見えない川の流れが
ひかりの道になって伸びてゆく
やがて暗がりの海を
無数の生き物のように
静かにひらいてゆく
煩悩の揺らぎをくりかえし
見送るひともいつしか舟のひととなる
山は浅くつらなり
外海の潮は荒々しく松林を越える
北国へ向かう街道の
細長い土地で生きたひとびと
陸(おか)は万作だ 浜は大漁だ 狐の堤燈 ボウ
新盆の軒下にさがる細長いちょうちん
家々から放たれる鉦の静寂
精霊の灯はつぎつぎと
川を満たし海を満たし夜を満たす
残された人も中陰の岸にたち
賑わいながら遠ざかる
夏の背中を見送っている
* * *
北茨木にて。 「陸は万作だ……」は野口雨情の詩から引用。
(2004)