がんに克つ

父のがんを治すためにがんを研究しました。がんは意外と簡単に治ることを知ってもらえたら、亡き父も喜んでくれると思います。

シリコン

2015-02-22 07:58:01 | 健康・病気

マーク・ラッペ氏が書いた『皮膚 美と健康の最前線』(川口啓明・菊地昌子:訳、大月書店:1999年刊)という本をご紹介しています。今回は第11回目です。

◆シリコン

美容整形というのは、整形外科ではなく、形成外科という体の欠陥を修復する医学の分野に属します。

ただし、形成外科はもともとは口唇裂や口蓋裂などの顔面の大きな先天異常を修復するためのもので、第一次世界大戦においては、負傷した兵士の傷やヤケドの修復が重要な仕事となりました。1930年代になってから、鼻の美容整形が行なわれるようになり、1950年代には顔のシワを取る手術が広く行なわれるようになったそうです。

日本でも、第二次世界大戦後に、乳房・臀部・大腿部を大きくする美容整形が行なわれるようになったそうですが、体に注入された物質によって免疫反応が引き起こされ、強皮症のような皮膚が硬くなる病変が生じたり、免疫細胞が自分自身を攻撃する不治の自己免疫疾患となる人が少なくなかったそうです。

このような状況において登場したのがシリコンです。

シリコンは、飛行機のエンジンの高温でも用いることができる、化学反応を起こさない耐熱性の潤滑剤として第二次世界大戦中に開発されました。

シリコンを注入すれば、大きさや形を自由に調整でき、しかも生理的に無反応なので安全であると宣伝されたので、多くの人が豊胸や顔面のシワ取りなど美容上の理由からシリコンを使用しました。

しかし、実際にはシリコンは体内で代謝され、炎症を起こすことが動物実験で明らかになっていたそうです。袋に密封して用いても、袋が破れないという保証はありませんでした。実際、埋入したシリコンが漏れ出して、慢性的な炎症を起こしたり、自己免疫疾患にかかった人が多数いたそうです。

1973年にはシリコンの注入によって数人の死者も出ましたが、シリコンの危険性について十分な情報が提供されるようになったのは1992年以降だそうで、強い需要に支えられて多くの人にシリコンが直接注入されたり、袋に密封されて埋入されました。

製造元のダウ・コーニング社は、動物実験で観察された副作用を隠して、シリコンは無害であると主張し続けていましたが、44万人以上の被害者を出し、1万9000件もの訴訟を抱えて1995年に倒産しました。

マーク・ラッペ氏の考えでは、巨大な化粧品の市場が生み出され美容整形という新しい分野が誕生したのは、この50年ほどの間に、若さや美しさを保つことが社会的な強迫観念となったためだそうです。

確かに、体内に得体の知れないものを埋め込んでまで美しくなろうと思うのは、普通の精神状態ではないのかも知れません。まずは、あるがままの自分を受け入れることが大切なようです。

次回は、若々しい肌の美容法についてのお話です。

にほんブログ村 病気ブログ がんへ
にほんブログ村


皮膚にあらわれる病気の徴候

2015-02-15 06:14:58 | 健康・病気

マーク・ラッペ氏が書いた『皮膚 美と健康の最前線』(川口啓明・菊地昌子:訳、大月書店:1999年刊)という本をご紹介しています。今回は第10回目です。

◆皮膚にあらわれる病気の徴候

かつては、皮膚病は皮膚だけで治療できると医師たちは信じていたそうで、体内の病気の兆候が皮膚にあらわれるという現代的な考え方が定着したのは1950年代なかばだそうです。

もちろん、皮膚だけで治療できる皮膚病もありますが、初期症状が短期間だけ皮膚病変としてあらわれる病気もあるのでので、皮膚病変によって体の病気を知ることはとても重要です。以下に、皮膚病変があらわれるおもな病気を列挙します。

【スピロヘータ感染症】ライム病はマダニにかまれて感染しますが、かまれた場所にドーナツ状の発疹ができます。梅毒は、感染場所の皮膚粘膜に硬いしこりができます。

【細菌感染症】髄膜炎では、その原因菌が全身に広がった後にだけ、特徴的な発疹が生じます。

【甲状腺疾患】甲状腺の病気で甲状腺の機能が低下すると、肌は蒼白でうるおいがなくなり、毛は細くなり、場合によっては脱毛が起こります。逆に、甲状腺の機能が亢進すると、肌の紅潮、動悸、手指のふるえなどがあらわれます。

【副腎腫瘍と卵巣腫瘍】若い女性で肌のキメがあらくなったり、多毛になったら、副腎腫瘍の徴候です。月経不順の中年女性にニキビと多毛が見られたら、卵巣腫瘍の徴候です。

【悪性リンパ腫とガン】肌にこい紫色の馬蹄形の斑点があらわれたら、悪性リンパ腫によって脾臓やリンパ節が肥大しています。また、進行性のガンによって、肌がひどく黒くなることがあります。

【関節炎】リウマチ熱は連鎖球菌によってひきおこされ、「輪状紅斑」とよばれる典型的な発疹が生じます。

【エリテマトーデス】これは関節炎様の自己免疫疾患で、鼻をまたいだ、厚い赤い発疹が生じます。

これらの皮膚にあらわれる徴候や病変は、体内のどこかにある病気をうつしだしているのではなく、むしろ皮膚が病気そのものによって激しく攻撃されていることをしめしているそうです。

