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「養生訓」の世界:その3=何度も強調される命の大切さ

2018年09月15日 | 本・文芸
 その1で、老年学のようであるということを書きましたが、何度も何度も生命を大切に、慎めと強調します。
それは
 「人命は父母をもとし、天地を始まりとしたものであるから、自分だけの所有物ではない。よく慎んで痛めないようにし天寿を全うすべきである。」という冒頭の言葉に理由があります。しかも、「身を慎み、生命を大事にするのは、人間最大の義務である。」とまで言っています。この時代にこれほどの命の尊重をいえることに驚きます。

 生命を大切にするために「養生」が大切で、それは普段から草木を育ていつくしむのと同じであるが、人の生命はもっと重いのだから、病気になってから手当てではなくて普段からの手当てが大切と説きます。
 つまり養生は、普段の生活のありかたということになります。今の言葉でいえば「生活習慣」の大切なことを説いているのでした。
 天寿などと言われていますが、益軒は人の天寿はもともと長いが、それを長くするのも短くするのも「養生」次第であるといいます。
 それを「人のいのちは我にあり、天にあらず」という老子の言葉を紹介しながら、「養生」(生活習慣)の大切さを繰り返して述べています。

 その「養生」で大切なのは、一字あると言います。それは、「畏れる」(恐れるではなく)といい、そこから慎みが生まれるといいます。
 私などはなかなかそうはいきません。「○○過ぎ」が多い日常です。食べ過ぎ、座りすぎ、何でもやり過ぎ・・・。それが「養生」の害になるもので、「過ぎる」と「気」を損なう、つまり元気を失うと言います。
 「病は気から」と言われます。私も実感することがよくあります。多くの人が職場やさまざまな活動での人間関係などで悩みがあります。飲食など生活習慣での「過ぎる」面と、人間関係が複雑だったり、厳し「過ぎる」ことなど。
 
 これについても益軒は良いことを言っています。「心は体の主人である。この主人を静かに安らかにさせておかねばならぬ。 からだは心の下僕である。うごかして働かさねばならぬ。・・・・。
 そうなんですよね。いやなことが続いたりすると「胃が痛む」ということですね。
このように命を大切にするのは、生んでくれた親への孝行もあるが、人生を楽しむことにねらいがあると、長生きして人生を楽しむことを説いています。(次回は楽しみについて。)
 


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