おはなしきっき堂

引越ししてきました。
お話を中心にのせてます。

茜色のお花畑 最終回 (お花畑)

2020年08月05日 | 茜色のお花畑


昨日、本を返却に。
結局、昨日こういった事で忙しくなった。

午前中に野菜を買いに農協に行った後、一旦荷物を置いて水分補給をし一服した後また出る。
本を返却した後は、歯医者に。
先週から、本当に必要だったのだろうか?と半分ぐらい後悔していたんだけど。
今、歯のクリーニングが本当に急を要するのかって・・・。
でも、通おうと思った時はこんな状態じゃなかったし、ちゃんと見てもらってないとネットニュースの見すぎのせいで(これはいい方だな)、怖いな~と思っていた。
だからいい機会だと思ったんだ。
今回のと含めて2回に分けてしてもらい(長年行ってないから)綺麗にしてもらって歯磨き指導もしてもらって、スッキリした。
一旦終了で、定期的に通う事になっている。
歯医者の感染予防は、かなり徹底されているので安心できるし、本当にいいタイミングだったのだと思うし、かなり私に合った歯医者さんだった。
そして、思った以上に安くびっくりした。

私が、子供の頃からこんな歯医者さんがあったらなと思う。

その後、ここの近くで買い物をする。
マスク購入した。

日本製がやはりいいと見たので。
おひとり様6点となっていたけど、とりあえず2点。
おとーさんは、義弟からもらったサージカルマスクをつけて、具合が悪くなってから、サージカルマスクをつけなくなった。
私が作ったマスクを毎日している。
だけど、営業先に行くときにはたまにはいるかなと。

どちらも7枚入りで税込みで415円。
5%引きの券があり、割引してもらった。
他に日用品を買い足した。
先週に結構まとめ買いしたつもりだったが、数点買い忘れがあったので。

さて、今日は「おはなし」です。
最終回で結構、書くのに時間がかかり、挿絵まで手がまわらず。
少し今まで描いたのも慌てて描いたのがありこれも少し手を加えたく、本文も見直すつもりなので、挿絵は今回はなしで。
昨日からずっと忙しく、引き続き今日も忙しいのもあり改めてゆっくりしたときに付け加えようと思います。

最終回を書くにあたって、ところどころつじつまのあってない部分とか書き間違いとかもあり(特に最初のアカネの年齢、32歳から3年たって37歳としていた。これは最初3歳上の設定で書いていたのをそのままにしてしまったからかと。)結構長くかかってしまいました。

それでは・・・
いつものように・・・いやいつもより長いので興味のない方は読み飛ばしてください。



***************************************************
【茜色のお花畑 最終回 (お花畑)】
衝撃的な人員整理から数か月たち、季節は春になった。
景気は相変わらず横這い状態だが、少し仕事が増えてきてマエダさんが仕事に復活した。
お姑さんの施設も見つかる。
ただ、かなり大変だったらしく結局、公的施設には入れず民間の施設になったそうだ。

「費用が結構高いの。だから頑張って働かないと」というマエダさんの顔は生き生きしていた。
ご主人もいろいろと話し合った末、自分の親なのだからこれからは主になって考えると言ってくれたと嬉しそうに笑った。

私が働き始めて1年以上が過ぎた。
1年間働き、働くという事、収入を得るという事は、生きていく事なのだと今は思うようになった。
あのままこの職場に入れず、引きこもっていたらどうなっていただろう。
好きな事だけをして収入を得ている人なんかいないと最近では思うようになった。
好きでもいろいろな葛藤もあるだろうし、努力もしないと駄目だろう。
私にとって幸いなのは、手を動かす事が苦ではないので、今の仕事は決して嫌いではない。
単調な仕事だけど私にはあっていると思う。
ただ、その単調な仕事の中でも正確さがいり、そして技術がいる。
最初に頻繁に出していた不良品も最近はほぼなくなってきた。
私が作っているこの小さい部品が、あのキラキラした秤になるのだと励みになった。

コンビニでサラダとか買っても、これも人の手がかかっていると思うように。
もしかするとラインの仕事で、何の意味が・・・と思っている人もいるかもしれないけど、「美味しく食べている」人がいるという事が意味のある事なのだろう。
社会はそうやって成り立っているのかもしれない。

ただ、最初はもらう金額に喜んでいたけど、最近は一人暮らしの自分の今後の事をやはり心配するようになった。
パートの金額のままやっていけるのだろうかと。
幸いにして持ち家があり、家賃など発生していないので暮らせるけど、古い家屋なので修理にお金がいる。
びっくりするほどの金額を払ったとはいえ、2年前にかなりリフォームはしているから、しばらくは大丈夫だろうとは思う。
ただ、また何年か後には手を入れることは必要だろう。

1年の間に、母のものとかはタクミやミエコさんの手伝いで思い出深いもの以外は処分し、リサイクルなどに出した。

ただ、1つの押し入れだけまだの状態だった。
季節もよくなってきたので、思い切ってやってしまおうと思った。
いつでも、ここを出て行けるように。

タクミもそうだけど、今ホノカちゃんも就職活動で大変だし、ミエコさんも忙しい季節のようで締切りに間に合うように毎日深夜まで仕事をしているらしい。
もう、今年で36歳になった。
いい大人が人にばかり頼っていたことが恥ずかしい。
みんな、「手伝うよ」と言ってくれるが、ここは黙って一人ですることにした。

ただ、ハナが大喜びで「猫の手」を貸してくれたが・・・。

衣装ケースがたくさん出てきた。
若いころの衣類だった。
驚いたことに赤系の服が多い。
私が記憶に残っている母は、このような派手な色は来ていなかった。

その奥から、一冊のアルバムとノートが出てきた。
アルバムをめくると母と父とそして赤ん坊の私の写真だった。
どのページも笑顔の父と母がうつっている。
母はそして、衣装ケースの中の服を着ていた。
こんな時もあったんだと感心する。
ところどころに厳格そうなおばあさんの写真があった。
それは、多分父方の祖母の写真なのだろう。
写真には、今ミエコさんとタクミが住んでいる家がうつっていた。

ノートをめくる。
それは、母の日記だった。

『私と彼の子どもが生まれた。女の子だ。赤ん坊なのにしっかり彼の顔に似ている。かわいい。名前はもう決めている。私の大好きな茜色の「アカネ」』

母は、茜色が好きでそれを私の名前にしたのか。
ノートを読み進めていく。
最初の頃は、「かわいい」と言う言葉がよく出てきた。
きっとアルバムの写真はこの頃に撮ったんだろう。
でも、1ヶ月を過ぎる頃から雲行きが怪しくなる。

『アカネはよく泣く赤ちゃん。彼は明日の仕事に差し支えるから悪いが別に寝てくれないかと言う。アカネを抱き夜の庭を歩いた』

『お姑さんが、抱き癖がつくから抱っこをしたら駄目だという。そのままにしておくと火がついたようになく。仕方ないので抱っこをしてウロウロするとまたお姑さんに怒られた。』

『食事をとっている時にまたアカネが大声で泣いた。お姑さんが「うちの息子はこんなに泣かなかったよ。一体誰に似たんだろう」と言う。彼は黙ってご飯を食べていた』

『母乳の出が悪くなる。検診で相談すると初めての育児で疲れて精神的なものかもしれないから、粉ミルクと混合にした方がいいかもしれないと言われ試してみる。よく飲んでくれてうれしい。たくさん飲んだためかアカネもいつもよりぐっすり寝る。でも、お姑さんに「母乳じゃないと元気な子にならないよ」と言われる』

『離乳食を食べない。でも市販のものを買って来たらよく食べてくれた。するとそれを見ていたお姑さんが「料理が下手だからアカネが食べないのよ。あなたこのうち来たときから何もできなかったでしょ」と言った』

こういう内容が延々と続く。
そして、ある日を境に母の限界が来る。

『アカネが憎い。こんなに泣いて私を苦しめて。大好きな茜色もアカネと言う名前も嫌いになった。何より顔があの人たちに似ていて見るたびに放り出したくなる』

私は衝撃を受けた。
母は、やはり私の事を嫌いだったのだ。
ずっともしかすると憎くて、私を通して父と祖母に復讐していたかもしれない。

そこからのページは、延々と父と祖母と私に対しての憎しみの言葉が続く。

涙が出てきた。
こんなに憎まれていたとは。

でも、最後のページまで読み進めた。
『あの人と離婚する事になった。私がここを出たいというと黙って頷きひきとめもしなかった。もう私の気持ちが持たない。お姑さんは、アカネを連れて出て行けと言った。なんてひどい人なのか。アカネに愛情がなかったのだろうか。でも、少しうれしそうに見えた。なんとなくわかった。きっとお姑さんは自分の息子を私とアカネに取られたと思っていたのかもしれない。思えば彼はすべてお姑さんの言うとおりに行動していた。この家に住むことになったのもお姑さんがどうしてもそうじゃないと結婚したら駄目だと言ったから。だから、お姑さんはまた自分の息子と2人きりになるのが、うれしいんだろう。なんだか寒気がする。結婚するまで彼はとても優しい人だと思っていた。でも、結婚してこの家に入ったとたん人が違ったようになってしまった。正直に言うと私はあの人たちに似たアカネを置いて行きたかった』

ここまで読んでもう視界がぼやけて読めなくなった。
一旦、涙が拭き少し落ち着いてから、最後まで読むことにした。

『アカネを見る。すると笑って私に手をのばしていた。あっと思う。笑った顔がすごく自分に似ていた。めったに笑わない子だからわからなかった。アカネは間違いなく私の子どもだ。置いていきたいと思った事を激しく後悔する。そして、思う』

『この子は、私がずっと守ると』

ここでページは終わっていた。
多分、このあと母はあの家を出たんだろう。

今までの事を思い返してみた。
母は、確かに私の顔を見るたびにこのとても苦しかったことを思い出したんだろう。
だから、そういった時は私の容姿や動作をオブラートに包んだ言葉で攻撃した。
多分、私を通じて2人に復讐をしていたのだ。
でも、誰よりも私の事を愛していたのだと思う。
かなり過剰に間違った方法で。

そして、母らしく私を守りきったと思って、この世を去った。
実際は、違ったのに。
でも、この状態になるのも母の復讐の一部だったのか?

