「ヒトラーとは何か」
セバスチャン・ハフナー著 瀬野文教訳 草思社文庫 316ページ 980円+税
今まで何冊かのヒトラーの本を読んできましたが、この本の描くヒトラー像はかなりユニークでした。
それは「今日の世界はそれが気に入ろうがいるまいがヒトラーがつくった社会である」という言葉にあらわされるように、ヒトラーの政治を糾弾することに重点を置く従来の本とは視点を異にして、今日の世界政治の基がヒトラーにあることを描いたことでしょう。
だからと言ってヒトラーの行為を承認するわけではありません。むしろ今まで無視されてきたヒトラーのもう一つの側面を表に出して「この男の本当の怖さをしっていますか?」という問いかけのようにヒトラーの性格や思想が行動に直結して、ユダヤ人を虐殺したその刃が自国民にも向けられていたということをも示したことでしょうか。
以上のような視点をもつこの本は次のような点を考えるのに大いに刺激的でした。
①一人の政治家の性格や思想がどのようにして国民を悲劇に導いてしまうものなのか。
彼が演説の名手として、学問の総本山として鳴らしたドイツ、民主的な憲法を持っていたというドイツ国民を心酔させ、ドイツ人の中の弱者やユダ ヤ人虐殺まで進んでやるようにする心理的な推移。
⇒日本にも祖父の代から改憲に執念を燃やす首相がいますね。国民の多数が反対なのに、国のためというより自己の怨念に導かれて、突き進むかに 見える改憲道。自己の無謬性に酔って、誤りを指摘されても痛痒を感じない性格の方。
②経済による成功(ヒトラーが首相になった1933年に600万人もの失業者がいたドイツが1936年には完全雇用という成果!)が国民をヒトラー支持に かえ、彼の本当の思想(野望)を覆い隠してしまい、その後の世界戦争へドイツを突き進ませる要因にもなったこと。
⇒少子化の中で人手不足などの要因で就職率が上がっているのをアベノミクスの成果とばかりに、改ざん、隠匿、セクハラなどの疑惑を免罪するか のごと政権を支持してしまう3割強の国民。
③ヒトラーの戦争が、その後の東西の冷戦や国連などにおける常任理事国など今日の秩序につながっている事実。
⇒東西ドイツ、冷戦、国連のすがた・・・。
④弱者を許さないヒトラーの思想と行動が、やがて敗北するドイツ人自身に向けられ、自国の玉砕戦術へと向けられたということ。
⇒弱者を犠牲にする政治を支持すればやがて自分達に帰ってきますが、戦前の日本でもそうでした。国民を救うのではなく一億総玉砕などと沖縄だ けではなく本土決戦も叫ばれていたのでした。現在の日本でも、生活保護をうけている人などのうち一部の不正受給者がいるとすぐバッシングを して溜飲を下げがちです。
⑤ドイツの戦争犯罪を裁くというニュルンベルグ裁判によって、かえってヒトラーの犯した犯罪が一般的な戦争犯罪とされて、裁いた方もそうではない かという余地を残している事はおかしい、むしろ大量殺人の犯罪者であるという点。
⇒日本の極東裁判でも同じような構図が見られます。中国での石井部隊などの大量人体実験などを見ればわかるのに一般的な戦争犯罪と同罪にして みるから、相手国もということで自力での戦争批判ができないままになって今に至っているのでしょう。
⑥以上のヒトラーの行為に率先して協力する国民の問題。「ジキルとハイド」の関係に置き換え、善良な国民のはずが実はヒトラーに「祖国愛」を吹き 込まれるとたちまち殺人鬼に変身するという国民。長い間、権威主義にならされ、奴隷根性が身に染みてしまっていてだれかヒトラーのような「偉 大な人物」が現れるとすがりつくという国民性を自身もドイツ人である著者は厳しく指摘します。
⇒これは特に似ていると思いませんか。私たち日本人の国民性と言われるものと。長い封建制度のもとに暮らしていて、その後は徹底した皇軍化教 育のもとで、上の者に服従するのが習い性になってしまう人々が大量に作られていました。
また家庭では穏やかな優しい父さんが、中国などでの〇〇人切りなどの残酷なことをしてしまったり、強いられてしまったことが数多報告されて いますね。
そのうえ戦争が終結した後にも自らの力で戦争犯罪者を追及したりしてこなかったのが日本でした。今も農村部と言わずとも私たちのまわりに は自分の含めてそのような国民性が見られます。
「長いものには巻かれろ」という国民性はまさにこれを言い当てています。今でも、アメリカには者は言えずに、同じアジアの韓国や中国など へは対等に接することとは程遠いような意見がたくさんあります。強いものには卑屈に従い、弱いとみるや強く出る。
本物の祖国愛をこそ考え る必要があるのではないでしょうか。
これ以上詳しくは触れませんが、今日の日本の政治を考えるうえで実に示唆に富む内容でした。
お勧めの本です。
セバスチャン・ハフナー著 瀬野文教訳 草思社文庫 316ページ 980円+税