皮膚が健康であることが、体の健康にとって極めて重要であるのは言うまでもありません。日頃から皮膚の状態に注意を払うことで、体内深くで知らないままに進行していた病気を初期の段階で発見することも可能になります。

次回は、シリコンについてのお話です。

にほんブログ村 病気ブログ がんへ
にほんブログ村


免疫系と過敏症

2015-02-08 20:39:11 | 健康・病気

マーク・ラッペ氏が書いた『皮膚 美と健康の最前線』(川口啓明・菊地昌子:訳、大月書店:1999年刊)という本をご紹介しています。今回は第9回目です。

◆免疫系と過敏症

腕時計やイヤリングなどを身につけると、激しいかゆみとともに炎症をおこし発疹が出る人がいますが、これは金属に含まれる不純物のニッケルが原因である場合が多いそうです。

このニッケルのようなアレルギー性の接触皮膚炎をひきおこす物質は「感作物質」とよばれ、他にもクロム、天然ゴム、ホルムアルデヒド、ウルシなどが知られています。

一度このような感作が成立すると、この情報が免疫系に記憶され、次に同じ物質に触れた時に「過敏症」とよばれる激しい反応がひきおこされてしまいます。

天然ゴムは、天然だから体にも環境にもよさそうな気がしますが、ちょっと触っただけで、激しいショック状態に陥る「アナフィラキシーショック」をおこして死亡する人もいるので、注意が必要です。

ホルムアルデヒドは、防腐剤としてベニヤ板や化粧品、石けんに用いられています。また、織物にシワができないようにするために用いられることもあり、意外と身近にあることが多いものです。

接触性のアレルギーをひきおこす化学物質の多くは、それら自身に抗原性はなく、皮膚にもともと存在しているタンパク質と結合して抗原性を示すそうです。したがって、通常は原因となる物質が皮膚に接触している部分だけに炎症が生じます。

こういった皮膚の過敏症には、コルチゾンなどのステロイド剤が用いられますが、強力なステロイド剤には強い副作用があり、安易に用いるべきではありません。特に子どもの場合は、内分泌系や免疫系に障害が出て、ひどいときは発育阻害がおきる場合もあるので注意が必要だそうです。

また、太陽光が医薬品などの化学物質に作用して、それを感作物質に変える場合もあるそうで、これを光毒性反応といいます。

抗生物質のテトラサイクリンや抗炎症剤など、皮膚の組織に濃縮されやすいさまざまな医薬品によって光毒性反応が生じるそうで、そういった医薬品を摂取している人が太陽光を浴びると、皮膚表面の細胞が変性し、さらに、その下にある真皮組織も損傷を受け、はれものや炎症が生じるそうです。

次回は、皮膚にあらわれる病気の徴候についてのお話です。

にほんブログ村 病気ブログ がんへ
にほんブログ村


皮膚の防御

2015-02-01 07:34:47 | 健康・病気

マーク・ラッペ氏が書いた『皮膚 美と健康の最前線』(川口啓明・菊地昌子:訳、大月書店:1999年刊)という本をご紹介しています。今回は第8回目です。

◆皮膚の防御

皮膚の表面は弱酸性になっていて、これがあまり活動的でない細菌の侵入を効果的に防ぐ第一の防御線になっています。

それでも皮膚の内部に侵入してきた細菌やカビは、免疫細胞の働きによって排除されます。これが第二の防御線です。

皮膚の一群の免疫細胞の頂点にあるのがランゲルハンス細胞で、これが免疫反応を調整しているそうです。

ランゲルハンス細胞は表皮に広く分散していて、指状の細い突起を多数のばして網状となり、侵入してきた細菌やカビをとらえて処理し、他の免疫細胞に異物が侵入してきたことを伝えます。

エイズ患者がカビ感染症などに弱いのは、このランゲルハンス細胞がHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の攻撃によって全滅してしまうからです。

化学物質は、皮膚の内部に容易に侵入してきますが、皮膚には精巧な化学物質の解毒系があり、これによって有害な化学物質の多くは代謝され解毒されます。これが第三の防御線です。

皮膚の細胞にはミクロソームという細胞器官があり、ここに含まれる解毒酵素によって有害な化学物質は最終的に水溶性の代謝物に変えられ、体外に排泄されます。

この解毒酵素によって、医薬品が効力を発揮する化学物質に変わる場合もあるそうです。たとえば、炎症を抑えるコルチゾンを皮膚に塗ると、解毒酵素によって活性型のヒドロコルチゾンに変わり、これが抗炎症作用を示すそうです。

逆に、毒性のある物質がさらに有毒な物質に変わる場合もあるそうで、ベンツピレンという発がん物質は、解毒酵素によって強力な発がん性を示すエポキシド化合物に変化するそうです。

皮膚の解毒反応はとても静かに進行するので、我々はさまざまな有毒化学物質が体に侵入していることに通常は気がつきません。

しかし、侵入した化学物質が解毒される前に皮膚のタンパク質としっかり結合してしまうと、解毒に失敗してアレルギー反応が引き起こされ、かゆみなどの不快な症状を通じて我々は有毒物質が体内に入ったことを知ります。ウルシにかぶれた状態が、その典型的な例です。

したがって、皮膚病の多くは、皮膚を防御する適応的な反応が失敗に終わった結果であるとみなすことができます。

ところで、第二の防御線である皮膚の免疫系は、体全体を守る要(かなめ)ですが、守りが限度をこすと過敏症がもたらされます。

というわけで、次回は免疫系と過敏症についてのお話です。

にほんブログ村 病気ブログ がんへ
にほんブログ村