いや、愛されていたと信じたい。

とめどなく流れる涙を拭きながら、私はハサミを持って来た。
祖母が買ってくれた「布以外は切ったら駄目よ。悪くなるから」と言っていたとてもよく切れるハサミだ。
そういえば、母はこのハサミを使う私をとても嫌がった。
ミエコさんが包丁は、ちゃんと切れる方が危なくないのと言ったように、ハサミも一緒なのに、危ない危ないとよく言っていたっけ。
まず、母の服を切った。
茜色の布の山が出来た。

そして、ノートを切り刻んだ。
母は私を確かに愛していた。
その思い出だけを残そうと思った。
母の憎しみも苦悩も全部粉々にしたような気がした。

紙を切ったので後で研ぎに出そう。
こんな作業をしながらでも、祖母の言葉を思い出しながらそう思った。

そして、茜色の布の山は・・・・。

涙も止まりスッキリした頭で考えたのは・・・。






「あーちゃん、こんにちは~!」

元気な声が玄関から入ってきた。

「あら、ゆーちゃん。ママは?」

「ママは一緒に来たけど、ちょっと買い物行くから先にあーちゃんちに入ってなさいって」

あれから、7年たった。
就職をしたタクミとホノカちゃんは、すぐに結婚した。
ユズハ・・・今、玄関から入ってきた女の子ゆーちゃんが出来たから。
ゆーちゃんは、私の事は「あーちゃん」と呼んでいる。
おばちゃんでもいいのにと言うのに、なんだかゆーちゃんとあーちゃんでお揃いみたいだとホノカちゃんがいい、小さいゆーちゃんがおばちゃんと発音が出来ず結局あーちゃんになった。

若い夫婦は共働きだけど、お互いに協力し合って子育てをしている。
結婚と同時にあの家を出た。
ミエコさんもあまり干渉はしないで、二人から頼られた時だけ、協力している。

ミエコさんにだけは、気持ちの整理がついた数年後にあのノートの存在を話した。
ミエコさんが父と結婚したのは、祖母が亡くなった後だったので、祖母の話は父からだけ聞いていたそうだ。
父の目から見た祖母は、厳格な人だったけど母の目から見た祖母とはまた違っていたと言っていた。
いろいろと改心はしたけど、やはり祖母の肩を持つ部分もあったらしい。

「私も姑で「おばあちゃん」になったから、少しだけ気持ちはわかるかな。でもユズハの事はすっごくかわいいんだけど」とふふっと笑った。
ホノカちゃんの事は、高校生の頃から知っていて、家族ぐるみの付き合いのようなので、トラブルはないとは思う。
ただ、やはりその立場になるといろいろな気持ちがあるんだろう。
母のノートの事も母の言い分だけ見るととてもひどい事だらけだけど、母はかなり自我がつよくて、そして料理や家事などは好きではなかった。
今になってはもう誰もいないので、本当のところはわからない。

私にとってもかわいい姪っ子のユズハが来てくれるのはとてもうれしい。
こうやっていつも遊びに来てくれるホノカちゃんには感謝しかない。

そして、私と言えば相変わらずあの会社で組み立ての仕事をしている。
ひとつ違った事と言えば、正社員になった事だ。
マエダさんは、3年前にお姑さんが亡くなられたことを機に辞められることなった。
ご主人が定年を迎えられ、嘱託で働く事になったので、時間的に余裕が出来て二人でその余暇を利用して出来るだけ一緒にいるのだと言っていた。
旅行などもいっぱいしたいと言っていた。

マエダさんが辞める前ぐらいからは、かなり忙しくなり募集をかけてマエダさんと入れ違いで2人入った。
それで、私が2人を指導する事になり正社員にと言う話になっのだ。
「主任」と言う役職もいただく。
そして、その2人のうちの30歳のシングルマザーの女性は・・・なんとノグチさんと結婚した。
年の差20歳以上だったけど、その女性の方がノグチさんに好意を持って猛烈にアタックしたらしい。
ノグチさんは、一人の子の父親になった。
あれから、すぐにお母さんが亡くなり、一人になったと思ったら、急に家族が増えたととてもうれしそうだ。
そして、彼女のお腹にはもう一人。

最近、「蕎麦の会」は。ノグチさん宅でノグチさんの打ったそばを食べながらワイワイとおこなわれるようになった。
家族の仲睦まじい様子が微笑ましい。

人生ってわからないなと思う。

カミデさんは相変わらずお元気で、内職の仕事を頑張ってられる。
たまに息子さんと一緒に部品を取りに来られてやっぱり「ホッホー」と笑う。

サトウさんは、ジム通いを始めながら新しい仕事を頑張っている。
数か月たち少し景気が戻ってきた時に約束通り正社員にしてもらった。
だから、体力をつけて、今の仕事を頑張るらしい。
そこのトレーナーの人がとても格好いいのだという別の目的もあるようだ。
でも、中学生になり多感な時期のアリサちゃんのためには真剣には再婚相手は探していないような気がする。
サトウさんも私と一緒の時に主任に昇格した。
彼女の下にも新しい女性の社員が入ったので。

ヤマダさんは、上司が定年退職した後、評価され女性初の課長になった。
ただ、給料は役職手当がつく代わりに残業手当がなくなり、かえって下がったと怒っていた。
「責任が増えたのに給料下がるなんてありえない!」と。

変化ない毎日のようだけど、こうやって振り返るといろいろとあるものだと思う。
ネット販売は、忙しくなったが趣味としてゆっくりと作ってまだ続けている。
最近では、自分で考えてデザインするようになったのも楽しい。

「あーちゃん!先生きたよ!」

ゆーちゃんの声がした。

玄関に背の高い男性がのそっと立っている。

先生・・・実は、タクミの大学の先生だ。

あの母の服を布の山にした後、それを繋ぎ合わせて大きなベッドカバーを作った。
まるで、茜色のお花畑のようだと思った。
そしてこのお花畑が、母の気持ちなのだと思うことにした。
好きな茜色の名前を私につけた事が。

ただ、そのベッドカバーを作った後もたくさん布はあまった。
それで座布団を何個か作った。
小さい茜色のお花畑が出来た。
それを見たタクミが
「うちの大学の先生、めちゃくちゃ汚い座布団を椅子に敷いてるんだよ。ひとつあげてくれない?」と言うので、茜色のお花畑を「お裾分け」した。

後日、タクミと一緒にお礼に来て下さった。
なんとも飄々とした感じに好意を持った。
そう、好意を持ったのだ。

そして、多分先生も私に好意を持ってくれた。

本当に人生は、わからない。
先生は、私より2歳上。
タクミが言うには「図形おたくのかなり変人」らしいが、そこが好ましい。
幾何学的な座布団のデザインがとても気に入ったのだと言っていたのもうれしかった。

ゆーちゃんが、ハナと遊んでいる。
ハナもそろそろシニアの仲間入りになる。
でも、元気すぎるほど元気だ。

その横で、私と先生はお茶を飲みながら話す。
ただ、話しているのは主に先生だ。
「六角形と言うのは・・・」

話は半分ぐらいしかわからないけど、こうやって誰かが話しているのが心地いい。
この古い家屋も妙に先生と合っているのも好ましい。
なので結局、なんとか修理をしながらも家を維持する事にした。

あの座布団に座りお茶を飲みながら、私はにっこりと笑った。
母にそっくりな笑顔で。
結婚するのかどうか今のところ分からないけど、この茜色のお花畑の中で私は今幸せだと思う。
このお茶も私が働いて、もらったお給料で買ったものだ。
だから、このお花畑の中の幸せを得るために明日も仕事に行く。
最初にタクミが来た日から、私は変わったのだろうか。
1年たった後に、父が残してくれた通帳をタクミが渡してくれた。
それは、今も使わず残している。
記憶に残っていない父の姿がそこにあるような気がして。
今は、自分で自分の生活を維持する事が私自身の小さな目標。

先生との話は、また別の機会があれば・・・。

                          <終わり>

*****************************************************


ふーーっ。
目標達成!
ちゃんと書き終わった!
最初からラストだけ決まっていた。
だけど、予定外に先生を出してしまった。
当初は、独身のままで「家族」は出来たというだけの終わり方にしようと思ったんだけど。
先生との出会い、そして付き合うのは「想像」してください。

結局、アカネの母親はアカネには愛情があったのだとは思う。
だけど、うちの母親にも言えることなんだけど、それは自分の事が最優先で、その次の愛情が子ども。
だから、手放すと言うのは自分に利害が及ぶという考えの自己中心的な愛情。
だけど誰だってそういった部分はあるとは思う。
私自身、息子の事は一番大事だ。
だけど、いざとなると自分の事も大事だし、自分の人生も大事。
最近、子育てを終えた為か段々自分が一番大事なような感じになってきた。
でも、息子はもう一人で生きていける。

子どもの事が大事だと言いながら、子どもが自分がいなくなった後、ちゃんと一人で生きて行けるように考え、そして教えているのか。
自分の満足だけのために勝手な愛情で子供を縛り付けていないのか?
私にとっては結構大きなテーマだった。

もし、最後まで読んでいただいた方がいらっしゃたら本当にありがとうございました。
途中で止まったりしてしまったけど、目標を達成できました。
お花畑・・・最後は風景のように書いてますが、頭の中が「お花畑」という意味も。
最初のアカネですね。

さて、次に進むことにします。

次回からは、水曜日も含めてしばらく普通の絵日記です。

<追記>
そうそう、忙しいのは今日は水曜で生協の配達日でだったのと、カルディで注文したのが一気に届いたのね。

カルディは、今回は飲み物中心に。

紅茶。

コーヒー、コーン茶。


この他にもお茶いろいろ。
来週お盆休みがあるのでその対策用のレトルトパウチのものも。

そして、今回のチョーお楽しみはこれ。


うなぎなしのうな丼。
また、感想は今度に。
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茜色のお花畑 11(ハカリ)

