前回、その他の健康法の一つとして自然療法をご紹介し、その中で、「運動と、山中の新鮮な空気と、谷川の水と、黒パンと、野菜と牛乳とで多くの病人を治療した」と書きましたが、「牛乳」については本当に健康にいいのか疑問をお持ちの方もおられると思いますので、少し整理しておきましょう。
まず、『二大栄養としてのヴィタミン及蛋白質の研究』(妹尾太郎:著、世界思潮研究会:1923年刊)という本には、
「牛乳中の脂肪は極めて重要な成分で、所謂(いわゆる)乳化として浮遊する小粒状態のものがそれであるが、その比重が乳清よりも軽いために、表面に凝集してクリーム層をつくる。この脂肪は動物性或は植物性の脂肪に類似しているが、美味で消化し易く、且つ栄養価の多い点においては他の脂肪に遥かに勝つている。だからクリーム層の厚いものほど牛乳としては上等である。」(旧漢字、旧仮名遣いを修正)
と書かれていて、この本が出版された大正12年当時には、牛乳の上部にクリーム層があるのが常識だったようです。したがって、健康のために牛乳を飲むのなら、こういった上等な牛乳を飲むべきでしょう。
なお、当時は農薬の心配はなかったと思われますが、現在の日本は農薬大国で、単位面積当たりの農薬散布量はアメリカの8倍にも達するそうです。(OECDの統計より) したがって、現在は牧草の農薬も心配する必要があるようです。
また、現在の畜産業では、本来草食動物の牛に穀物飼料を与えて育てるので、牛の内臓は悲鳴を上げているそうです。(参考:「牛の肝臓は生で食べないように」)
さらに、そういった牛を病気から守るため、抗生物質を牛に投与することが当たり前になっているそうです。(参考:「私たちの目には見えない牛の苦しみ」)
しかも、日本は世界有数の遺伝子組み換え作物輸入大国ですから、与える穀物飼料は大部分が遺伝子組み換え作物だと思われます。
したがって、こんな牛乳をいくら飲んでも健康にはなれないでしょう。逆に、牛乳が花粉症やアトピー性皮膚炎、骨粗しょう症などの原因であるという指摘もあります。(参考:「牛乳で起こる病気」 → リンク切れです、「牛乳カルシウムの真実」)
ただし、牛乳の名誉のためにちょっと反論しますと、現代でも昔ながらの牛乳を生産する農家は存在していて、そこで生産される「本当の牛乳」はそれほど悪者ではないようです。
例えば、自然放牧酪農家の洲濱正明さんは、シックス・プロデュースという会社を設立し、牛舎のない自然な環境で乳牛を育てているそうです。
WEDGE(ウェッジ)という雑誌に載っていた記事によると、洲濱さんがつくる牛乳は、牛乳アレルギーの人でも飲めるそうで、これこそが「本当の牛乳」なのだそうです。機会があったら一度飲んでみたいですね。