今まで何冊かのヒトラーの本を読んできましたが、この本の描くヒトラー像はかなりユニークでした。
それは「今日の世界はそれが気に入ろうがいるまいがヒトラーがつくった社会である」という言葉にあらわされるように、ヒトラーの政治を糾弾することに重点を置く従来の本とは視点を異にして、今日の世界政治の基がヒトラーにあることを描いたことでしょう。
だからと言ってヒトラーの行為を承認するわけではありません。むしろ今まで無視されてきたヒトラーのもう一つの側面を表に出して「この男の本当の怖さをしっていますか?」という問いかけのようにヒトラーの性格や思想が行動に直結して、ユダヤ人を虐殺したその刃が自国民にも向けられていたということをも示したことでしょうか。
以上のような視点をもつこの本は次のような点を考えるのに大いに刺激的でした。
①一人の政治家の性格や思想がどのようにして国民を悲劇に導いてしまうものなのか。
彼が演説の名手として、学問の総本山として鳴らしたドイツ、民主的な憲法を持っていたというドイツ国民を心酔させ、ドイツ人の中の弱者やユダ ヤ人虐殺まで進んでやるようにする心理的な推移。
⇒日本にも祖父の代から改憲に執念を燃やす首相がいますね。国民の多数が反対なのに、国のためというより自己の怨念に導かれて、突き進むかに 見える改憲道。自己の無謬性に酔って、誤りを指摘されても痛痒を感じない性格の方。
②経済による成功(ヒトラーが首相になった1933年に600万人もの失業者がいたドイツが1936年には完全雇用という成果!)が国民をヒトラー支持に かえ、彼の本当の思想(野望)を覆い隠してしまい、その後の世界戦争へドイツを突き進ませる要因にもなったこと。
⇒少子化の中で人手不足などの要因で就職率が上がっているのをアベノミクスの成果とばかりに、改ざん、隠匿、セクハラなどの疑惑を免罪するか のごと政権を支持してしまう3割強の国民。
③ヒトラーの戦争が、その後の東西の冷戦や国連などにおける常任理事国など今日の秩序につながっている事実。
⇒東西ドイツ、冷戦、国連のすがた・・・。
④弱者を許さないヒトラーの思想と行動が、やがて敗北するドイツ人自身に向けられ、自国の玉砕戦術へと向けられたということ。
⇒弱者を犠牲にする政治を支持すればやがて自分達に帰ってきますが、戦前の日本でもそうでした。国民を救うのではなく一億総玉砕などと沖縄だ けではなく本土決戦も叫ばれていたのでした。現在の日本でも、生活保護をうけている人などのうち一部の不正受給者がいるとすぐバッシングを して溜飲を下げがちです。
⑤ドイツの戦争犯罪を裁くというニュルンベルグ裁判によって、かえってヒトラーの犯した犯罪が一般的な戦争犯罪とされて、裁いた方もそうではない かという余地を残している事はおかしい、むしろ大量殺人の犯罪者であるという点。
⇒日本の極東裁判でも同じような構図が見られます。中国での石井部隊などの大量人体実験などを見ればわかるのに一般的な戦争犯罪と同罪にして みるから、相手国もということで自力での戦争批判ができないままになって今に至っているのでしょう。
⑥以上のヒトラーの行為に率先して協力する国民の問題。「ジキルとハイド」の関係に置き換え、善良な国民のはずが実はヒトラーに「祖国愛」を吹き 込まれるとたちまち殺人鬼に変身するという国民。長い間、権威主義にならされ、奴隷根性が身に染みてしまっていてだれかヒトラーのような「偉 大な人物」が現れるとすがりつくという国民性を自身もドイツ人である著者は厳しく指摘します。
⇒これは特に似ていると思いませんか。私たち日本人の国民性と言われるものと。長い封建制度のもとに暮らしていて、その後は徹底した皇軍化教 育のもとで、上の者に服従するのが習い性になってしまう人々が大量に作られていました。
また家庭では穏やかな優しい父さんが、中国などでの〇〇人切りなどの残酷なことをしてしまったり、強いられてしまったことが数多報告されて いますね。
そのうえ戦争が終結した後にも自らの力で戦争犯罪者を追及したりしてこなかったのが日本でした。今も農村部と言わずとも私たちのまわりに は自分の含めてそのような国民性が見られます。
「長いものには巻かれろ」という国民性はまさにこれを言い当てています。今でも、アメリカには者は言えずに、同じアジアの韓国や中国など へは対等に接することとは程遠いような意見がたくさんあります。強いものには卑屈に従い、弱いとみるや強く出る。
本物の祖国愛をこそ考え る必要があるのではないでしょうか。
これ以上詳しくは触れませんが、今日の日本の政治を考えるうえで実に示唆に富む内容でした。
お勧めの本です。
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