これまで、山豆根という生薬の素晴らしい抗がん作用をご紹介してきましたが、実は『長生き随談』には、山豆根がベーチェット病にも卓効を奏すると書かれています。
ベーチェット病は現在も難病に指定されていますが、こういったがん以外の難病も生薬で治ることがあるので、これからしばらくは、様々な生薬の意外な効果をご紹介したいと思います。
今回は、『新漢方療法』(大下叩石:著、青年書房:1940年刊)という本に載っている、半身不隨を自分で治した村山登さんの体験談です。
村山さんは、子どもの頃から健康で、体もどちらかといえば痩せて細い方だったのですが、大正15年の春になって以前と見違えるようにとても太ってしまったので、病院で診察を受けたそうです。
すると、「血圧が200以上もあるから、一つ間違うと脳溢血を起こすか中風になります」とのことで、村山さんは大変に驚き、治療を受けたのですが、血圧は少しも下がりませんでした。
そして、6月4日の昼食時に、食事半ばで突然左の手ががくりと下がったままどうしても上へ上がらなくなり、しかたなく右の手で食事を済ませ、さて立とうと思ったら、足もやはり左が駄目だったそうです。
そこで、家人に助けられてやっと床に就き、早速医師を迎えて診察してもらったところ、疑いもない中風だということで、とうとう半身不随になってしまったという訳です。
その後2か月あまり治療を受けたものの、少しも快方に向かう感じがなく、仕事もできなくてほとほと困っていたとき、ふと桑のことを思い出したそうです。
それは、栄西禅師の『喫茶養生記』に、「人生四十歳以上になれば必ず桑を用いよ」ということが書かれていたことと、「桑の食器を用いれば中風にならぬ」という昔からの言い伝えでした。
さらに、村山さんの両親もよく桑茶を常用していて、そのためか父親は86歳、母親は91歳という非常な長命で、しかも常にとても健康だったそうです。
村山さんは、早速「桑枝煎」を取り寄せて飲み始めたところ、気分も以前と打って変わって爽快になり、体は始終ホコホコと温まって、夜中にトイレに起きることも大変に少なくなったそうです。
そして、桑茶を連用しているうちに血圧はどんどん下がり、手足の自由も利くようになって、8月末には再び仕事ができるようになるとともに、不思議なことに、発病前まで用いていた眼鏡が不要になってしまったのだそうです。
また、桑茶は単に中風の妙薬というだけではなく、生来虚弱な人や、婦人病、ヒステリー、神経痛、胃腸病、動脈硬化等にも不思議なほど効能があり、特に胃潰瘍に卓効があるそうです。
そのため、村山さんが実際に桑茶を勧めた人に、もう医者に見放された程の重症者も随分いたのですが、それがいずれも健康体になってセッセと働くようになり、高齢者でも壮年の人を凌ぐような血色の持ち主となったそうです。
なお、「桑枝煎」は商品名のようですが、現在は売られていないようです。ただし、もし自宅に桑の木が生えている場合は、以下のような手順で桑茶を作ることができるそうです。
1.使用するのは桑の幹や枝(太さは指ぐらい)で、採取時期はいつでもかまわない。
2.これを皮の付いたまま洗い、細かく刻み、焙烙で薄黒くなる程度に炒る。
3.この炒った桑0.5合と水3合を土瓶に入れて火にかけ、2合になるまで煎じる。
こうしてできた桑茶を、通常のお茶代わりに飲めばよいそうです。
また、商品を購入する場合は、「桑枝茶」で検索してみると、栃本天海堂の「桑の枝」という商品がヤフーショッピングで購入可能でした。
注意点としては、桑の葉を使ったお茶が検索に引っ掛かるのですが、こちらは効果が期待できないと思われるので、間違って購入しないようにしてください。
最後に、ご家族に半身不随の方がおられる場合、『全快 始めて出来た中風全快体験記録』(五箇野政一:著、天寿会:1963年刊)という本が、介護をする際にとても参考になると思いますので、よかったら国立国会図書館デジタルコレクションというサイトにログインしてご覧ください。