2020年07月29日 | 茜色のお花畑


結構天気がいいのにこの後雨が降るらしい。
午前中に干した洗濯物がほぼ乾いているので取り込んだ。

今日、生協からこれが届いた。


ポイントがたまったので、申し込んでいた入浴剤だ。
今日は、別府温泉だな。

今、出来ることをと思うが、個人では限界がありそして何が真実かわからない。
ただ、わかっているのは今やり遂げようとしている事は完遂する事。

という事で今日は水曜日で「おはなし」です。
毎回書いていますが、興味がない方は読み飛ばしてください。
特に今日は、結構書くのに時間がかかり誤字脱字など満載で後から多分修正します。



**********************************************
【茜色のお花畑 11(ハカリ)】

年が明けて1月になった。
会社内はなんだか暗くてどんよりしている。

社内の仕事は少なくなったとはいえ、人数が減ったのでにわかに忙しくなる。
リストラの対象になった人は会社からのせめてもという事で1月のお給料は出社してもしなくても出るという事になっていた。
退職金がない長く勤めていたパートの人に対してのせめてものと言う対処だったようだ。
ほとんどの人は、自分の持ち物の整理と引継ぎをしたら、出社しなくなる。
それは、当たり前なのだろう。
カミデさんは、年末まで出社をして私にいろいろな事を教えてくれたが、年があけると仕事もないからと出社されなくなった。
年末に恒例に行われているという、忘年会もなく暗い雰囲気のままでその年は終わった。

年が明けて人数がぐんと減り、従業員でまわしている掃除や、お昼のお茶を入れる当番なども早くまわってくる。
残った人で文句を言う人もいた。

「お給料もらっているのなら、その分来てくれたらいいのに」と。

私は、辞められた人の感情を思うととてもそんな気にならないだろう思う。
それに、今からもう就職活動始めている人もいるだろう。
ただ、今の世間の状況を見るととても簡単には仕事は見つかりそうにないが・・・。

私自身は、毎日毎日単調な組み立ての作業をする。
今までは、4人でたまには世間話をしながらしていた作業を一人でする。
図面の読み方などが、わからない時だけ聞きにいく。

マエダさんは、1月の間は休むらしい。
お姑さんの預け先をこの期間に探すのだと言っていた。

ヤマダさんとサトウさんとはお昼の休憩時に暗い雰囲気のまましゃべる。
サトウさんは、やはり今の仕事はかなりきついと言っていた。
もう、帰るころには腰が痛くてたまらないのだとか。
でも、仕事があるだけまだいいと言っていた。
もし、今から職を探すとなると絶望的だと。

ヤマダさんは、リストラの対象になったパートの事務の人の穴が思ったよりも大きかったと言っていた。
その人は、とても良くできる人だったらしいが、ずっとパートのままだった。
ヤマダさんよりは年上で中学生と高校生のお子さんが2人いるのだが、中学生のお子さんに疾患があり定期的に病院に通わないと駄目で、正社員では無理だったそうだ。
いつも時短を考えてテキパキと仕事をこなして、時間になると帰られていた。
ヤマダさんが言うには、彼女の上司の男性よりずっと仕事が出来る人だったそうだ。
彼女が、1時間で済ませていた仕事は、他の人がすると3時間ぐらいかかるのが、彼女が辞めてからわかったと言っていた。

こういった会社の悪いところは「仕事を遅くまでしている人が、よく働いている」と錯覚する事だと。
そしてヤマダさんは自分の事を指さし「結局、出来ない人が残ったのよ」と自嘲気味に笑った。

私はズキンと心が痛んだ。
出来ない人・・・それは私の事だ。
カミデさんの何倍もの時間がかかっている。

毎日、毎日何でこんな作業をしているのかとわからないまま過ぎて行った。

反動のように家で作るマスコットの数は増えて行った。
ホノカちゃんが新しいデザインを持ってきてくれて、それを作る作業に平日の夜や休日は没頭する。

マスコットは、値段の付け方が良かったのかよく売れた。
評価なども励みになった。
私の作るもののファンですとも言ってくれる人もいた。
会社で働いていて作業していても意味がないと思えることが、同じように手を動かしているのにまったく違う気持ちだ。
ホノカちゃんにデザイン料を払うと利益と言うのはそこまでないけど、毎月のハナのご飯代ぐらいにはなった。
ハナは来月か再来月あたりに、病院で去勢手術を受けないといけない。
もう、そろそろですねと先日検診に連れて行った時に先生が言われた。
値段は、他の病院に比べてとても安いらしいが、私にとってはとても大きい金額だ。
お給料から少しずつ貯めていたもので、なんとかはなるけどその後もいろいろとかかるだろう。
手に何かあたるので横を見るとハナが顔をゴンゴンとあてていた。
「ハナちゃん、ご飯だよね」というと
「ピャー」と嬉しそうに鳴いた。



たとえ、先が見えなくても働かないと駄目だと思う。
しかし・・・。

会社には行っているけど、再び引きこもるような状態になった。
タクミやホノカちゃん、そしてミエコさんが来てくれるが、前のように楽しくしゃべれない。

そんなある日、ノグチさんから久しぶりに「蕎麦の会」しませんか?と誘われた。
とても美味しいお蕎麦屋さんがあると営業先の人から聞いたそうだ。

私は、とてもそんな気になれず断った。
するとノグチさんが

「それならば、ちょっと僕の買い物に付き合ってくださいませんか?少し選んでほしい物があるので」と言われた。

どうしようかと迷ったけど、とても真剣に言われたので少しだけの時間ならと付き合う事になった。

日曜日にノグチさんと行ったのは、キッチン用品の専門店だった。
最近、少し凝った料理を作り始めたと言っていた。
今までも自分で冷凍食品などとチンしてお弁当などは作っていたけど、夕飯などは買って来た惣菜が多くて、今回の不況で早く帰れる日が多くなり、ちゃんと作ってみよう思ったのだそうだ。
なので、いろいろと買いそろえたいけど、どれがいいかわからないしそれといい年のおじさんが一人で入るのには勇気がいるのだと。

私自身も料理初心者ですけどというと
「それがいいんです」と言った。
初心者同士だから、使いにくい物がきっとわかるだろうと。

包丁やボウル、そして竹製の「鬼おろし」。
鬼おろしはテレビで見ていて、これを使ってみたいと思ったそうだ。
最近、ミエコさんから料理を習っていて初心者だから、包丁はあまり切れない方がいいのではというと、「それはかえって怪我するから駄目」と言われたことなどを話した。
ステンレスのボウルも祖母が使っていたものが、いまでも現役で傷もあまりついていないと話すと、ずっと使うならといい値段をしているものを選んだ。

お菓子作りにも挑戦するそうで、その他にも泡だて器なども。
そして、最後にキッチンスケールのコーナーに。

その中でひときわ値段が高い物を選んだ。
「これね、知ってます?」と。

昔ながらのキッチンスケール・・・秤だった。

「うちでこの秤の部品を作っているんですよ。イトウさんがちょうど組み立ている部品がこのあたりかな」と指さした。

「ここのメーカーは、今は医療機器とか業務用の秤とか専門に作っていて、その部品もうちで請け負っています。とても精度がいる部品なので、うちの社が注文を受けているという事は誇りですね。こんなに値段するのにファンがちゃんといて、売れ続けているんです。だから、うちに注文が入りイトウさんが作っている」と。

他のメーカーの3倍ぐらいする値段のその秤はとても重厚で綺麗だった。

そうか・・・私はこの中の一部を作っているのか・・・。
見えていなかった事が見えた気がした。

私もこの秤を購入した。
何かあったらこれを見ようと思った。
私がこの一部を作っている。
そして、私の作るマスコットと同様にこの秤を気に入り買っていく人がいる。

気持ちが軽くなっているのをノグチさんがわかったようで、二人でノグチさんが最初に言っていたお蕎麦のお店に行った。
そこは、本当にお蕎麦だけのお店だったがとても美味しかった。
今日買った秤の会社に営業に行った時に聞いたお店だという事だ。
そこは社員の人は、高齢の人が多いが生き生きと働いているように見えると。
自分の仕事に誇りを持っているのだろうと。

食べながらノグチさんが言った。
「母がもう、長くないんです。今まで母がいないといろいろと楽だろうなと思っていたんですが、いざとなったら情けないほど動揺している自分がいて。何のために仕事をして何のために頑張っているのかよくわからなくなりました。今回、人員整理は実は僕も少しいろいろとあったんです」

私は、驚いて野口さんを見た。

「僕の場合は、辞めて欲しいとは言われなかったけど母の事でよく仕事を抜けたり休んだりするのを指摘されまして・・・。会社はわかってくれていると思っていたので、ショックでした。それなりに時間をちゃんと調整して時間内に仕事は終わらせているつもりだったので。人が減るので出来る限り休むのと抜けるのをやめてほしいと言われました。」

ノグチさんの営業の部署からリストラの対象になったのは、以前ノグチさんに「嫁さんもらえよ」と言った人だ。
まだ、大学生のお子さんがいるそうでなんとか残れるように頼んだらしいが、会社の答えはNOだった。
だけど、その時にその人の奥さんが言ったそうだ。
「大丈夫、なんとかなるわ。二人で頑張りましょう」と。
実はこの人の奥さんも働いていてずっと共働きだったと言うのを最近知った。
ノグチさんによると、今仕事を探しながら料理を作って奥さんの帰りを待ってのだと結構清々しい笑顔で言ったそうだ。
そして、こうも言ったと。

「今まで料理や掃除なんかしてこなかった。今してみてすごい労力だとわかったよ。これを嫁は働きながら子育てをしながらずっとやってきたのだと思うと反省と恥ずかしさで胸がいっぱいになった。実はいろいろと話したんだけど、嫁はもう子どもが大学を卒業したら、俺と別れようと思っていたらしい。今までも何度も思ったんだと。子どもがいないと俺と一緒にいる意味が見つからないと。危機一髪だっただな」と。

人生を見直す転機はどこでやってくるのかわからない。

ノグチさんはその人に触発されて、料理を本格的に始めてみようと思ったのだと言った。
「蕎麦も打ってみたいと思っているんですよね。」と続ける。
そういえば、蕎麦打ちの道具も買っていた。
鬼おろしも、その一環なのだろう。

