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さる医学関連の御講演で、何も悩むことはない、全ては※※に書かれているとおっしゃった言葉を拝聴して違和感を覚えたことがある。改めて業界を見渡せば、表現型は各自様々であるものの、医者は多かれ少なかれ、他人の言うことなすことをそのままには信じない。必ず自分の眼で見て手を出して検証して確かめようとする。この懐疑精神、実証主義こそがその身に染み付いた行動志向である。だから無心で従順な生徒にも謙虚で敬虔な信者にもなれない。優れたモニュメントであればある程、尾籠な喩えで恐縮ではあるが、あたかも犬が電信柱に向かって足を挙げるが如く、其処に我が匂いを付けんとする習性がある。おのれが何を拝受してどの様に血肉とさせて頂いたかという“しるし”を其処に捧げることが、卑小なおのれの前にひたすら気高く聳え立つ柱に対するリスペクトである。