晩春泛湖 安積艮斎
湖光明麗照吟身 湖光の明麗 吟身を照らす
短艇聊爲畫裏人 短艇 聊か画裏の人と為る
歸雁數行低有影 帰雁数行 低くして影有り
浮巒一碧遠無皴 浮巒一碧 遠くして皺むこと無し
縈衣落絮因風亂 衣には縈(まと)ふ 落絮の風に因つて乱るるを
觸棹圓荷經雨匀 棹に触る円荷の雨に経て匀(ととの)ふを
濃緑滿城紅已盡 濃緑の満城 紅(くれなゐ)已に盡き
秖應是處餞殘春 秖だ応に是の処 殘春に餞すべし
菊田紀郎, 安藤智重訳注:「安積艮斎 艮斎詩略 訳注」, p121-122, 興学社, 2010