「店を出すとかそんなのじゃなくて、何か無心に出来るものが欲しいと思って」

私は、気持ちがよくわかるので頷いた。
私も無心になれるものが欲しかった。

「だけど、母がもう長くないと分かった時にその蕎麦や料理を食べさせるのか?とふと考えました。母自身実はもう流動食しか食べられなくて、その流動食でさえもう無理になってきています」

そこで一旦ノグチさんは言葉を切り、私に向かっていった。

「イトウさん、僕と一緒に住んでくれますか?そして僕の作ったものを食べてくれますか?」と。

えっ・・・と思ったのと同時に心の隅になんとなく言われそうな気がしていた。

でも・・・

「ごめんなさい。ノグチさんはいいお友達で大好きです。ヤマダさんやサトウさんと一緒の。失くしたくない存在だし、ずっとこれからの友人としての関係を大事にしていきたいです」と私は頭を下げた。

顔をあげるとノグチさんが笑ってそして、逆に頭を下げた。

「ごめんなさい。実は僕も同じ気持ちなんです。これまで女性とこんなに友達付き合いが出来るとは思ってはいなかった。少し母の事で動揺をして誰かが一緒にいて欲しいと思ったら、イトウさんの顔が浮かんで・・・。つい言ってしまいました」

つまりそれは、友人としてという事か。
気が抜ける。

二人で笑う。
ただ、ちょっと失礼だなと思ったが・・・。

「蕎麦をちゃんと打てるようになったら、タクミ君やホノカちゃんとまた一緒に来てください。それがきっと励みになると思います」
と言われて「喜んで」と言った。

その後、私を送ってくれてノグチさんは帰って行った。

部屋で秤の梱包をほどくとハナがうれしそうにじゃれついた。

寂しいもの同士、寄り添っていくのもいいかもしれない。
しかし、それではきっと寂しいままのような気がする。

「あっ、こら!」

ハナが秤の上に乗ろうとしていた。
ハナが来た頃はこの秤で量れただろうけど、もうとっくにこれの最大を越えている。

慌てて降ろしてキッチンに置こうと思ってやめる。
そうだ、作品をいつも発送するときは向こうで量ってもらっていたが、今度からは家で確認しよう。
少しの違いで配送料が違ってくるから。

秤を作業している部屋に置くと不思議なほど溶け込んだ。
まるでトロフィーのようだ。
そうそう、これにお金使っちゃったから頑張ってまた貯めないと駄目だなと思った。

                          <つづく>

********************************************************

あと、残り1回です。

ノグチさんとはやっぱり友人のまま。
どう話を展開させようとしてもこうなる。

話に出てきた秤の会社もモデルがあり、ずっとカミデさんのモデルの人が部品を作ってました。

私が仕事を辞めたときにコブちゃんがうちに。
ちょうど、雇用保険が切れたばかりの時でしばらくは家に居ようと決心したとき。
溝でピャーピャーとでっかい声で鳴いていた子猫を息子が見つけたけど、捕まえられなくてあきらめていたら、翌日に前の家の人に捕獲されたのね。

その捕まえられなかった時に
「うちの子になる?」ってコブちゃんに言ったので来たんだと思う。

物語の中では病院での手術は他より安いとしているけど(今通っている病院がモデル)、最初に連れて行った病院は他の多分1.5~2倍ぐらいの金額で、失業している私にはすごく負担だった。
特にコブちゃん手術したときは、私の最後に使えるへそくりが全部飛んだし。
でも、その病院もいい面もたくさんあったのはあったし、動物に対してはとても丁寧でそして後でとてもお世話になったけど。
だけど、そのあとどうしても金銭的に無理で、今の病院に。
節約しないと暮らしていけなかったのね。
お金は残しておかないと息子を高校・大学(大学院まで行ったし)に行かせられなかったので、ものすごく頑張った。
今の病院と出会ったのもラッキーだった。
コブちゃん、3歳の時に少し調子が悪くなって、休日でたまたまその日空いている所が調べたら今の病院だった。
すごくちゃんと見てくれて、支払える範囲の金額。
びっくりしたわ。
5分の1ぐらいの値段だったから。
それまでの病院は、フードが出たり容器代がいったりしていたけど、一切そういったのが要らないせいもあったからだと思う。
薬などは必要な物だけをもらい、その後は猫が負担になるだろうからと検査だけ容器で持って行った(後の値段が500円だったのを覚えている)
幸いなことにそれで完治していた。

参考に手術代は料金表を見ると半額ぐらいだった。
これだけは、ちょっと後悔なんだな・・・料金云々よりどこで受けても一緒だったのかもしれないけど「名残」がずっと残ってしまって、ずっとコブちゃんに負担が増えた。
ちゃんと調べなかった私が悪かった。

動物病院も、利益を出さないと経営は難しいとは思う。
でも、その時におとーさんとも話したんだけど、自分たちが出来る範囲の事はちゃんと飼ったのだからしようと。
という事で今の病院だ。
今の病院は支払う金額は安いけど、治療はかなり適正で相談もちゃんとのってくださる。
最初からここに・・・と思うけど、後年の事を思うとこれも運命だったのだと感じる。

来た時・・・

やさぐれていた。
めっちゃ目つき悪い。


子猫だったのですぐに慣れたけど。


この頃お気に入りの、「わっか」


かわいー。
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茜色のお花畑 10(リストラ)

2020年07月22日 | 茜色のお花畑

どうやらお天気が持つのは今日までのよう。
日差しはあるけど、雲が多い。

本当は、少し原付で走ろうと思ったんだけど、荷物が届くことを思い出して保留。
昼前に届いたので、子どもたちが帰る時間までに少し走ってこようと思う。

ああセミが鳴いているなと思ったら庭に抜け殻が多数。(虫が苦手な人は無視してね)


庭には何故か数カ所、山椒が自生している。



数年前に山椒の植木鉢を買って植えていたんだけど、それは枯れてしまったんだな。
それが、勝手に増えたのかそれとも山のを鳥が運んだのか。
摘み取って手でパンとすると山椒のいい香りがする。

さて、今日はおはなしです。
毎回書いていますが、長いので興味の無い方、続けて読んでいない方はは、読み飛ばして下さいね。


******************************************************
【茜色のお花畑 10 (リストラ)】

ヤマダさんからの衝撃の話から、数日たった。
あれから、晴れの日が続いたためヤマダさんともゆっくり話は出来なかった。
ただ、最近仕事は益々暇になった。
1日行ってもする事もないので、部品の整理をしたり掃除をしたりする。
マエダさんは、それならばお姑さんの介護に専念すると言って、1週間休みにすることに工場長と相談して決めたそうだ。

サトウさんは、あれからずっと悩み続け、出来るのかどうか試してみるという事で、部署を今は移動している。
今なら暇だから、教えられるという事らしい。
ただ、そんな中でも仕事があまりなく、整理をしたり掃除をしたりしていると言っていた。

今、組み立ての部署にいるのは、カミデさんと私だけになった。
相変わらずカミデさんは早い。
私もいつかあんな風に出来るのだろうか?

「アカネちゃんは、だいぶ慣れたね。これからずっと早くなるよ。しっかり頑張るんだよ」とカミデさんが笑いながら言った。

なんだか、変だなと思いながらも
「はい」と答えた。

その週末の休み、タクミの運転でホノカちゃんと一緒に生地を安く売っているお店に連れて行ってもらう。
今までは、近所の手芸店で買っていたが、連れて行ってもらったところは、全然そこと違う値段だった。
金具などもまとめて安く売っていたので、キーホルダー用の部品も買う。
オンラインで反物販売もされているらしく、いろいろと話を聞いた。
とりあえず、ホノカちゃんデザインのものを作るためにいろいろと購入した。
これは、ひとつひとつ手作り感を出すために、ある程度の記事を変えることにした。



その後、3人でランチを食べた。
ホノカちゃんが、カフェランチしようよと言うも、そんなので腹が膨れないとタクミがいい、結局二人で散々言い合ったあとにその後にバイトが入っていてお腹が空かないしたいと言いホノカちゃんが折れた。

「お姉さん、また二人で女子会ランチしましょうね」とホノカちゃんが笑う。

うんうん、おしゃれなカフェも入って見たいんだと私も言う。

3人で中華のお店に入る。
ランチがとても安くて1000円以下で食べられるらしい。
私は、天津飯のセットを頼み、タクミとホノカちゃんとラーメンと炒飯のセットを頼んでいた。
タクミは「大盛」
若い男の子の食欲はすごいなと驚く。

その後タクミが送ってくれて、3人でサンプルのマスコットを見て、値段を決めることにした。
材料費とそして私の手間賃。
今日、安く買ったのでサンプルで作った値段よりかなり抑えられた。
でも、計算して売れる値段を考えたら1点につき300円ぐらいが私の手間賃になる。

タクミがいろいろと調べてきてくれていた。
まず、最初は手数料を払って出店して見て、様子を見てからホノカちゃんにサイトを作ってもらって、自分でやってみたらどうかと話してくれた。
手数料をひくともっと私の手間賃は低くなるけど、「趣味」として販売するならいいんじゃないかと話した。
送料は、購入者の負担とすることに。
メール便で送れるサイズを作るので、購入しやすいだろうと。

こうやって考えると「作って」「売る」と言うのがとても大変だと思った。

しばらくこの後またハナと遊んだ後に解散になった。

ハナが二人と散々遊んだためか、熟睡しているので早速、買って来た
布地を切り作り始めた。

この日、3個作り翌日の日曜日に10個まとめて作る。
そして、タクミが設定してくれたので、頑張って自分で出品してみることにした。
マスコットを作るより長く時間がかかった。

早速、前にフリーマーケットで購入して、またどこかで出店するなら教えてくださいと言ってくれたお客さんに連絡を入れる。
すぐに返事が返ってきた。
「かわいい!実は母も欲しがっていて、2個購入させてもらいますね!友達にも欲しいって言っている人がいるので教えます!」と。

