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辺野古移設:防衛省が工事着手 知事「強権極まれり」
毎日新聞 2015年10月29日 11時24分(最終更新 10月29日 12時48分)
米軍普天間飛行場を辺野古へ移設する計画図
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への県内移設計画で、防衛省は29日朝、埋め立てに向けた本体工事に着手した。辺野古の海に隣接する米軍キャンプ・シュワブ内の陸上部分での仮設資材置き場の整備を始めた。今後準備が整い次第、海への土砂投入など埋め立てを開始する見通し。移設に反対する翁長雄志(おなが・たけし)知事をはじめとする沖縄の反対を振り切って政府が本体工事を強行し、沖縄の反発がさらに強まるのは必至で、政府と沖縄との溝はこれまでになく深刻になる。日米両政府が1996年に普天間返還で合意してから19年、移設計画は重大な局面を迎えた。
沖縄防衛局によると、29日午前8時ごろ、護岸工事に必要な仮設資材置き場の整備作業などを開始。中断していた残り5地点の海底地盤のボーリング調査に向けた準備作業も再開させた。周辺海域では移設に抗議する人たちのカヌーや警戒に当たる海上保安庁の船などが確認された。シュワブのゲート前でも抗議行動を展開する多くの県民らと警察官がもみ合いとなって騒然とした。
翁長知事は登庁時に記者団の取材に応じ、「強権極まれりという感じで大変残念だ。国に余裕がなく、浮足立っている感じがする。これからしっかりと対峙(たいじ)していきたい」と述べた。
移設計画を巡っては、翁長知事が13日に埋め立て承認を取り消したのに対し、防衛局は14日に行政不服審査法に基づく審査請求と取り消し処分の執行停止を石井啓一国土交通相に申し立てた。石井国交相は28日に取り消し処分の執行停止の決定を通知。これを受け、防衛局は28日に県環境影響評価条例に基づいて埋め立て本体工事の着手届け出書を県に提出した。
防衛局は、地盤を調べるボーリング調査が終わった計19地点から順次、埋め立て本体工事を進める方針。残り5地点の調査は来春までに完了させる予定。届け出書によると、工事は2020年10月31日に完了し、全体で約160ヘクタールを埋め立てる。
一方で県は13年12月に前知事が埋め立てを承認した際、本体工事着手前の事前協議を留意事項としていたことから、承認取り消しで中断した協議の再開を28日に防衛局に通知。だが、防衛局は同じ28日に「協議は終了した」との文書を県に提出し、再開に応じない姿勢を示した。承認取り消しが執行停止とされたことに対抗し、移設阻止に向けて県は近く、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出る。
また、翁長知事による埋め立て承認取り消しに対し、政府は代執行の手続きに入ることも閣議で了解。政府が出した承認取り消し処分を撤回するよう勧告する文書が29日に県に届いた。翁長知事は「恒久的な基地を何が何でも沖縄に押しつけるという政府の最後通牒(つうちょう)だ」と批判するなど是正勧告には応じない姿勢を示しており、その場合には政府は知事に代わって承認する代執行を求めて高裁に提訴する方針。政府と県との対立が法廷闘争に突入するのは確実となっている。【佐藤敬一】