ピーナッツの唄

毎日の出来事や、スポーツ観戦、読書や映画等の感想を中心に、好奇心旺盛に書いています。

「利休にたずねよ」から

2009-05-12 16:05:57 | 読書
直木賞受賞作品、山本兼一著「利休にたずねよ」を読了した。ひとことで言へば、戦国の世の武将たちが相争う時代から、秀吉の栄華に満ちた時代を、一気に駆け抜け抜け散った「千利休」の足跡を鮮烈に描いていて実に面白い。

秀吉に「死を賜った」利休の切腹の日から、物語は順次利休の過去の出来事を書いている。この手法もなかなか面白いと思った。茶道頭として秀吉や多くの武将、茶道の弟子、あるいは禅僧はじめ多くの知識人に支持された利休が、何故切腹するに至るのか?。この小説は過去に利休が出会った数多くの人々との出来事から、利休の人となり、茶道に対する考え方に迫っているようだ。

小生なども知っている秀吉と利休の確執の問題には幾つかの伏線がある。大徳寺の利休が寄進した山門金毛閣の利休の木像掲揚事件が最大のもと言はれる。さらには娘を側室に差し出すのを断った事件である。しかし本書では高麗渡りの「緑釉」の香合を、頑なに秀吉に譲ろうとしない利休に腹を立てたとされる。

その高麗渡りの「緑釉」の香合には、若くして利休が茶の道に邁進することになった動機が込められている。著者は「あの日、女に茶を飲ませた。あれからだ、利休の茶の道が、寂とした異界に通じてしまったのは」と書いている。利休が19歳の時の高麗の王家の血を引く若い娘との出会い。その娘の形見として身から離したことのない香合だったのだ。

信長や家康、石田三成、上杉景勝、細川忠興などの武将との交流を描きながら、彼らの時代に如何に高価な茶道具が重宝され保持することが、如何に名誉とされたかなど、興味深いものがある。

本の帯には「わしが額ずくのは美しいものだけだ」とある。強烈な美学を持ち天下人秀吉に対時して散った「千利休」という人物を、改めてこの本で知ったことになる。一読をお奨めしたい。

      同書のHPから


コメント (4)
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