以前、本ブログの「がんは切らずに治せる」という記事で、『百ガン撲滅の理論と実証』(大塚寛一:著、1969年刊)という本をご紹介しました。私はこの本が、がんは切らずに治せると公言した最初の本だと思っていたのですが、実はもっと古くから、がんが切らずに治せることを明らかにしていた人がいました。
それは、1894年(明治27年)生まれのジャーナリスト、大浦孝秋さんという人です。大浦さんは、1937年に『癌の予防と治療法』、1948年に『癌の征服法』、1951年に『癌の治った話:どうして治ったか』、1954年に『癌はこれで治る』という本を出し、がんが切らずに治せることを広く世間に知らせていたのです。
そこで、今回は『癌はこれで治る』(大浦孝秋:著、健康之友社:1954年刊)をご紹介します。この本には、現代の医学知識から判断すると疑問に思われるような内容も含まれていますが、参考になることも非常に多いので、多くの人に読んでいただきたい一冊です。
ただし、この本はもう古本屋でも入手することは困難かもしれません。現在では、国会図書館に行ってもこの本を直接見ることはできませんが、国会図書館のコンピューター端末から電子ファイルを閲覧することが可能です。
この本には、次のように書かれています。
「癌は治る。断じて不治ではない。しかも、放射線や外科療法では治らない。心身生活の根本的改善と、草根木皮の利用と、物理的操作の総合結集で治せるものであることを信ずるに至った。」
そして、がんの治療法として次の5項目を挙げています。
1.精神を明朗強固にもつこと
2.食餌を制癌食のみに改め、他の一切の飲食を廃すること
3.指定の生薬、栄養物を服用すること
4.酵素と共に物理療法を行う
5.日光浴、入浴、空気浴、全身運動、休養等を適正に行うこと
なお、2の「制癌食」としては、ハトムギ(なかの白い仁を粉にひいてパンを焼く)や菱の実(なかのデンプンを取り出し、だんご餅にするか、粥に煮る)を推奨しています。
3の「生薬、栄養物」としては、藤(特に白藤)のコブ一握りを水三合で二合に煎じたものが特に効果があるとしています。また、青汁(藤の葉、つるな、岩ちしゃ、ハトムギの青葉、じゅんさい等が原料)も推奨しています。
4の「酵素」は、出版元の「健康之友社」で過去に販売していたようです。また、「物理療法」の一つとして、「井上新幸機」という、ビワの葉の青汁の蒸気で患部を蒸す装置が紹介されています。著者は、この装置を「世界に誇り得る発明」とたたえ、「無数の癌患者が救われている」としています。
この装置はもう入手不可能ですが、ビワの葉を細かく刻み、これを薄い布袋に平らに入れたものを患部の上におき、その上に温熱治療器をのせてふとんをかぶせれば、井上新幸機の代用になるそうです。
面白い話としては、「麩食に癌腫なし」ということわざがあって、お麩を常食しているとがんにならないことが古くから知られていたそうです。また、海鼠(ナマコ)を2~3年も食べ続けているとがんが治るという話も紹介されています。
他には、漢方煎薬、灸、重曹水溶液注射、臍帯ホルモンなどによってがんが治った事例が紹介されています。なお、がんに有効とされる漢方煎薬は現在でも販売されていますが、漢方薬は体質(証)との整合性が重要なので、漢方煎薬を使う場合は必ず専門家(漢方医)の指導を受けるようにしてください。
著者は、ジャーナリストとしてがん治療の現場を取材し、西洋医学では治らなかったがん患者が、生活習慣の改善と生薬・物理療法などの処方によって治るのを目撃し、この本を書いたわけですが、こういった知識がもっと広く普及していたら、人類はとっくにがんを克服していたかもしれませんね。
また、著者が示したがんの治療法の最初に、「精神を明朗強固にもつこと」と、心の重要性を指摘しているのには本当に感心させられます。がんを告知されても明るく朗らかでいられる人は少ないでしょうが、心が折れてしまってはがんに克つことはできません。そして、著者は次のようにも語っています。
「癌が恐ろしいのではなく、癌について無知であることが恐ろしいのである。」
この事実を知っていれば、「精神を明朗強固にもつこと」もずっと容易になるのではないでしょうか? この言葉を、現在がんで闘病中のすべての方にお贈りしたいと思います。