手腕には疑問が残るが、団塊より若い世代の安倍氏が政権を運営するとなれば、一回り上の小沢氏が古く見えることもあろう。 既に壊し屋小泉の政治によって、派閥や官僚主導の時代が終わり、イラクへの自衛隊派遣で禁断の(?)一歩を踏み出した今、93年に自民党を離脱し、新生党を作ったときに小沢が言った「個人と国家の自立」というテーマは乗り越えられつつあるという谷垣氏の見立てはある程度当たっているかもしれない。 小沢氏が政権党を離れた13年の間に、もしくは小泉政治の5年間に政治は大きく変わってきたといえるのかもしれない。 民主党が勢いを伸ばし、政権に迫れるのか、それとも自民党新政権が国民の心をつかむのか、これからである。 (了)
この麻生人気は、選挙戦終盤になって各候補の主張や人柄がより知られてきたことと、ウェブで情報収集する興味の深い層の見方を表わしていうように思う。サンデープロジェクトでは田原総一郎が、日本の大陸での侵略戦争の責任を認めた95年の村山談話を認めるのかどうか、安倍氏に執拗に迫っていたが、結局明確な答えを引き出せなかった。 安倍氏にはそれを素直に認めることができない何かがあるのだろう、という疑問は残ったし、かの戦争の是非の判断は歴史家に任せるべきだ、という主張は説得力を持たない。
いずれにしても、TVの報道番組では、候補者のしゃべれる時間が限られている。3候補の主張をしっかりと聞きたいものだと、自民党のウェブサイトhttp://www.jimin.jp/を見ると、ストリーミングで3人の候補者の立候補所信表明や、日本記者クラブでの記者会見、週刊誌によると麻生氏が大いに笑いを取ったという秋葉での演説も全部視聴できるではないか。 やはりTVではなくネットの時代なのである。
麻生太郎は人気モノ
さて、ここに来てネットでは一番人気という麻生氏から見てみよう。 秋葉での演説は愉快で大いに楽しめる。まずは、「紳士淑女、老若男女」に語りかける冒頭から、秋葉の「オタクの皆さん」と付け加えるところで笑いをとる。 そして、自称マンガオタクの面目躍如を施し、日本のサブカルチャーはアジアや世界を席巻しつつあると持ち上げる。 曰く、
‐ジダンやトッティーは、日本のサッカーマンガ「キャプテン翼」を呼んで選手になった。サマーワの自衛隊の車にはこの翼のマークが大書してあったら、イスラムの人から親近感を持ってもらえた。
‐タイの東大ともいえるチュラロンコンで女子大生に生まれ変わったら何処の国の何に生まれ変わりたいかとアンケートすると、日本人の女性が32%で一番であった。 なぜならバンコクの町を颯爽と歩き、一番金払いもいいからだという。 因みに日本人の男になりたいといった人は皆無だった、と。
‐年金の話しになるとこうなる。「1時間半も立ちっぱなしでこの演説会を聞いている元気な高齢者が一杯いる。 元気な高齢化社会は決して悲観することはない」とまずは楽観論をぶつ。 そして「年金の破綻とか不安をあおる人がいるが、年金資産は198兆円もあり今日か明日にもなくなるなんてことはあり得ない。 30年先のことを年金改革では論議しているのであって、そこのおじいさん、そんなに深刻な顔して聞いているけど、あと30年も生きるつもりですか」とここで爆笑。
麻生氏の真骨頂は、そのユーモアと庶民感覚、経済感覚の鋭さだろう。 他の演説や記者との応酬を聞いても、最も明瞭でわかりやすく、市民の感覚に近い。しかも自分の言葉でしゃべっている。 日本社会は最早一様ではないし、若い世代は高度成長期を知る40代以降とは違う人生観、社会観、労働観を持っている。 楽観的に未来を語る明るさと、若者の共感できる話術の巧みさとユーモアは、世代間で価値観が多様化してきた日本の社会状況にあって、政治への国民の興味を高める意味でも重要だと思う。 小泉の後も面白そうだ、という期待をいだかせる個性があるのは、他の2候補にはないアドバンテージだ。 麻生氏はあのだみ声とへの字に曲がった口元が随分イメージ的にはマイナスしてきたが、5メートル以内にいる人には、とても楽しくで親近感の持てるキャラクターだという。