そして、2個「SOLD OUT」の表示が出た。
運営側から連絡が入るので、送る手配をしないと。
この送るためのラッピングの材料も、今日買った。
そういったものにもお金がかかるなと思う。

形が崩れないように丁寧に包む。

1個当たり作る時間は、30分ぐらい。
でも、こうやって発送する手間を考えると、時給いくらになるんだろうと思い、今組み立ての仕事でもらっているお給料をありがたく感じた。

翌日、会社に行く。
朝礼の時に社長が少し緊張した面持ちで、話し出した。

「本日、少し皆様にお願いがあり、おひとりおひとり会議室に呼びますので、呼ばれた方は来てください」と。

ざわざわとする中、ヤマダさんがとても難しい顔をしていた。
ズーンと暗い思いが、胸をよぎる。

今日は、組み立てはカミデさんとマエダさんと3人だった。
サトウさんは、もうどうやら他の部署に異動が決定なのかもしれない。

一番、先にカミデさんが呼ばれた。
10分ほどして戻ってきた。

「ホッホー」といつものように笑って「次はマエダさんだって」と言い、次にマエダさんが会議室に向かった。

カミデさんより長く15分ほどしてマエダさんが戻ってきた。
カミデさんと違い、すごく怖い顔をしていた。
「次はアカネちゃんよ」と言い大きなため息をついた。

すごく怖かった。
一体何を言われるのかと。

「失礼します」と入っていくと、社長さんとその息子の専務さん、そして工場長の3人が座っていた。
「どうぞ」と言われて、前の席に座った。

「イトウさんは、だいぶ慣れたようだね」と社長が話しだす。
「最近、ニュースとかで見ていると思うけど、世の中が一気に不況になって、仕事がすごく減ってきているんだよ。」

私は「はあ」と言いながらすごく緊張する。

「ここのところ、君も組み立ての仕事が減ってきて、整理とかばかりしているのに気がついていると思う。このまま仕事が減ったままだとわが社はきっと駄目になる。今、銀行から融資を受けるように交渉しているんだが、その条件として人員整理を出されてきた」

耳がガンガンしてきた。
ヤマダさんの言ったとおりだ。
多分、入ったばかりの私はその人員整理の中の一人なんだろう」

ガンガン・・・ガンガン・・・
頭の中で渦巻く音の間に社長さんの声がかすかに聞こえる。

「そこで、本当に心苦しいのだけど組み立てからも人員を減らすことにした」

ガンガン・・・

「君はまだ入ったばかりだけど・・・」

ガンガン・・・

「当面、一人でやってもらうことになる」


えっ・・・?

「カミデさんは、高齢なので一旦やめていただく事になった。本人も了解されている。マエダさんは当分休んでいただいて、仕事が増えてきたらもう少し短期のパートとして契約を見直してもらう事になった。サトウさんは、当分パートのままだけど部署移動になった。この不景気を乗り切れば、正社員になるのを条件にしている」

・・・・別の意味で目の前が真っ暗になる。

「わ・・・私、わからない事ばかりで・・・一人でなんてできません。そ、それに私よりずっとカミデさんの方が早くて会社のためになると思います」

と必死で言う。
そうだ、私よりずっと・・・

「そうだね、カミデさんはとても早くてもう職人だと言ってもいい。でも、もうお年でいつまで勤めていただくかを考えると君に残ってもらおうという事になった。カミデさんも了承してくださっている。また復帰してもらってもと言ったんだけど、ここまで歩いて通ってくるのが実はもうしんどかったそうで、いい機会なので引退したいと言われている。それに君はとても器用で、きっとこれからの会社に必要だと言っていたよ」

涙が出てきそうになったけど、ぐっとこらえた。

「じゃあ、当面一人になるけどよろしく頼むね」と社長さんがいい、工場長が「わからない事は教えるから言ってくれよ」と続けて、そのまま私の時間は終わった。

部署に戻るとカミデさんとマエダさんが話していた。

「ああ、アカネちゃん」とマエダさん。

「びっくりしたよね。でも、今カミデさんと話していたんだけど、まだいいタイミングだったのかもしれない」って。

「でも、でも私よりずっとお二人の方が・・・」

「アカネちゃん」とカミデさんが言う。
「アカネちゃんはまだ若い。これからずっとこの会社で働ける。でも、もう私はだいぶ前から限界が来ていたんだ。ここまで来るのが大変でね。自転車も危ないって息子から言われていたんだよ。それとずっと良かった目も最近ちょっと悪くなってきてね」とまたホッホーと笑った。

「それと、たまに内職で仕事を回してもらう事になったんだよ。だから、気にしないで。」と。

「でも、その内職って1個何銭・・・いや、アカネちゃん世代だったらわからないか、1個0.5円ぐらいなんだけどね」とマエダさんが言うと、
「いいんだよ。ボケ防止になる」とまたカミデさんはホッホ-と笑った。

マエダさんは、休んでいる間にお姑さんの事を、次に仕事を再開するときに困らないように旦那さんと相談すると言っていた。
今、通所しているところの他にもっと相談にのってもらえる場所を探すらしい。
ノグチさんのお母さんの事を思い出し、話すと教えてもらおうと言っていた。

私は暗い気持ちでその日を、なんとか終えた。
更衣室でサトウさんと一緒になった。

「こんな時だから、まだ社員には出来ないって言われたけど、移動する分時給をあげてもらう事になったの。その分少し助かる。アカネチンは残るんだよね。大変だけど頑張ろうね」と言った。
私は複雑な表情を浮かべる。

その後、ヤマダさんが入ってきた。
「なんとか、私も残る事になったんだけど、パートで入っている事務の人が一人辞めることになったの。仕事が忙しくなると思う。それと、もしかすると状況によっては今年の冬のボーナスはなしになるかもしれない」と言い私たちは余計にどんよりとした。

帰るとミエコさんが、余分に作ったからと肉じゃがを持ってきてくれていた。

顔を見るとなんだかほっとして、今日一日あった事を話した。
そして、私こそ辞めるべきなんじゃないかと思うと言った。

ミエコさんは静かに言った。
「駄目よ、アカネちゃん。辞めてまたどうやって暮らすの?他に仕事のあてはあるの?ハナも飼ったんでしょう。今からお金がかかるわよ」

「でも、でも、ああそうだ。私これをやって・・・」とミエコさんに昨日作って売れたサイトをスマホで見せた。

「うん、タクミから聞いている。でも、アカネちゃん、それって時間がいくらかかって、いくつ売れていくら『今日』アカネちゃんにお金入ってくるの?」と。

サイトを見ると、あれからまた3個SOLD OUTになっていた。
昨日売れたのと合わせて5個。
1個300円の利益が出ていて、5個で1500円。
でも、作った時間は5個で2時間半。
今からかかる梱包の時間や、布の組み合せを考える時間を入れたのはもっと・・・。
そして、作った13個全部売れなかったら、その分のロスは・・・。

涙が出てきた。

「私も実は、以前同じようにあった不況の時に同じような立場になったの。私の場合はまだあの当時は・・・夫・・・つまりあなたのお父さんがいた。だから、思い切って辞めちゃったのよ」

「でも、結局それから結構大変だったのよ。自分で今の在宅の仕事を見つけるまで。それがちゃんとした収入になるまでもかなり勉強もして努力したの。その間ほぼ無収入よ。今、アカネちゃんは自分で自分の生活を支えないといけない。ハナもいる。だから、残った事に罪悪感を覚えるより、ちゃんと仕事を覚えて行かないと駄目」

「それとね、景気が戻ってもまたいつこんな事になるかもしれない。そう思って勉強は必要よ。だから、今始めた事も大事にしてね」

とエミコさんはいい私の頭をそっとさわった。

「今、会社からカミデさんはいなくなるけど、会社からいなくなるだけよ。出会った事でアカネちゃんとつながりが出来た。それを大事にして。きっとそれが自分の財産になるから」

日が落ちるのが早くなり、数か月前はこの時間なら茜色の夕焼けだった空が、真っ暗になっていた。

私は、この色も覚えておこうと思った。

                             <つづく>

*****************************************

後2回ぐらいで終わらせようかと。
ちょっと思い出してつらいなと思う。
実際は、私はリストラされたので。
ただ、この中にも出ているけど私にとってはいいタイミングだった。だってその前から辞めたいとは思っていたから。
ずっと辞めたいと上司に行っていたからだとは思う。
でも、自分で辞めますと言いたかった。
このあたりの事情は、書き始めると1年ぐらいかかるのでやめておく。
まあ、いろいろと後でわかってくるし、これはかなりの転機だった。
あそこで辞めないと気持ちも体も潰れていたし、辞めたら運気が一気によくなる。

逆にこの時、残った人も大変だったし、ずっと近年まで勤めた友人はとてもとてもひどい目に合った。
人生わからないものだ。
物語の中の会社は、空想の会社なので実際に私が勤めていたところと大違いだ。
この物語の中の会社は、今うちのおとーさんの会社とを合体させた感じかな。
おとーさんの会社は、まだ「人情味」がある。

今、また大不況になる。
昨日おとーさんと話したら、なんとか11月ぐらいまではおとーさんの会社は踏ん張れるらしい。
それまでに、早くちゃんとした出口をと思う。

コブちゃんのフードも買わないと駄目だな。


茜色のお花畑を書き上げて、実は少し他の事をしたいと思っている。
1日の時間が足りない。
母は、毎日暇で暇で・・・と言っているが、同じ家に居る私は、時間が足りないのだ。
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茜色のお花畑 9(作る)

2020年07月15日 | 茜色のお花畑


昨日、昼から少し歩く。
正直に言うと本当に久しぶりだ。

近所のこんな誰も通らない道を通るのは、全然デメリットはないんだけど、どうも出る気にならず。




人も通らないけど車もあまり通らない。


たまに見かけるのは私と一緒の散歩の人。

なんでこんなに出歩かなかったのかというとひとえに忙しいというのが、ぴったりかも。
以前、在宅仕事をしていた時には一日中座っていることが多かったけど、仕事を辞めた今、結構動き回っている。
母に電話をかけると「する事がなくて暇で暇で」と言うが、私は家でする事が多々あり、またこの機会にと思っている事もあるので、時間が足りないぐらいだ。

