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アンダルシアは銀河の鏡




夜中の2時。

スペイン最南部、アンダルシア地方のマラガからセヴィリア方面に向かって車で走っていた。
シエラ・ネバダ山脈の裾野には行き交う車もなく、草木も眠る静かな夜。


GPSの指示で舗装された真っ暗な農道に入ると、両脇に遥かに農場が広がった。ヘッドライトに照らされて背の高い植物が何万と整然と植わっているのが分かる。それらはまるで天上の銀河を正確に写し取ってでもいるかのように、数限りなく、どこまでもどこまでも続いている。

最初、トウモロコシの畑かと思ったが(ブルージュ郊外で見慣れているのだ)、夜目にはトウモロコシよりももっと...なんと言えばいいのか、もっと生々しく見えた。

生々しく...そうだ、彼らには顔があったのだ。

顔があるから人間の大群のように見えた。
数万人の神秘宗教の信者が、深夜、同じ衣をまとい、銀河の同じ方向に顔を向け、手を身体から30度ほど離した同じポーズで宇宙と交信している。
無用な音をたてたらこちらに向かって一斉に回れ右しそうな雰囲気。怖。


ちょっとこれ何? エイリアン? 交信してんの? やばいで~(失礼)


わたしよりはずいぶん目のいい夫がしばらくして答えた。



「ああ、ひまわりみたい」


何日かしてから昼間に同じような道を通った。





わたしはひまわりの花が人間の顔のようで怖いと常々思っていたが、そのぼんやりした怖さを実体験した。夜中のひまわり畑はオカルティックだ。

まあこれが見られたわけですが。

この風景、人間の中にある「原風景」への思慕の情をかき立てる。もちろんひまわり畑はわたしの原風景ではないけれど、原風景は往々にして心象風景(実在しない風景のこと)なのである。納得。
そりゃ芸術家なら映画の1本もものにしたくなりますわな。


ヒマワリは隕石にタネを運ばせ、宇宙の遥か遠くの星から来たのかもしれない。
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