ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『天国にちがいない』を観て

2022年07月06日 | 2010年代映画(外国)
『天国にちがいない』(エリア・スレイマン監督、2019年)を観た。

スレイマン監督は新作映画の企画を売り込むため、故郷であるイスラエルのナザレからパリ、ニューヨークへと旅に出る。
パリではおしゃれな人々やルーブル美術館、ビクトール広場、ノートルダム聖堂などの美しい街並みに見ほれ、
ニューヨークでは映画学校やアラブ・フォーラムに登壇者として招かれる。
友人である俳優ガエル・ガルシア・ベルナルの紹介で映画会社のプロデューサーと知り合うが、新作映画の企画は断られてしまう。
行く先々で故郷とは全く違う世界を目の当たりにするスレイマン監督・・・
(映画.comより)

まず登場人物の主役は、スレイマン監督本人であるということ。
その本人である人物が、ナザレの自宅、パリ、ニューヨークの町並みの中で、景色を見、そこの人々を見、多少の関わりらしきものを持つ。
だが、それにまつわる一切の物語の説明は無し、と言うか、そもそも物語がない。
そこにあるのは、スレイマンが対象として見る風景や、人物の奇妙な動きに支えられた現実場面。
だから、次にスレイマンはどのように行動し、それがどのような行く末になるのかは未知である。
そのわからなさが映像として興味を倍加する。

観ていて自然と、ジャック・タチの『ぼくの伯父さん』(1958年)、『プレイタイム』(1967年)の記憶がよぎる。
なぜかコミカルであって、サイレント映画に近い視覚的ユーモアも似ていて、そこが非常に面白い。
もっとも、ストーリーを求める人が観れば訳が分からないとなり、最低ランクの作品評価となる可能性もある。
でも、映像主体で映画を観る者からすると、これ程面白く興味深い作品は珍しい、と言うのが感想だった。

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