ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『山河ノスタルジア』を観て

2017年02月11日 | 2010年代映画(外国)
観たかった『山河ノスタルジア』(ジャ・ジャンクー監督、2015年)をレンタルで借りた。

1999年。山西省・汾陽(フェンヤン)。
小学校の女教師タオは、炭鉱で働くリャンズーと実業家のジンシェンと幼なじみ。
二人から想いを寄せられていたタオは、三人での友情を大切にしていた。
内向的なリャンズーとは対照的に、自信家のジンシェンはタオの気を引こうとする。
やがてタオはジンシェンからのプロポーズを受け入れ、傷心のリャンズーは街を出ていく決心をする。

生まれた赤ん坊を抱きかかえるタオ。
ジンシェンは、息子をドルにちなんで、“ダオラー”と名付けた。
「チャン・ダラー。パパが米ドルを稼いでやるよ」。
タオはじっと、我が子を見つめていた・・・
(オフィシャルサイトより)

ファーストシーン。
ダンス仲間とタオが楽しそうに踊る、その時に流れる曲。
Pet Shop Boys - Go West [HD]

2014年。
長年の炭鉱労働で肺を壊したリャンズーが、妻子と共に故郷に帰って来る。
治療費もままならないリャンズーに、タオが援助の手を差しのべる。
そのタオはジンシェンと離婚して、今は父親との暮らし。
そして、父親との死別。
葬式に際してのダオラーとの再会。

2025年。オーストラリアのメルボルン。
19歳に成長したダオラーは、中国語が話せなくなっていて、英語が解せない父親のジンシェンと、意思の疎通ができない。
親子の断絶と、アイデンティティの喪失。
自分と同じように異国の地で暮らす中国語教師ミアと心を通わせるダオラー。
そして、いつしか彼は、かすかに残る母親の記憶をたどり始める。

ダオラーが、いつかどこかで聞いたように想う曲。
葉蒨文 (Sally Yeh) - 珍重 (1990)

時の流れの中の、人それぞれの人生の歩み。
タオの心の思い、生き方が、しんしんと胸に響いてくる。
その響き方の共鳴の増幅は、タオに限らず、リャンズーであったりダオラーであったりする。
もっと言えば、ジンシェンも、ミアも。

リャンズーはあれからどうなったのだろう。
ダオラーのこれからは。
そう思うと、この物語が心に、静かにひたひたと沁みとおってきて、いつまでも余韻が残ったままになる。
特にラスト。タオが雪の舞い降る原の中で、一人“Go West”の曲にのせて踊る顔の穏やかさ。

こんないい映画を観れたことに、感謝の気持ちでいっぱいである。

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