「蓮」同人の作品です
われは愚者ゆえ賢者なり目覚めたる禁忌の蓮の香炉に火入れ
石川幸雄
つりふねのくちゆくはまにしおりのみのこしてもえたししゅうをだいて
(釣り舟の朽ちゆく浜に栞のみ残して燃えた詩集を抱いて)
糸田ともよ
海女小屋に夜長の暗き灯をともし 大政建夫
海ありぬ きみとわれの隙間にも波だちながら燦めきながら
岡 貴子
永遠の対義語はいまと風がいふしばらく風の脚をみてゐる
佐藤 薫、
細き首垂れて書(ふみ)読む青年の暮れ残りおり春の教室
佐藤よしみ
ひた眠り水底の石拾ひけり 橋淑子
来世にはヴァイオリニストになりましょうきっと平和な世界と思う
萩谷孚彦
雪山が春の花へと移りゆくひっそり閑と特急しなの
布々岐敬子
本当の私は無なりといふことを出発点に春の野をゆく
前川 博
たはやすく傷む桃の実うぶ毛立て神経過敏 ひとであるなら
村田奈菜子
オンリーさんは二階に暮らす女の名と覚えし頃のカンナのほむら
山中もとひ
君が胸の蓮の刺青にわが胸を重ねるたびにわれにも咲きぬ
森 水晶
(「蓮」創刊号~4号より 森 水晶 選)