小暑(7月7日)は、二十四節気の第11番目の節気である。暑い気候を迎えながらも、いまだ暑熱の最盛期に達していないので、小暑と称する。三伏天は夏至から三番目の庚(かのえ)の日から始まる、7月中下旬から8月上旬(小暑から立秋に相当)の一年で最も気温が高い時期を称する。多くの人が全身倦怠感、気力減退、仕事の能率低下や、体重減少を起こしがちな時節である。防暑に努めるとともに、仕事時には活動と休養のバランスを取り、どちらかと申せば活動はやや控えめに安静をやや多くして、体内の陽気を保護し体力を温存してゆく必要がある。
夏の季節の暑邪あるいは暑湿の邪を感受しておこる急性熱性疾患を「暑温」という。明代の張景岳著『景岳全書』、暑証の段では陽暑と陰暑を区別して記載しているが、陽暑は暑熱の邪(陽邪)を感受して発生する急性熱病で、いわゆる熱中症である。一方、酷暑の時期は、往々にして冷たく涼しいものを追い求める生活に偏って、冷房をきかせた部屋に長居したり、冷たい生ものを多食・多飲する機会が多くなる。体内の新陳代謝が旺盛で体力の消耗が大きく、さらに過労や睡眠不足で体の抵抗力が減弱すると、風・寒・湿邪(寒湿は陰邪)が体表面を守る肺の衛気の虚に乗じて容易に侵入する。これが陰暑の発症機転である。暑証の論証における「陰暑証、或在于表、或在于裏、惟富貴安逸之人多有之, 總由恣情任性、不慎風寒所致也。」との記載をみると、恵まれた生活環境、食生活に慣れた現代人は、さらに安易に過度の凉を貪り寒湿の邪の暴露を受けがちであり、陽暑のみならず陰暑に対しても注意が必要である。
なにごとも かはりはてぬる 世の中に 契りたがはぬ 星合の空 建礼門院右京大夫