40歳を過ぎて、実業から政治家に転身した麻生氏が、政治の中枢に登場したのは比較的最近である。 5年半前に小泉を含む4人の総裁候補が立ったときも立候補しているから、政権に対する意欲は高いものがあるのだろう。 福祉や格差是正の対策を打つにも、経済の成長が原動力であるという「名目での経済成長」を重視する感覚は間違ってはないと思う。 財務官僚上がりの谷垣氏は、消費税10%の必要を言うが、それより構造改革の継続による歳出削減が先に来るべきだというのが大方の国民の感覚だと思うし、経済がよくなり、株価も上がり税収が増えれば、不良債権や資産デフレも解消されていくのは事実である。 この点、国家や地方政治も結局は「経営」だ、という麻生氏の言葉には現実感がある。
庶民感覚や経済感覚に優れる麻生氏は、楽しいキャラではあるが、一国の宰相に相応しいビジョンや展望を持っているのかどうか。それは、今回の所信表明演説の20分の中である程度見ることができる。 中国と日本は1400年の歴史の中で、真に友好的であったことはなく実際は絶えず緊張関係にあった、だから今の日中の関係もそれほど驚くに値しないという意見は面白い。 日本はアメリカとの関係を主軸に安全保障を組み立て、外交を展開していくという結論においては、他の候補と同じにしても、安倍氏がその奥底に反米的ナショナリズムを潜ませているのではないか、という疑念を起こさせるのに対し、戦後の占領期から講和、独立を指導してきた吉田茂というリアリストの孫である麻生の頭の方が、今の日本の置かれている状況にあっているのではないかと思わせる。
安倍氏のわかりにくさ
さて、麻生応援歌になってきたところで、安倍氏をもう一度検証する。 安倍氏の唱える「美しい国」とは多分に抽象的である。 しばらく前に、「美しい国のメ○○デス」という某ドイツ車の広告があったが、なんだかよくわからない、気持ちの悪い印象があった。 美しい「人」とか「自然」のことならわかる。しかし「美しい国」といわれると、ちょっと引いてしまう人が多いだろう。 安倍氏の最大の政治的アジェンダは、自主憲法の制定と集団安全保障権の確立にあると思われるが、戦後、軍事力ではなく経済力、そして最近では文化力によって世界から認められて今日の日本があるということを忘れて欲しくない。 麻生氏が言うようにユーラシア大陸の東半分には、(ロシアと中国という)一党独裁政権がまだ残っているにせよ、そして北朝鮮という独裁者国家があるにせよ、日本がそれらの侵略に備えて軍部を増強する必要を国民は認めてはいないと思う。 また、安倍氏の言う、教育改革案も、教師を評価して悪い人は辞めてもらうとか、「規範」を教えるとか、勘ぐれば日教組系の職員を追い出し、戦前の皇国史観や儒教的倫理観に逆戻りするのではないかという印象がある。 「再チャレンジ制度」にしても、今の若者は「18歳で受験に失敗したからといって人生に絶望する」ほどやわではないと思う。 親殺しや子殺しなどをマスコミが派手に報道するものだから異常な社会が到来したかのようだが、欧米に比べればそうした事件も圧倒的に少ないし、かつてもそうした異常な事件は少なからず起こっているのである。 また、安倍氏の演説でよく出てくるのが、「今までは外国の引いた土俵の上で、一生懸命相撲を取って、ほめてもらってよしとしてきた」という言葉だが、そうした歴史観、政治感覚はそれこそ中曽根時代の「戦後政治の総決算」までのものではないだろうか。 ナンバーワンではなくても、オンリーワンであればいいという感覚、それがこれからの社会のベースとなる国民感情であるかもしれないし、日本人は豊かになったのだから、肩の力を抜いて個性的な生き方を求めていいはずだ。 競争する人はすればいい、しかしそんなに競争に明け暮れて一番になろうとしない人生も肯定する、そうした世の中になると思う。 そういう意味で、サブカルチャーに注目する視線は大事だと思う。
