芭蕉はなぜ傍らに眠らんと望むまで義仲に心をお寄せになったのか。諸兄諸姉の御見解は渉猟した限り様々である。伊勢物語や平家物語を初めて学んだ時、義仲あるいは高安の女が辿る運命には似通った不条理を感じた。衒いのない生一本な魂の真意は顧みられることなく、彼等は弊履の如く打棄てられる。「日来はなにともおぼえぬ鎧が今日は重うなつたるぞや」は、粟津の松原で非業の最期を遂げる義仲が乳兄弟の兼平に吐露した言葉である。そして百代の後、尋常の我等各自にも縁あって身に纏うたら、もはや分かつことが叶わない肉付きの鎧がある。
芭蕉はなぜ傍らに眠らんと望むまで義仲に心をお寄せになったのか。諸兄諸姉の御見解は渉猟した限り様々である。伊勢物語や平家物語を初めて学んだ時、義仲あるいは高安の女が辿る運命には似通った不条理を感じた。衒いのない生一本な魂の真意は顧みられることなく、彼等は弊履の如く打棄てられる。「日来はなにともおぼえぬ鎧が今日は重うなつたるぞや」は、粟津の松原で非業の最期を遂げる義仲が乳兄弟の兼平に吐露した言葉である。そして百代の後、尋常の我等各自にも縁あって身に纏うたら、もはや分かつことが叶わない肉付きの鎧がある。