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遍地香雲│齊藤拙堂著:「月瀬記勝」坤, 看雲亭蔵板, 1882
五言 初春侍宴 一首 従二位大納言大伴宿禰旅人
寛政情既遠 迪古道惟新
穆々四門客 済々三徳人
梅雪乱残岸 煙霞接早春
共遊聖主沢 同賀撃壌仁
初春宴に侍す
政を寛(ゆるや)かにして情すでに遠く 古に迪(よ)って道これ新なり
穆々(ぼくぼく)たり四門の客 済々(せいせい)たり三徳の人
梅雪 残岸に乱れ 煙霞 早春に接す
ともに遊ぶ 聖主の沢 同じく賀す 撃壌(げきじょう)の仁
(江口孝夫 全訳注:「懐風藻」、p166-168, 講談社, 2000)
寛大なる政(まつりごと)は、古(いにしえ)のまま道に従いてしかも日々新たである。四門よりかしこみて参内の仕え奉る群臣達は、三徳を備えた者たちが数多である。雪に見紛う梅は岸辺に乱れ散り、霞はけぶり初春の空に満ちている。謹みて聖主の御恩沢を拝し、太平の御代の御仁徳を賀し奉り、益々の弥栄(いやさか)を祈念いたし、いざ御一同、この宴をとことん楽しもうやないですか!
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