ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『リフ・ラフ』を再度観て

2021年01月27日 | 1990年代映画(外国)
レンタルビデオ店がビデオテープの頃、ケン・ローチ作品が観たくて探したりしていた。
その中のひとつの『リフ・ラフ』(ケン・ローチ監督、1991年)を今回、また観てみた。

刑務所から出所したばかりのグラスゴー出身の青年スティーヴはロンドンに出て、古い病院を豪華アパートに改築する工事現場の職を見つけた。
そこは全国から職を求めてやって来た労働者たちの掃き溜めだった。
スティーヴは、親分風を吹かす現場監督のミックの下でそつなく仕事をこなすシェム、ラリー、モーの三人と打ち解けて仲間となる。
仕事の賃金は安く、労働条件は劣悪だった。

ある日、スティーヴは工事現場にバッグが落ちているのを見つけ、持ち主のスーザンに届ける。
最初はスティーヴを警戒した彼女も次第に打ち解けていく。
場末のパブで歌う彼女は、歌手になるのが夢だった。
スティーヴはラリーたちを誘って彼女の応援に行くが、客席からの野次で歌えなくなった彼女は泣きながら楽屋に駆け込む。
ラリーの機転でライブは盛況のうちに幕を閉じ、その晩スティーヴとスーザンは一夜を共にする・・・
(Movie Walkerより一部掲載)

スティーブは、底辺の労働者が働くビル改築現場の仕事にありつく。
仕事仲間は気のいい連中で、スティーブもすぐに馴染む。
仕事の条件はよくないが、みんな明るい。
そんな中、スティーブが落ちていたバックを見つけ、落とし主の家を訪ねる。
こうしてスティーヴはラリーは知り合う。

ラリーは歌手の夢を持って場末のパブやストリートライブを行うが、観ていて正直言ってヘタ。
そんなラリーは、貧しさもあってか精神的に不安定なところもあり傷つきやすい。
スティーヴとねんごろな仲になっても、二人の間はしっくりとしないと言うかなぜか隙間が漂う。
それでもラリーは、スティーヴと離れたりすることに怯える。

二人の不安定さは、なぜだろうと思う。
ケン・ローチは正面切って、社会ひいては時の政府を糾弾しないが、明らかに彼らの生活の基の根源には国の政策の有り様が絡んでいるのを見据えている。
ただ、そのことを何も画面に出さず、彼らの生活の土台としての仕事の風景を小さな物語として紡いでいく。
それらのことは観ていて自然と、強く共感せざるにはいられない。
なんで、スティーヴとスーザンはその後別れてしまわなければいけなかったのか。
勿論、スーザンの方に負の要素があるにしても二人しての笑顔が見たかったと、しみじみ思う。

「リフ・ラフ」とは最下層の人々を指す蔑称とのこと。
こんな社会は、少し前のイギリスの話とのんびりと構えていることは出来ず、今の日本でも同じ状態ではないかと憂慮する。

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