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隱池打睡庵四首・其一 晩眺 独庵玄光
雲帰山矣鳥帰棲 雲は山に帰る 鳥は棲(す)に帰る
風景悉皆堪品題 風景 悉く皆な品題に堪へたり
名利酔人濃於酒 名利の人を酔はしむること 酒よりも濃(こまや)かにして
百年不覚夕陽低 百年 覚えず 夕陽(せきよう)の低(た)るることを
「江戸漢詩選 上」, p110-111
参考資料:
揖斐高編訳:「江戸漢詩選 上」, 岩波書店, 2021
岡村繁著:新釈漢文大系「白氏文集 一」, 明治書院, 2017
*諷論二/秦中吟十首・其五/不致仕:「朝露貪名利 夕陽憂子孫」(朝露に名利を貪り、夕陽に子孫を憂ふを)を踏まえる。詩は続く、
-----年高ければ須らく老を請ふべし、名遂ぐれば合(まさ)に身を退くべし。少き時は共に嗤誚(しせう:嘲笑い罵倒する)すれども、晩歳多くは因循(いんじゅん:いい加減な事勿れに振舞う)す。賢なるかな漢の二疏、彼獨り是れ何人ぞ。寂寞たり、東門の路、人の去塵を繼ぐ無し。(「白氏文集 一」, p377-381)
<不致仕>は意気高く果敢な指弾の諷論である。対して<晩眺>は「帰る」の起句に極まる。夕陽が低るれば、帰るべき根源へ祇だ帰るのみである。