マーク・ラッペ氏が書いた『皮膚 美と健康の最前線』(川口啓明・菊地昌子:訳、大月書店:1999年刊)という本をご紹介しています。今回は第3回目です。
◆皮膚表面の生き物
皮膚の表面には多くの細菌や、カビ、節足動物、寄生動物が住み着いていて、その数は1平方センチメートルあたり300万個にも達するそうです。
こういう話を聞くと、ちょっと気持ち悪く感じますが、これらの生き物は皮膚の一部といってもよく、有害な細菌類から我々を守ってくれています。
赤ちゃんは、お母さんのお腹にいるときは無菌状態ですが、生まれたその日に全身を細菌の薄膜で覆われるそうです。そして、お母さんから譲り受けた細菌は一般的に有益もしくは中立で、赤ちゃんを感染症の危険から守ってくれます。
例えば、病原性のブドウ球菌の保菌者だった看護師が赤ちゃんたちの世話をして、生後すぐに哺乳瓶で育てられた何人かの赤ちゃんがブドウ球菌の感染症にかかったことがあったそうですが、お母さんが授乳と愛撫でしっかり接触していた赤ちゃんは全員感染症にかからなかったそうです。
細菌が住み着くのは皮膚だけではありません。お母さんの乳首にはビフィズス菌がいて、このビフィズス菌は授乳によって赤ちゃんの腸に移り住み、腸内の環境を良好に保ちます。
逆に、虫歯菌や歯周病菌もお母さんから子どもに感染します。妊娠したら、まずお母さんがしっかり歯を磨く習慣を身につけて、虫歯菌や歯周病菌を減らすようにすることが大事です。
思春期になるとニキビが出ますが、これはホルモンによって皮脂腺の活動が活発になり、細菌叢(さいきんそう、「叢」はくさむらという意味)のバランスが崩れることが原因だそうです。
このとき、ニキビの原因菌を殺すために抗生物質や殺菌剤を使うと、体を守ってくれている有益な菌まで殺すことになるので注意が必要です。
よく殺菌剤入りの石けんや洗剤のコマーシャルがテレビで流れているので、そういうものを使った方が健康によいと思っている方も多いと思いますが、不必要な殺菌は健康にとって逆効果です。
現代では、味方となる細菌叢を持っているアメリカ人は約2割しかいないそうで、多くの人は感染症を防ぐのに必要不可欠な細菌叢の守りを壊滅させてしまっているそうです。きれいになりすぎるのも考えものですね。
次回は、皮膚の機能についてのお話です。
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【追記】
最近は、「お湯シャンプー」という言葉が少しずつ広まっているようです。これは、洗髪時にシャンプーや石鹸を使わず、お湯だけで髪を洗う方法です。実は私も、4年近くこれを実践しています。
ちなみに、私は、「秘密の化粧品」というキーワードで検索して最初に出てくるサイトでこの方法を知ったのですが、頭皮の微生物を大切にしているせいか、髪の調子はいいようです。