安倍政権はそれほど悪くないかもしれないが、靖国にしても、戦争責任にしても本人がはっきりしない。 政治は「誠」でやるものだと思うが、それを「技術」だ「国益だ」というような言い方で逃れており、安倍氏という人が本当はどういう人なのか見えてこず信頼がおけない。 真面目かもしれないが、楽しい政治にはなりそうもないし、閉塞感を打開してくれそうにはない。 谷垣氏は、優秀で頑張っているとは思うが、結局、消費税は上げるとか、アジア外交を重視するとかいうのは誰もが理解していることである。 そこに新しい考えは見当たらない。
今の3候補の主張を見聞する限り、麻生氏が個性的で一番おもしろそうだ、というのが筆者の印象である。 但し、彼が総理になったときに、回りの人を引っ張っていくリーダーシップがあるのかどうか、というのは未知数であるが。
小泉総理はなぜ安倍氏を選んだか
次期総裁は安倍氏で間違いないようだが、どうしてこんな流れになったのか。要は、最大派閥となった森派から次の総裁を出すということになれば、安倍か福田という話しだったに過ぎない。 そういう意味では、小泉総理は派閥を弱体化し、旧田中派(経世会)に復讐はしたかもしれないが、日本を誰に預けるべきかという意味では、特別な経験もビジョンも持たない安倍氏という自派の後継者を選ぶことしかできなかった。 中曽根氏が、靖国問題の本質は、天皇陛下が参拝できるようにすることであって、それが政治の役目であり、首相本人の信義で行く行かないなどは枝葉末節なことだと言っていた。 見識である。靖国への拘りにも代表されるように、小泉氏とは、結局、個人の美学を優先した奇人、変人宰相であったのかもしれない。 安倍氏が構造改革路線を邁進し、真に新しい日本のかたちを構築できるのかどうか今は正直不安の方が多い。 しかし、政治はリーダー自身の力量もあるが、参謀やチームの総合力でもある。 その点、自民党にはそれなりの人材がいるだろうから、それほど悪いほうには行かないかもしれない、という希望もあるわけである。
民主党はどうなる?
サンプロで中曽根元首相が、今回の3候補はいずれも優等生だが(小粒という意味?)、この総裁戦を戦ってきてだんだん風格が出てきた、と言っていたが、頼りない感じの安倍氏や、お坊ちゃん官僚のイメージの谷垣氏もそれなりにしっかりしている印象を与えるようになった。 自民党総裁候補がメディアで取り上げられる中で鍛えられていく一方、無風で再選を果たした民主党の小沢代表は影が薄くなってきた。 自民党にとっては、小泉が古い家を壊した、これからは新しい家を建てる時代だ、という認識で一致してきている。 安倍氏の考え方や手腕には疑問が残るが、団塊より若い世代の安倍氏が政権を運営するとなれば、一回り上の小沢氏が古く見えることもあろう。 既に壊し屋小泉の政治によって、派閥や官僚主導の時代が終わり、イラクへの自衛隊派遣で禁断の(?)一歩を踏み出した今、93年に自民党を離脱し、新生党を作ったときに小沢が言った「個人と国家の自立」というテーマは乗り越えられつつあるという谷垣氏の見立てはある程度当たっているかもしれない。 小沢氏が政権党を離れた13年の間に、もしくは小泉政治の5年間に政治は大きく変わってきたといえるのかもしれない。 民主党が勢いを伸ばし、政権に迫れるのか、それとも自民党新政権が国民の心をつかむのか、これからである。 (了)