ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『天使の分け前』を観て

2016年06月05日 | 2010年代映画(外国)
『ケス』(1969年)の監督、ケン・ローチが今年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したという。
『麦の穂をゆらす風』(2006年)と合わせて二度の快挙である。
このケン・ローチの作品、意識して観るようにしているが、まだまだ見落としがかなりある。
ということで、『天使の分け前』(2012年)を観た。

場所は、スコットランドのグラスゴー。
暴力沙汰で起訴されたロビーは、300時間の社会奉仕活動を言い渡される。
恋人レオニーとの間にできる子供のために更生するよう、裁判所は穏便な判決で済ましてくれた。
ロビーは、無人駅で酔っぱらったアルバートや、ライノ、手癖の悪い女性モー等と、ペンキ塗りの作業をすることになった。
指導員ハリーは人がよく、なにかとロビーの面倒をみてくれる。
そして、ロビーの赤ちゃんの誕生を祝い、年代もののウイスキーをふるまってくれた。
ある日、ウイスキー好きのハリーは、課外活動と称して、ロビーたちを蒸留所に案内する。
ウイスキーについて興味を持ったロビーは、その後、「世界のベストウイスキー」を読んだりして・・・・

ロビーは、親の代から仲のよくない相手といつも争いが絶えず、売られた喧嘩で暴力沙汰を起こす。
だから、喧嘩早いロビーは最近も、少年刑務所から出たばかりである。
そんなロビー、環境も絡んでか、以前から仕事がない。
このような社会の底辺に近い若者たちをベースに、ケン・ローチは話を暗くせず、何気ないユーモアを持って描く。

更生しようともがくロビーに、社会がはばむ。
だが、ウイスキーを知ることにより、自らにテイスティングの才能があることに気付くロビー。
そして、それを契機に、彼は大きな仕事を思いつく。
一般的に言えば、こういう場合、大体まともな仕事の話に繋がっていくのに、ケン・ローチはそうさせない。
貧しい者たちが大金持ちにしっぺ返しをすることを、ケン・ローチは冷静に客観的なタッチで描く。
決して良い方法ではないが社会をうまく手玉にとったロビー。
彼の希望に満ちる未来が、ほのぼのとしたイメージとなり、そのすがすがしさに拍手を送りたくなる。
とっても楽しくなるような、満足する作品。

こうなると、次回もケン・ローチ。『ジミー、野を駆ける伝説』(2014年)を観ることにする。

コメント (2)
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