『現代強健法の真髄』(大津復活:著、大同館書店:1918年刊)という本をご紹介しています。今回は第5回目です。
◆深呼吸の科学
すでにこの時代(大正7年)には、肺の解剖学的な知識もあり、呼吸の目的が酸素を体内に供給し炭酸ガスを体外に排出することであることも正しく理解されており、深呼吸(腹式呼吸+胸式呼吸)の大切さが科学的に論じられています。
例えば、腹式呼吸によって腹部を動かすと、腹部を通る各種神経系が刺激され、内臓の働きが良好になることや、安静時と比較して、深呼吸の際に使われる筋肉の種類がいかに多いかということが具体的に示されています。
そして、血液こそ直接人体を養う必要物件で、病気の原因が汚れた血液にあり、血液を清潔にして、その循環を良好にすることが病気の根本的な治療法であると説かれています。
また、深呼吸の効果として、以下の5項目が挙げられています。
1.呼吸器 - 肺を強め、十分な酸素を供給して、血液を清潔にする。
2.循環器 - 横隔膜の上下運動が心臓を鼓舞するので、血液循環が良好になる。
3.消化器 - 腹式呼吸によって胃腸が適度に動かされるので、食物の消化がよくなり、便秘も改善される。
4.神経 - 酸素が脳に十分供給されるようになるので、不眠、頭痛、めまい、記憶力が改善され、気分が爽快になる。
5.皮膚 - 酸素が皮膚に十分供給されるようになるので、血色がよくなり、皮膚が美しくなる。
現代の医療は、薬に頼り過ぎるあまり、深呼吸の重要性を説くことはあまりないようですが、深呼吸は無料で、しかも健康効果が大きいので、皆さんもぜひ日常生活に取り入れていただきたいと思います。
特に女性は胸式呼吸の人が多いそうなので、腹式呼吸を始めると、その効果が顕著に現われるかもしれませんね。
次回は、いよいよ二木式腹式呼吸法についてのお話です。