山茱萸(さんしゅゆ)は、若葉の芽吹きに先立ち、黄色の小花からなる集合花を枝一杯に咲かせるミズキ科の落葉小高木である。別名、春黄金花(はるこがねばな)、秋に楕円形の赤い実を鈴なりにつけることから秋珊瑚(あきさんご)とも言う。この実から種を除いた成熟果肉が、収渋薬(収斂薬、固渋薬とも言う)に分類される、同名の生薬「山茱萸」である。収斂、固渋とは、体内や体表から汗、血、便などの液体成分が漏れ出るのを止める作用を称する。薬性は酸、渋、微温で、帰経は肝・腎経に属する。肝血と腎精を滋養する補益肝腎の要薬であり、さらに斂汗(止汗)、止瀉(止痢)、固精、縮尿、止帯(帯下を止める)、止血などの作用を有し、発汗過多、盗汗、遺精、尿失禁、月経過多、五更瀉の下痢に用いられる。山茱萸が配伍されている方剤には、六味地黄丸、枸菊地黄丸、八味地黄丸、牛車腎気丸などがある。
山茱萸にけぶるや雨も黄となんぬ 水原秋櫻子
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山茱萸にけぶるや雨も黄となんぬ 水原秋櫻子
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