ポケットの中で映画を温めて

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『ワイルド・アニマル』を観て

2017年03月21日 | 1990年代映画(外国)
キム・ギドク監督の第2作目『ワイルド・アニマル』(1997年)を観た。

パリ。
北朝鮮の男ホンサンは、フランス外人部隊に志願したいと考えて列車で到着する。
駅に着くなり、韓国から来ている画家の卵チョンヘに騙され、荷物や金をネコババされそうになる。
チョンヘは、腕力のあるホンサンに叩きのめされそうになったのに、彼に何かと親し気にまとわりつく。

チョンヘは、川べりに繋留してある舟に住んでいて、この舟を自分のアトリエにして好きな絵を描く夢を持っている。
しかし、家賃が払えず立ち退きを迫られ、画家仲間の絵を失敬しては小遣い稼ぎをしている。
ある日、欲を出したチョンヘは、ホンサンを誘ってフレンチマフィアのボスの下で働こうと決め・・・

内容は、金を稼ぎたいために裏社会に入り込んでいく青年の話である。
でも、やることなすことが思っているような調子にはならない。

そんな彼らだが、思いをもつ相手に恋をする。
チョンヘは、ボディ・ペイントで生計を立てている女性コリンヌと知り合う。
ホンサンは列車の席で一緒になった、“覗き部屋”に勤めるローラのことが忘れられない。
ただ、どちらの女性にも相手がいたりする。

ボスからの命令と裏切り、女性の相手の男たちへの憤り等が絡んで、チョンヘとホンサンの日常は、更なる下降線へと落ちていく。
それと並行して、時間と共に、徐々に奇妙な友情が芽生えていた二人の、その関係は強固になっていく。
ラスト近辺で、『鰐 ワニ』(1966年)でみせた水中で男女が手錠で繋がっているシーンが、
こちらでは、男と男が手錠で繋がれている海の中、と引き継がれ、男の友情の厚さへのメッセージとなる。

外国人がパリを舞台に映画を作る、それもこれがまだ2作目となれば、半分観光映画みたいな中途半端な内容の作品をよく目にする。
だがこの作品は、自然にパリに溶け込んでいる雰囲気で、違和感を持たせない。そこが監督の力量ということか。
とほめたたえても、実際、ギドク作品と知らずに観たなら、もっと冷淡な目で見たかもしれない。
そんなことも思う、個人的には楽しい興味深い作品だった。

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