ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

清水宏・1~『按摩と女』

2020年07月11日 | 日本映画
『按摩と女』(清水宏監督、1938年)を観た。

按摩の徳市と福市は新緑の季節になると、この山あいの温泉地に南の温泉場からやって来る。
二人はそれぞれの贔屓の旅館を足場とし、徳市が“鯨屋”にあいさつすると早速仕事の声が掛かった。
それは今日ここに来るとき、歩いていた二人を追い抜いていった馬車の乗客の若い美しい女性からであった。
若い女性は、ここに来たわけとか、いつまでいるのかとの徳市の問いに、謎めいた返事しかしない。
徳市は目が見えなくても、東京から来たというこの女性に惹かれていくものがあった。

そんな中、この温泉地で宿泊客が被害にあう盗難事件が起きる。
徳市は、状況からしてどうも東京の若い女性の仕業では、とも思い・・・

清水宏の代表作ということで、成る程と思う。
筋はある程度あるが、一般的な物語としての筋道は問題としていなくって、
それよりも、目くらの徳市と福市が温泉宿にたどり着くまでに、歩きながら目あきを何人追い抜いたとかの拘りのユーモアの方が際立っている。
だから徳市は、学生グループに追い抜かれた腹いせに、思い切り強く按摩をし、そのためこのグループは翌日足が痛くってまともに歩けなるとか、
一方、福市の方は女学生グループから、抜かれまいと頑張ってそのせいで疲れたから、按摩代安くしなさいよと責められるのが面白い。

謎の女性に対しては、馬車で一緒だった若い男大村も、連れてきた甥の少年を介して話をするようになって、徐々に虜になっていく。
この少年は、女性が遊んでくれたりして好きになり、徳市も遊んでくれて好きになるが、大人が相手をしてくれなくなるとつまらなさそうにするところが可笑しい。

何気ないスケッチ風のようでいて、深い味わいがある作りに何ともいいようがない魅力を感じる。
清水宏の作品は、どれか観たはずという程度で記憶が定かでないため、チャンスをみて今後観ていこうかなと思っている。
コメント
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