あまりにも歩いてないので、きっと足が痛くなったりするもと思ったが、全然だった。
家の中で動き回っているからだろう。
ただ、少しこれからの季節は、買い物以外で外に出ないとと思う。
ずっと天気が悪かったので、運動不足というより日光不足で気分がちょっと沈みかけていた。

今日は、この後歩くのではなく少し原付で走ってこようと思う。
買い物はしないで、本だけ返しに行こうかと。
いつも書いてますが・・・
長いので興味がなかったら読み飛ばして下さい。
それと、読み直して修正したりするのでたまに後で少しだけ内容が変わったりします。




*********
【茜色のお花畑 9(作る)】

フリーマーケットが終わり、日常が戻って来て結構バタバタしている間にあっという間に2か月が過ぎ12月になった。
少し落ち着いてきたので、ネットでの販売をしてみようかと考え始めた。
まず、タクミに相談するとすぐにホノカちゃんと一緒にやってきた。

最近では、こういったハンドメイド作品を販売するサイトがたくさんあるらしい。
ただ、いろいろと注意をする事があるとホノカちゃんが、教えてくれる。
まず、「オリジナル」である事。
私が今まで作って来たのはだから駄目だという事。
生地などもブランドやキャラクターのものは駄目。

やっぱり難しいなと思っていたところ、ホノカちゃんが
「じゃあ、私がイラストを描くのでそれをおねえさんが形にしてみます?でもちゃんとイラスト料下さいね。」

チョサクケンとかシヨウキョダクジョウケンとかいろいろと訳の分からない言葉をホノカちゃんが言ってくれるのを、とりあえず真剣に聞いた。

あとタクミが
「まずそこまで作れないと思うしそんなに売れないと思うけど、こういったのの収入って枠があると思うんだ。そのあたりスタートした直後に誰かに相談した方がいいな」と。

私は、それならヤマダさんに相談するというと「それはいいね」と若い二人は、微笑みあった。
この子たちは、きっとお互いが大好きなんだなと微笑ましいのと少しうらやましくなる。
私は、恋なんて出来るんだろうか?と疑問だ。

そういえば、休日に最近ノグチさんからたまに誘われて数週間に一度
お蕎麦を食べに行く「蕎麦会」と言うのをしている。
タクミやホノカちゃんが一緒の時もあるし、二人だけの時もある。

別に何を話すのではなく、蕎麦を食べに行くだけだ。

「ねえちゃん、ノグチさんとはどうなの?」とタクミが聞いた。

「へっ?」
間抜けな声が出た。

ドギマギしながらも、結構頭の中は冷静でなんの感情もわかない。

「そうね・・・ヤマダさんとサトウさんと一緒でいい「お友達」って感じかも」と答える。

ホノカちゃんが
「やっぱりそうですね。でも、ノグチさんもなんかそんな感じでおねえさんと友達って感じがします。」

「ホノカ、なんでそんな事わかるんだよ」

「だって、女の子なんですもの。ねー、おねえさん。」

ホノカちゃんが、真剣に言うその表情がおかしくてみんなで笑った。

二人はその後、ハナとじゃれあって帰って行った。
ホノカちゃんは来週までに、イラストを描いてきてくれるらしい。

最近、仕事も早くなってきた。
図面を見るとどの部品をどの部分につけて組むかもわかって来たので、一人で仕事を任せてもらえることも多くなる。
サトウさんなどは、「アカネチンの方が、段々早くなってきたな~」と言ってふくれる。
単純にうれしい。
複雑な作業ではなく、ごく簡単な作業だけどちゃんと仕事として一人前に認めてもらえるようになるのはとてもうれしい事だと気がついた。

母が生きていたらどう言っただろう。
「服が汚れるような仕事なんて駄目よ!」って言っただろうな。
昔、この業界は3Kと呼ばれていたらしい。
「きつい」「きたない」「危険」
確かにと思う面もある。

私の仕事はきついにはあまり当てはまらない。
汚いというも、手先が汚れる程度だし、座って組み立てるのが主なので危険もない。
ただ、その分パートなのもあるけどお給料も安い。
もし、家賃などがいるところに住んだらきっと生活が出来ない。
だから、サトウさんとかは本当に頑張っている。
シングルマザーで児童扶養手当などが出ているが、本当にぎりぎりだと言っていた。
別れた旦那さんからの養育費は、ほぼ入ってこないらしい。
だから、社員になりたいんだと言っていた。

先日、アリサちゃんが小学校に入ったのもあり、会社に直談判したらしい。
その時に条件を出されたと。
今の組み立ての仕事では、社員には出来ない。
前にイノウエさんがやっていた曲げの作業をするなら、考えてもいいという回答だった。
サトウさんは悩んでいる。
最近、機械は良くなっていてそこまで「危険」はない。
それでも、やっぱり「注意一瞬、怪我一生」と毎朝言っているけど、危険はある。
そして、立ったままの仕事はとても「きつい」し、重い材料を持ったりするしその材料自体に油などがついているので、汚れる。

やっぱり3Kかもしれない。

「私もヤマダさんのようにパソコンとか使えたら、他の就職先あるんだけどね」と。

「今から勉強したら?まだ、私よりずっと若いし」というと

「えーーっ、無理だよ。勉強嫌いだったら今ここにいるんだよ」と言ってケラケラと笑った。

私は組み立ての仕事が、決して単純な作業だとは思わない。
特にカミデさんのようにびっくりするほどのスピードとそして正確さがあるのは、職人なのだと思う。
でも、「単純な作業」「簡単な作業」そして「パートでも出来る作業」として扱われてる。

最近、マエダさんがよく休むようになった。
お姑さんの容体が悪化しているそうだ。
やめて介護をしようかと旦那さんと話し合っているのだと。
でも、そうなるとマエダさんだけの負担になる。
すでにそのような状態で、旦那さんと毎日口論になると。
子どもさんは独立されているとはいえ、家でお姑さんと二人でいるとかなりストレスがたまるから、出来れば短時間でも仕事は続けたいと言っていた。

女の人だけが、介護をしないと駄目なのだろうかと疑問だ。

1週間たった時に、ホノカちゃんがイラストを持ってタクミと一緒にやってきたので、マエダさんの介護の事話をした。

「おかしいですよ。だって、旦那さんのお母さんなんでしょ。自分の母親を奥さんに丸投げなんて。私だったら絶対に嫌!」

タクミが「俺なら絶対にお袋の世話をしてくれと言わないな。自分も頑張ると思う」というと二人は顔を見合わせて笑った。

ご馳走様ですと私が言うと二人は真っ赤になって同時に

「いや!そう意味じゃなく」と叫んだ。
ハナが何事!という感じで飛んできて、タクミにかじりついた。

「いたい!ハナ!やめろ~~~!」とタクミが叫ぶと余計にハナが齧る。

私たちは大笑いした。

ホノカちゃんが、描いてきてくれたのは2点。
マンボウと「ハナ」のデザインだった。



「単純でたくさん出来る方がいいかと思って」

いろいろと考えて、まずキーホルダーを作ってみたらという事になった。
とりあえず今週中にサンプルを作って、1ヶ月の間に5点、5点で10点。
あまり売れなかったら辞めようかと。
材料費も安く済むように考えた。

2人が帰ってから、ホノカちゃんの絵から、型紙を作ってみる。
あまり凝らないでそこまで立体にはしないように、考えた。
マンボウはパーツ事にいろいろと布を変えることに。
ハナは尻尾を別に縫い付けることに。

次の日が日曜日だったこともあり、1日中・・・いやハナが起きていない時間頑張った。
ハナがいると裁縫箱をのぞいたり、針を持っている手にじゃれたり、糸をからましたりするので危険。

うまく作れたと思っても綿を入れるとなんだか不細工になり、何度も型紙を書き直す。

最後に納得のいく出来になったのは、もう深夜12時をまわっていた。
「今日」は月曜日だ、仕事にいかないと駄目なので作業を終了した。

ただ、その後なんだか眠れなかった。
「仕事」とは「働く」という事は、とても大変でそしてとても大事な事だと。
サトウさんは、アリサちゃんを養うため女性にはとてもハードな仕事を選択しようか迷っている。
そして、好きだけでは仕事は成り立たないというのは、このネット販売でいろいろと分かった。
仕事量だけで言うと、マスコット1つ作るのにホノカちゃんのイラストから始まって、私の型紙作り、そして裁縫。
どれだけの時間がかかっただろう。
そして材料費やその後のネット販売での手数料や送料。
1つにかかる労働力や手間がとてつもなくかかっている。
100均で売っているマスコット。
あれは、手作業ではなくたくさん作りまた人件費をカットすることで出来ている値段。
もう、いろいろと考えすぎて頭の中がぐるぐるしてきた。

それとマエダさんちの介護問題。
マエダさんは、家でお姑さんと二人でいるより、たまには仕事に出た方が楽しいと言った。
息子さんが独立した今は収入以前の問題だと言っていた。
旦那さんは大手企業の社員だ。
残業残業で、家には深夜に帰ってきて何もかもマエダさんに頼りっぱなしだ。
ふとノグチさんの事を思い出した。
「蕎麦の会」が楽しいのだと言っていた。
ノグチさんは、自分の母親の面倒を見ている。
仕事もしなければならない。
でも、マエダさんのように義理のお母さんではなく、自分の母親だ。
ただ、仕事は正社員で労働時間はマエダさんよりはずっと長い。
誰が大変で誰が楽かなんてわからない。
マエダさんの旦那さんの言い分もあるんだろう。
ただ、ノグチさんのように独身だったら、自分でしなくてはならないんだ。
そうなった時にどうするのか。
そして、もし私だったらどうなるのか・・・。

ハナがわきの下で寝ている。
最近は、こうやって布団にもぐってくるようになった。
その寝息とぬくもりを感じていると、やっと眠りにつくことが出来た。

翌日、出来上がったマスコットを持っていろんな人の意見を聞くことにした。
雨だったのでヤマダさんが迎えに来てくれた。
このところ、小ぶりの時は自分で合羽を着て行っているんだけど、この日は結構な雨で前日から、ヤマダさんは天気予報を見て「迎えに行くから」と言ってくれていた。

