前回は、59年前に出版された昔の本をご紹介したので、今回は今年9月に出版されたばかりの新しい本をご紹介しましょう。それは、『がんに効く食事 がんを悪くする食事』(福田一典:著、彩図社:2013年刊)という本です。
この本には、最新の科学的な研究データを基に、食事によってある程度がんを予防したり治療することが可能であると書かれています。ただし、がんに効く食事といっても、献立が書かれていないので、このブログでは「がんに効く食材」と表記させていただきました。
それでは、早速がんに効く食材をご紹介しましょう。これらは、免疫力や抗酸化力を高める成分、がん細胞の増殖を抑える成分、良質なタンパク質などを多く含む食材です。
【がんに効く食材】
◆野菜、果物、豆類、全粒穀物、お茶、キノコ類、海藻、魚介類、卵、低脂肪乳
なお、野菜の中では特にブロッコリーの新芽(スプラウト)を、果物の中では特にアボカドを、豆類の中では特に大豆を、キノコ類の中では特にマイタケを、それぞれ推奨しています。
魚介類が有効である理由は、魚油に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)に、がん細胞の増殖を抑える効果があるからだそうです。(ω-3系不飽和脂肪酸)
亜麻仁油や紫蘇油にも同様の効果があるため、これらをドレッシングとして野菜にかけて食べるのもよいそうです。油の種類は違いますが、オリーブオイルにも抗がん作用があり、乳がんや大腸がんなどの発生率は、オリーブオイルの摂取量が多いほど減少するそうです。
また、野菜は生で大量に食べるよりも、野菜スープにする方が効果的であることや、がん予防には、日本料理よりも地中海料理の方が、野菜、果物、豆類、魚介類が豊富でオリーブオイルをふんだんに使うため、効果が高いと書かれています。
さらに、ケトン食が進行がんに効果的であると書かれています。
ケトン食(Ketogenic Diet)とは、小児の難治性のてんかんに対する治療法として開発されたもので、高脂肪低糖質の食事にすると、脂肪はケトン体に変換され、これがブドウ糖の代わりのエネルギー源として体内で利用されることから、高脂肪低糖質の食事をケトン食とよぶのだそうです。
これは、前々回の「糖質制限によるがん治療」でご紹介した糖質制限と本質的に同じもので、がん細胞がブドウ糖だけを栄養源としていることから、ケトン食によってがんを兵糧攻めにすることができるというものです。ただし、前々回と異なり、この本の著者の福田一典氏は肉食には反対しています。
一方、がんを悪くする食材として、以下のものを列挙しています。
【がんを悪くする食材】
◆加工肉、赤身の肉、動物性脂肪、砂糖、精製した穀物、乳製品や牛乳(前立腺がんに対して)
また、前立腺がんとは無関係に、ブドウ糖と乳製品の組み合わせがよくないそうで、がんを悪くする食事の典型として以下のものを列挙しています。
◆コーンフレークとミルク、パンとミルク、ドリア、ピザ、チーズバーガー
この本では、こういった主張の根拠として、加工肉や直火で加熱調理した赤身の肉には、発がん物質が多く含まれていることを指摘しています。
また、肉に含まれる飽和脂肪酸を多く摂取すると、がん細胞の増殖や転移を促進するプロスタグランジンE2の産生が増えるのだそうです。
なお、食用油に多く含まれるω-6系不飽和脂肪酸も同様な作用があるそうなので、がんが気になる人は、フライや天ぷらにも注意が必要なようです。
さらに、「インスリン様成長因子1」(IGF-1)も重要だそうです。IGF-1は、細胞を増殖させる働きがありますが、がん細胞の増殖も促進することが明らかになっていて、牛乳やチーズなどの乳製品、および、血糖値を上昇させる食材が、このIGF-1の血中濃度を増加させるのだそうです。
なお、食材による血糖値の上がり方は、「グリセミック負荷」という指標で表わされ、この値が大きいものほど「がんを悪くする食材」となるそうです。ちなみに、この本によると、せんべい(76)、餅(68)、砂糖(68)、蜂蜜(48)、ビスケット(44)、ポップコーン(40)などが、グリセミック負荷の大きな食材・食品でした。
最後に、当然のことではありますが、いくら果物ががんに効くといっても、大量摂取は逆効果になるそうです。(特に乳がん) 肉が悪いといっても極端な低タンパクはやはり逆効果になりますから、魚や大豆からタンパク質を十分摂取する必要があるそうです。
このブログを最初からご覧の方にはよくお分かりだと思いますが、食事だけでがんを治すのは困難です。しかし、がん対策の基本が食事であることは間違いないので、こういった情報を日々の献立作りに活用していただけたらと思います。
なお、この本によると、ニキビが青年期以降も続く人はがんに注意が必要だそうです。もし、心当たりのある方がおられましたら、この本をお読みになってはいかがでしょうか。