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風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

どんぐり

2010年04月27日 | 詩集「家族の風景」
Tombo


ひとつふたつと
どんぐりの実をかぞえながら
息子は
年の数をおぼえた


ぼく みっつ
小さな指で
小さな生き物のような実をつまんで
みっつの命をならべていたが


あっというまに
二十をこえ
三十をかぞえる
やっと自慢できることは
自分の包丁を持っていることだと言う
深夜の調理場で砥石に向かう
たぶん手は傷だらけだろう


ひとさし指と親指で
どんぐりに似た実をつまんでは
そっと包丁を当てる
息子だけの
そんな街があるらしい


ときには
ひとつふたつ
みっつと
ポケットいっぱいの秋を
数えきれない


(2007)


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