マスコットを見せると
「これはいいわ!」と褒めてくれてうれしくなる。
そして、こういったのは副業になるのかと相談するとある一定の金額を越えないと大丈夫らしい。
会社にもその程度なら申請はしなくてもいいだろうという事だった。
増産は出来ないから、そこまでの収入は期待できないと言うと「そうだよね」と笑った。

ハナのご飯分ぐらいの収入になればというと
「それも結構大変よ」と言い「楽しんで出来る趣味だと思ってやった方がいい」とアドバイスをもらった。

組み立ての人たちにも見せた。
みんなそれぞれいいねと褒めてくれた。

カミデさんは、マンボウのマスコットを気に入ってくれて、出来上がったのをひとつ買いたいと言ってくれる。
「プレゼントしますよ」と言うとダメダメ~と言ってほっほと笑った。

その日の帰り、ヤマダさんがまた送ってくれる。

ただ、なんだか表情が暗かった。
「アカネチン、最近の世間の状況ってわかっている?」と聞くので、うーんと考える。
そういえば、どこかの国の何かが倒産したんだとテレビで言ってたような。
あまり自分には関係のない話だと真剣に見ていなかった。
株価がどうのこうのって、よくわからないし。

ヤマダさんが
「ずっと景気が悪かったけど、どうやら本格的に悪くなるみたい。最近仕事少なかったでしょう」と。

そういえば、今日もマスコットの話をしながら倉庫の整理をしていたんだっけ。
最近、仕事がすごく少なくなって手持ち無沙汰になって、今まで出来なった整理をしようという事になったんだっけ。

「ちょっと、覚悟をしておいた方がいいみたい。アカネチンは独身だし若いから大丈夫だと思うけど。危ないのはカミデさんとマエダさんかな・・・。サトウさんは正社員になりたいと言っていたけどどうだろう。曲げに行ってもなれるかどうか・・・と言うか、残る条件で曲げにと言われるかもしれない。それに私も危ないかもしれない。今の時点ではサブのポジションだから、上司だけ残るかも」

最初、よく話がわからなかった。
???と言う目をすると、ヤマダさんが「リストラで人員整理」と。
「融資の条件」で銀行から提示されたらしい。

リストラで人員整理・・・。

ええええええ~~~。

目の前が暗くなった。

                               <続く>

****************************************

正直、この話を書き始めた頃、こんなイレギュラーな不況がまたやってくるとは思わなかった。
今回は多分私が以前いた業種より飲食業や旅行業者などが大変だ。
夫は、その私が以前いた会社と同じ業種に勤めている。
これは、失業したときに私がチラシで見て、同じ業種だしどうだろうと勧めたところで、どうやら夫には合っていたようで、今は給料が安いながらもそこそこ楽しそうに行っている。
夫も、実は大学を出てから勤めていたところは、合っていなかったのだと今は思っている。
最初から、今より少し大手の企業に勤めていたらきっと続けていただろう。

ただ、今後どうなるかわかない。
現在も給料が減っているし、実は高齢の方がやはり「リストラ」ではなく、契約が・・・と言うので切られた。
ある程度の年齢になると契約という形になっているらしい。

幸いなことに息子(勤務地東京)の業種は大丈夫なようで、毎日忙しく過ごしてるのだけど、やはり今は在宅から出勤に戻り、尚且つ県をまたいで移動している。
夫が毎日息子の会社の株価を見ているんだが、落ちてはいない。

さて、このアカネがやろうとしている事、私も実は考えていろいろと調べてみた。
ところが、経理をしていた関係で、もう損得の計算が見ているだけで、すらっと計算されてしまう。
在宅の仕事をもらうまでいろいろとチャレンジしたけど、この期間に学んだのは
「好きな事だけしてお金をもらうのは大変というより不可能」という事。
依頼を受けて描くという事もしたことがあるけど、提示された金額はびっくりするほど低く、材料費さえ出ないというより、送料などを考えると私がお金を出してもらっていただいているという状況になった。
仕事が入ってくるわけではなく営業力もいるし、やはり勉強もいる。
嫌いな事もこなしてやっと仕事と言う形になる。
そして好きな事と出来ることは違うという事。
この期間に理想だけでは仕事には出来ないという事をはっきり知った。

その後、在宅の仕事を紹介してもらう。
雇用形態が「在宅パート」という形で。
事務の仕事をしていた時は、入力する仕事は嫌いじゃなくまた早かった。
その頃に、独学でいろいろと学びいろんな事がパソコンで出来るようになった。
ああパソコンだけさわってられる仕事だったらいいなとずっと思っていた。
これが、かなった。
嫌いじゃなくて続けられて、ちょっと好きかもって仕事が在宅で出来るようになったのだ。
とてもラッキーだった。
ただ、どの仕事もそうだけどデメリットも多々あった。
締め切り前は、胃がキューとしたし間違っていないかも掲載されるまでドキドキした。
それとわからない事があっても気軽に聞けないというのが最大の問題だった。
自分で解決しないと駄目で、それを調べるの時間は「お金にならない」
間違いチェックも結構念入りにしていたけど、これもお金にならない。
これは、後で自分で間違いチェックの一発検索を言うの作り、時間がかなり省けるのと正確になったが、その作っている時間もタダだ。

好きな事は、ちゃんと他で収入を得てそしてそれからするというのが、今の私の考え。
今は私自身は収入は得ていないから、まず家の事を先にしてからだと思っている。

そうそう、間違いと言えば・・・。
全部完成してチェックも済ませたので、席をたってトイレに行って(我慢していた・・・笑)戻ってきて保存して送付したのが間違っていた。

多分・・・コブだと思う。
これ以降は、先にちゃんと保存してから席を外すようにした。

息子が以前大学時代に、ある事務所にインターンシップで行った時にそこの事務所内に猫がいたらしい。
「えーー、この猫たちパソコンにのりませんか?」と聞くと
「そんな事しないよ」と言われたと。

猫もいろいろ。
息子は、昔宿題をしていて途中でトイレに行って戻ったら、コブにノートを破られていたって事があった。
セロテープで貼って提出した。

油断ならねー。


コブちゃんの寝床がまた変わってきている。
ここは玄関の下駄箱の上。

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茜色のお花畑 8(ホノカ)

2020年07月08日 | 茜色のお花畑


今朝、すごく雨が降った後久しぶりにいい天気になった。
まだ、今書ている時点では警報は解除されていないし、新たに特別警報が出た地域もある。
心配は尽きない。

それにしても・・・毎年このような状態になる事を前提に対策をしないと駄目な世の中になってきた。
毎年起こる災害に加えて、今は感染症の恐怖もある。
息子は大学・大学院で都市計画、地域計画の研究をして今、その職に就いている。
今の世の中には必要な勉強だったのだろうと思う。
私の存在は多分、息子を世の中に送り出す事だったのかもしれないなと最近思っている。
是非、今は東京にはいるが地域などの役に立ってほしい。

さてさて・・・その私自身も自分の目標を完結しなければと。
「茜色のお花畑」再開します。

いつも書いてますが・・・
長いので興味がなかったら読み飛ばして下さい。
それと、読み直して修正したりするのでたまに後で少しだけ内容が変わったりします。




*********
【茜色のお花畑 8(ホノカ)】

とうとうフリーマーケットの日がやってきた。
会場の大きな公園に荷物などを運ぶために、前日から出品するものを玄関に出そうと思っていたが、ハナのせいで出来ず。
ハナは私がバタバタしているのを遊んでくれていると思って、一緒にバタバタするし、売り物の袋をうにゃうにゃ言いながら破ろうとする。
ちょうど来ていたタクミが翌日の朝に来て荷物を出すのを手伝ってくれるからと言うので、お願いすることにした。

タクミは最近、ハナの様子を見によくやってくる。
そして「うちにも飼いたいな」と言っている。

インターホンがなり、タクミが来た。
ただ、最近はインターホンなんか鳴らさないでいきなり「ハナいるか~」と言いながら入ってくるのにと思って出て行くと、そこにはタクミと一緒に見知らぬ若い女性がいた。

「彼女はホノカ。高校の同級生で今美術大学に通っている」とタクミがちょっと照れ臭そうに言った。
ホノカさんが小柄でとてもかわいらしい・
「ホノカ、これ俺のねえちゃん」とタクミが私を紹介する。

「始めまして、ホノカです」とぺこりと彼女は頭を下げた。

私も「初めまして」と照れながら挨拶をする。
でも、何故か少し胸がチクンとした。
この感情はなんだろう。
なんだか、大事な物を取られたような。
タクミが急にやってきてから、最初にはそんな感情はなかったのだけど、段々ミエコさんも含めて大事な家族になっていき、それをなんだか取られそうな気がしているのだと自分で気がつく。
しかし、そんな小さな感情はホノカさんの言葉で吹き飛んだ。

「お姉さん、すごくタクミに似ている!なんだか初めて会ったように思わないです。」と。

えっ・・・タクミってミエコさんに似ていても私に似ていると思わなかった。

「だろ、俺も初めて会った時に『ああ、この人俺に似ている。ねえちゃんなんだって』って思ったもんな」

「ねえちゃん」と言う言葉がじんわりと胸にしみこんだ。

それから、ホノカさん・・・いえ段々しゃべっているうちに「ホノカちゃん」になっていき・・・と一緒にハナに邪魔をされながら、玄関に運び出した。



そうしているうちに、会社のハイエースに乗ったノグチさんがやってきた。
先にヤマダさんの家に行き、テントやシートなどをとってきてくれていた。

みんなで荷物を積み込み、ホノカちゃんとタクミはまた後でのぞきに来るといって、二人で去って行った。

その後私は公園までノグチさんが運転するハイエースの助手席に乗ったけど何をしゃべっていいかわからず。
ノグチさんが
「弟さん?カッコいいね」と言ったのに
「ありがとう」と言ったきりだった。

