胃がんは日本人に多い病気ですが、はたして昔からそうだったのでしょうか? また、民間療法にはどのようなものがあったのでしょうか? 国立国会図書館デジタルコレクションで昔の文献を調べてみました。
まずは統計ですが、『胃癌発生論』(山極勝三郎:著、半田屋医籍:1905年刊)という本によると、死体の解剖によってがんの有無を調べたところ、総解剖例3,076体中、がんがあったのは237体で、そのうち胃がんは107体だったそうです。(なお、遺体の大部分は男性で、高齢者が多かったそうです。)
つまり、全体の約3.5%に胃がんがあり、がんを有する死体の約45%は胃がんでした。これは、当時の外国の統計と比較してもそれほど多いわけではなく、昔は日本人だから胃がんが多いということはなかったようです。
ちなみに、現代の胃がんの生涯発がんリスクは、男性11%、女性6%だそうです。(詳しくは、本ブログの「生涯発がんリスクの比較 」を参照してください。)
次は民間療法ですが、『食養療法の話 : 治病長生』(井上正賀:著、黎明社:1930年刊)という本には、胃がんを食事で治す方法として、野菜を中心に、少量の小魚類、海藻類、果物、果汁、適量の生の松の実、漢方薬(何首烏、菊花、珍皮、甘草、ゲンノショウコ、ヨモギなどの煎汁)などを摂取することを薦めています。
また、胃がんを誘発する生活習慣について詳しく書かれているのですが、これは、本ブログの「治療のポイント 」でご紹介した内容と一致する部分が多く、現代でも通用する立派な内容だと思われるので、下に本文を添付しておきます。この本は昭和5年に書かれており、この知識がもっと広く普及していたら、日本人の胃がんはずっと少なくなっていたかもしれませんね。
次に、『誰にも出来る薬草栽培と薬草療法』(家庭医学研究会:著、崇文堂出版部:1934年刊)という本には、クサノオウ、ジュズダマ、ハトムギ、ナス、ハマチシャが胃がんに効果があると書かれています。なお、クサノオウは、本ブログの「ウクライン療法 」でもご紹介しましたが、個人の判断で服用することは非常に危険ですのでご注意ください。
最後に、『家伝霊薬秘方集』(曙書院:編、1935年刊)という本には、タラノキの根皮と菱の実が胃がんに効果があると書かれています。なお、タラノキの根皮は初期の胃がんに特に効果があり、菱の実はすべてのがんに効果があるそうです。
ところで、こういった薬草を使うことに抵抗を覚える方もおられるでしょうが、『「漢方がん治療」を考える』というブログによると、胃がん・食道がんの世界的な名医だった中山恒明博士が、生薬の効果に驚き、これを臨床試験に用いて良好な成績を収めたことが、昭和34年の日本医師会雑誌に掲載されたそうです。
それによると、中山博士がある胃がん患者の手術をしたが、開腹したところ手遅れだったため、本人には手術は成功したと嘘をつき、その患者の家族には余命3か月だと伝えたそうです。ところが、その患者が1年半ほどして元気になって病院に挨拶に来たので、内心非常に驚いて食生活の様子などを尋ねたところ、その患者は、藤瘤(ふじこぶ)、訶子(かし)、菱の実、ハトムギの種子の4種類を煎じた生薬を飲んでいたのだそうです。
どうやら、古来から使われている薬草には、現代の科学を超えた先人の知恵が凝縮されているようです。この話にご興味のある方は、「漢方がん治療 WTTC」で検索してみてください。