公園では先にヤマダさんとサトウさんが先に来ていた。
子どもたちも一緒で元気に走り回っている。

みんなで一斉に用意をする。
ノグチさんも手伝ってくれた。
彼は、お母さんをショートステイに連れて行かないと駄目だからと、空っぽになったハイエースを運転して公園を出て行った。
また、終わるころに手伝いに来てくれるらしい。
忙しいのに申し訳ないと私が言うと、「いえ、いい気分転換になってこちらこそ嬉しかったです。独身のおじさんにはなかなか出来ない経験だから」と言いながら笑った。

フリーマーケットは大盛況だった。
サトウさんやヤマダさんが出した子供たちのリサイクル品もよく売れた。
ただ、ヤマダさんちは服のリサイクルではなく主にコウキ君のおもちゃだった。
「男の子の服は、破るし汚すし出せるものがないのよ」と言っていた。
それでも、コウキ君のおもちゃも好評だった。
小さい男の子たちが、コウキ君のおもちゃを物色するさまがとても面白くて、なんだか笑顔になった。

そして、私の出したパッチワークもよく売れた。
特にぬいぐるみや小さいマスコットなどはどんどん売れていく。
サトウさんが「もっと高い値段をつけてもいいのに」と言うけど、ずっと押し入れにしまっていた子たちだ。
たくさんの人たちの元に行ってほしかった。
買って行ってくれる人で「どこかでお店出しているんですか?」ときかれた。
お店は出していないと言うと「次にまたどこかで出店されるのだったら知りたいので、連絡先を教えてくれませんか?」と。
見知らぬ人に連絡先を教えるのを迷ったが、そういえば、ネットのフリーマーケットに出しているアドレスがあり、そこを教えた。

昼頃にタクミとホノカちゃんが来た。
サトウさんが「やだ、弟さん彼女いたの」と耳元でささやいた。

ヤマダさんとサトウさんはお弁当を作ってきているので留守番をしながら食べるよと言ってくれたので、タクミとホノカちゃんと一緒に出店しているお店のカレーを買って木陰で食べることにした。
意外な事に500円なのに本格的なカレーだった。
また家で作るのとは違う美味しさがある。

お店の少し年配の人が、「ここでお店出しているからまたお店の方にも来てね」と名刺をくれた。
ホノカちゃんが「おねえさん、また3人で一緒に行きましょうよ!」と言うのでうれしくなる。

この数か月、タクミやエミコさんと一緒に食卓を囲むようになっていたが、実は「外食」と言うのはまだした事がないのに気がつく。
今日は、初めての外食かもしれないと気がついた。
そういえば、母はどこにも連れて行ってくれなかった。
祖父母にも外で食べさせないでとずっと言っていた。
私の事を思ってだと思いたいが、母自身はたまに着飾って外でご飯を食べていた。

以前、祖母が「たまにはアカネと一緒にご飯でも食べに行ったら」とこっそりと母に言うのを聞いた事がある。
母は、その時「だって、アカネと一緒に行くと『可愛くない子』と思われて、アカネがかわいそうだもの」と言った。

こっそりと聞いていた私はその時に「私はかわいくないんだ」と何故母に似なかったのかと自分の容姿を呪った。

そんな思いにとらわれているとホノカちゃんが
「やだ~~!タクミとおねえさん同じ顔で食べている!すごく面白い!」と大笑いする。

「えっ?」とタクミとお互いの顔を見た。
ホノカちゃんは続けた。

「おねえさんって、タクミと一緒で面長の美人ですよね。私は顔が真ん丸なのでうらやましいです」と言った。

びっくりする。
そんなことを言われたのは初めてだったから。
面長なのと一重なのは父に似ていると仏壇の写真を見て初めてわかった。
そういえば、タクミも面長だし目は一重だ。
全体的にほっそりしていて、ミエコさんによく似ていると思っていた。

母は二重だった。
二重でない私の目の事をよく「かわいそうに」と言っていた。

仕事をするようになり家でずっと居て太っていた時と比べて、体重は落ちて目元は腫れぼったかったのが、幾分かはすっきりした。
埋没してたパーツが出てきたという感じだ。
自転車で毎日通勤しているので、筋肉もついてきてむくんでいた足などもすっきりとはした。
でも、「美人」とは程遠いとは思うが・・・。
ホノカちゃんに「美人とは言いすぎよ」と言うと「そんな事ないですよ~」とかわいらしく笑った。

食事が終わった後ホノカちゃんは私が作ったパッチワークの一つを選び、タクミが支払った。
「また言ってくれれば作るのに」と言ったのに「いやいやちゃんとお金払って買うよ」と言ってタクミが買ってホノカちゃんに渡すのが微笑ましかった。

サトウさんが横で「かわいいわね、彼女。負けたわ」とつぶやいたのが面白かった。

4時過ぎになり、出していた商品も少なくなり、他のお店も片づけるところが増えてきた。
ノグチさんがやってきてくれた。

残り少なくなったものの中から、小さいマスコットを一つ選んで買ってくれた。
「母がね、こういったのを喜ぶんです」と言っていた。

今日の売り上げを計算する。
こういったのはヤマダさんが得意だと言ってやってくれた。
意外といい金額になりうれしくなったし、ヤマダさんとサトウさんも生活費の足しになると喜んでいた。
ただ、サトウさんはアリサちゃんと一緒に時々他の出展のお店をのぞいていろいろと購入していたので、どうなんだろうとは思ったが。
ヤマダさんの息子の君もお小遣いをもらっていろいろと購入していた。

「いいね!こんなレジャーも!お金は入るし子供たちは遊べるし」とサトウさんが言うのでみんなで笑った。
そうか、レジャーなんだな。

帰りは朝とは逆に先にヤマダさんちによって、テントとかを降ろした。
その後に私を送ってくれることになったのだけど、ノグチさんが
「どこかでご飯食べて帰りませんか?」と言った。

どうしようか迷ったし、ハナがまっていると思ったが、今日はミエコさんがハナの様子を見に来てくれると言っていたので、そうしようかと思った。
もう、1日ずっと「初めて」が続き、結構疲れていて夕飯を作るのも買いに行くのも面倒だったのもある。

ノグチさんが「おしゃれな店は知らないので」と連れて行ってくれたのは、「そば屋」さんだった。
「ここは十割そばのお店でとても美味しいんです」と。

いろんな小鉢とセットになっているものもあり私はそれを頼んだ。
本当に今日は「初めて」が多い。



「お母さんは大丈夫ですか?」と聞くと

「ああ、今日は施設で預かってもらっているから」と。

ノグチさんのお母さんは、認知症だ。
普段は、デイサービスや訪問などを頼んでいるけど、たまにこうやってショートステイも利用しているのだと話してくれた。
どうしても仕事で遅くなったりする時や自分で限界を感じる時があり、こういったのがあるから自分の気持ちもなんとかなっていると。

「イトウさんは、いいですね。あんないい弟さんがいて。私は一人っ子だったから、母だけが親族なんです。相談できる人もいないし、今更母を抱えて結婚なども考えられないです」

とそばを食べながらノグチさんが言った。

私は「つい最近まで、私も一緒でしたよ」という言葉を飲み込んだ。

一緒ではない。
母は、ノグチさんのお母さんのように認知症ではなかった。
むしろ私の方が、母におんぶに抱っこの状態だった。

でも、ここ最近で思うようになったのは、そのような状態にしたのは、母自身であったのだとわかった。
私を言葉とかの檻で閉じ込めていた。

私は「大変ですね」と言ってそばをすすった。
そばは美味しかった。

「そうですね。でも、母がいないとやはり寂しいです。」とノグチさんもそばをすすった。

それから私たちは黙って食べた。
そばをすする音だけがした。

食べ終わったら、ノグチさんが会計を一緒に払ってしまった。
「駄目ですよ!」と払おうとしたら

「誘ったし、私も誰かとご飯を一緒に食べるのは久しぶりなんです。楽しかったからここは払わせてください」と言いさっさと払ってしまった。

楽しかったのかは、疑問だけど私もお店でこうやって誰かとご飯を食べたのは初めだ。
それも男の人と。
そして、一人で食べるご飯の寂しさは誰よりも知っている。

「ありがとうございます。お蕎麦美味しかったですよね」と言うとノグチさんは「そうでしょう!また機会があったらご一緒しましょう」と言った。

私は、ちょっとだけ迷ったが、頷いた。
そして、連絡先の交換をした。
私を送った後、会社に車を置きに行くというノグチさんを見送り家に入った。

ハナがミャーミャーと言って駆けてきた。
ミエコさんに「ありがとうございました。」とLINEを送るとすぐに返信が入った。
「ハナちゃん、賢かったよ~」と。

ハナを抱き上げ、そのふわふわした毛に顔を埋めた。

なんとも言えない感情が沸き上がってきた。
家族ってと。

スマホがまた鳴ったので、またミエコさんかな?と見てみると、フリマの連絡先にしているアドレスにメッセージが入っていた。
今日のお客さんだ。

『今日、買ったのをインスタにあげたら友達も欲しいって言ってます。またネットのフリマの方出展してくださいね』と。

私は、今日の売り上げを考えて、そしてハナの顔を見た。
拾った時よりかなり大きくなった。
ハナはもうすぐしたら、去勢手術をしないといけない。
その費用の事を考えた。
それともうすでにこれまでかかった病院代にも思いをはせる。

やってみてもいいかもしれないと思い始めていた。
ただ、今日は疲れすぎていた。

『また、出したら連絡しますね』とお客さんに返事だけかえしてもう風呂に入ってすぐに寝るのが今は一番だと思うとあくびが出てきた。

                          【つづく】
***************************************************************
500円のカレー、前に湊川のてしごと市で食べたのを思い出して。
このカレーがとにかく本格的で美味しかった。

でも、こういった催しも当分ないというより、いつまでないんだろう。
市の一大イベントの11月の金物市も中止が決まった。

この話、もうだいぶ前から書き始めていたけど、このフリーマーケットがもうどこでも開催されないだろうと言うのと次の話がちょっと私的にしんどくて、それで再開できずにいた。
終わった話じゃなくて、これからの話になりそうで。

次は、また来週の水曜日に。

金曜日は普段の絵日記に戻ります。
母の事でひっくり返りそうになった話を。

では、ではまた次回に。

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